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バラの歴史とマリア様がみてる「ロサ・キネンシス」その3

前回と前々回は、ただの「僕のバラ写真コレクション紹介」記事になってしまいまして申し訳ありません。画像ファイルを数枚貼り付けると、スマホから編集しているせいか激重なのです。

さて、ロサ・キネンシスはバラの歴史において多大なる貢献をしたバラと言っていいでしょう。遺伝学者ハーストは、バラの品種改良において貢献したバラを4種挙げました。

スレイターズ・クリムゾン・チャイナ(ロサ・キネンシス・センパフローレンス)

パーソンズ・ピンク・チャイナ(ロサ・キネンシス・オールドブラッシュ)

ヒュームズ・ブラッシュ・ティー・センティッド・チャイナ(ロサ・オドラータ)

パークス・イエロー・ティー=センティッド・チャイナ

これらのうち、イエローティー以外のバラにはキネンシスが関わっています。オドラータはキネンシスとギガンティアの交雑種という説と、ギガンティアの栽培型である説もあるようですが…。ちなみに村田ばら園のホームページには、イエローティーは別名を淡黄香水月季と呼ぶらしいので、オドラータ=キネンシス×ギガンティアとするなら、全部のバラにキネンシスが関係している事となります。

そもそもバラは春にしか咲かない一季咲き。そんな時代にやってきた、繰り返し花をつけるキネンシスや、強い芳香を放つオドラータとイエローティーは、外来品種であるという物珍しさとその強烈な個性から、ヨーロッパでも歓迎されたに違いありません。

さて、ここでマリア様がみてるの世界へと目を移してみましょう。

現実世界では、古代ギリシアの頃から人々に愛されたバラ。大航海時代にチャイナローズがその珍しさと性質から大歓迎されます。ヨーロッパでは余所者でありながら…

いとしき歳月(後編)で、卒業式を迎えられた三薔薇さま。江利子さまは蓉子さまとの思い出を振り返ります。外部受験組ながら成績優秀者として入学式で挨拶をする蓉子さま。そして、3日で蓉子さまはリリアンに馴染んだ、とも記載されています。

これはまさしく、キネンシスの歴史そのものではないでしょうか。余所者でありながら、そこで親しまれ愛された。蓉子さまは間違いなくロサ・キネンシスであるのです。

さらに、無印で柏木をビンタした祥子さま。温室で祐巳にこのバラがキネンシスだと教えます。「『四季咲きなのよ』祥子さまは誇らしげに言った(マリア様がみてる 234Pより)」

子羊たちの休暇で、別荘の周囲にある草木や野鳥を祐巳に説明していた祥子さま。きっとバラにもお詳しいのではないかと想像できます。キネンシスの四季咲き性を誇らしげに言うのも当たり前ですね。なぜなら、キネンシスだけが持ち合わせていた性質なのですから。そしてプライドの高い祥子さまは、自身の(そして蓉子さまや、そのお姉様、さらに前の紅薔薇さまの)ロサ・キネンシスの称号に誇りを持っていたことでしょう。

現代バラ(モダン・ローズ)は、ほぼ間違いなく四季咲き性です。育てる側としては、花は何度でも楽しみたいですよね。しかし、バラの新品種を開発する育種家の側だと少々面倒な性質であると言えます。

バラの四季咲き性は劣性遺伝(今は潜性でしたか)つまり、表に出てこない性質なのです。そのため、新品種の開発にあたっては、花色や形、耐病性などがきちんとしてるかに加えて、潜性である四季咲き性質も兼ね備えなければなりません。それは十年かかるとも言われています。それでもキネンシスから受け継がれてきた四季咲き性は、現在もなお受け継がれています。

マリみての世界ではどうでしょうか。「包み込んで守るのが姉。妹は支え」「友達は損な役回りを引き受けるために居る」そして、蓉子さまの悲願であった"開かれた山百合会"。これらは祐巳たちに引き継がれ、そして我々読者の心に残り続けています。

原種バラの中には、赤いバラはキネンシスだけではありません。ガリカやケンティフォリアもあります。ですが、キネンシスの歴史を辿ってみると、紅薔薇はキネンシスしかないのではないでしょうか。外来種でありながらも親しまれ、現代まで愛される。そんな祐巳たち主人公に相応しいバラだと思いませんか。

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