バラの歴史とマリみて番外編「薔薇の花かんむり」

ごきげんよう、はねおかです。
このご時世、バラ園巡りもままなりません。
佐倉草ぶえの丘バラ園、行きたかったなあ…
僕の大好きなオールドローズは開花が早く、ほとんど一季咲きであることから、来年まで待たなくてはいけません。
残念ですね。

さて、お題はこちら。マリア様がみてる 薔薇の花かんむり。

長々と続いた祐巳と瞳子の姉妹問題が決着し、ついにロザリオ授受へと至る作品です。
が、運転免許取得のために必死な祥子さま。結構序盤にあっさり済ませてしまいます。
むしろ乃梨子とか、周りの方が感激していますね。
これについては、祥子さまと祐巳の関係性の為せるワザでもあるわけですが。

この本のタイトルについて、作者の今野緒雪氏は、あとがきで以下のように語っています。

では「薔薇の花かんむり」とは何ぞや、というと、(ご存知の方も多いとは思いますが)ロザリオです。ロザリオは、聖母マリアにお祈りを捧げる「薔薇の輪」「薔薇の冠」という意味があります。
ですから今回のサブタイトルは、言い換えればすばり「ロザリオ」。祥子から祐巳に、祐巳から瞳子へと繋がっていく絆の象徴として選びました。

作品の内容にピッタリなタイトルですね。

さて、バラの歴史好きな僕としては、史実からのアプローチをしていきたいと思います。

バラの歴史とマリみて、というnoteで何度も申し上げておりますが、バラという植物とヒトとの歴史は、紀元前まで遡る事ができます。
紀元前7世紀には女流詩人サッフォーがバラを愛でる詩を。
紀元前6世紀にはピンダロスがバラを称賛する詩を発表していました。
紀元前3世紀には古代ギリシアのテオフラストスが書いた「植物誌」において、バラの植物学的な記述が認められています。

そんな紀元前から付き合いのあるバラですが、「植物誌」の中に興味深い記載があります。

栽培植物のほとんどが花冠用の植物から成っている。それらは例えばバラの類、…
(6巻1章-1)

ここから読み取れるのは、バラは栽培植物であるという点。そして、バラを花冠用に利用していたという点です。

市場へでかけてね、デーメートリオス、アミュンタースの店で三匹いわしをもらへ
そいから、小あぢを十匹ばかり、
それと芝えびを―あいつが自分で勘定してくれるだろ―
二十四匹ほどとって、家へ帰ってこい。
ついでにタウポリオスのところから薔薇の花環を六つほど買って…
そいからと、途中に寄ってトリュフェラアをすぐにと招ぶんだ。
(ギリシャ・ローマ抒情詩選アスクレピアデース「花冠」呉茂一・訳」

こちらはギリシア抒情詩の一遍です。
どうやら、客人を招こうとしています。
イワシやアジなどと一緒に、薔薇の花環を買ってくるように伝えています。

そうです。
薔薇の花冠は、客人をもてなすためのアイテムなのです。

話をマリみてに戻します。

今野緒雪氏は、薔薇の花かんむりをロザリオとしまして、紅薔薇姉妹の関係性としました。
僕はそこに、古代ギリシアの花環としての要素を加えたいと思います。
晴れて瞳子が祐巳の妹になりましたが、それは紅薔薇姉妹の問題な訳です。
他藩の事情に首を突っ込まない、とは水野蓉子さまでしたか。
しかし、薔薇の館で姉妹の報告をした際には、山百合会のメンバー全員が歓迎してくれました。
なかでも乃梨子は、大粒の涙を流して喜んでいました。

薔薇の花かんむり。
それは、瞳子を歓迎する山百合会メンバーからの花環…
というのはいいがでしょうか?

出典:オールドローズ花図譜/野村和子著、小学館

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