バラの歴史とマリア様がみてる番外編「孤高のバラ、ロサ・ペルシカ」

マリア様がみてる、に登場したバラといえば、「ロサ・キネンシス」「ロサ・ギガンティア」「ロサ・フェティダ」と「ロサ・カニーナ」
短編「温室の妖精」で登場した、テリハノイバラとサンショウバラ。これもそれぞれ「ロサ・ウィクライアナ」「ロサ・ヒルトゥーラ」となります。

これらは学名というもので、スウェーデンの植物学者リンネ(1707-1778)が生物を体系だてて分類したものが、現在まで引き継がれています。
学名(サイエンティフィック・ネーム)は、全てラテン語、もしくはラテン語化した言葉で表され、世界共通の呼び名となります。

ですので、ロサ・キネンシス(Rosa chinensis)は世界共通。コウシンバラ、月季花、長春というのは独自の呼び名となります。
紅薔薇さま、と書いてロサ・キネンシスと読むのは、我らマリみてファンだけですね。

マリみてファンなら一度は、自分が(もしくは、自分のオリキャラが)マリみて世界で名前をもらったら、という想像をしたでしょう。
○○薔薇さま、と呼ばれてみたい、と。

現在、私達が目にするバラは、モダンローズ(現代バラ)が多いでしょう。
樹形も花色も花形も香りも豊富。広く世界中で愛されています。

こういった流通している園芸品種のバラは、品種名を持っています。
育種家がそのバラに込めた想いを感じ取る事ができる、バラと育種家と私達を繋げてくれるものです。
命名の由来は様々で、ある人物に捧げたもの(クイーン・エリザベス、プリンセス・ミチコなど)や、和歌や百人一首からもじったもの(しのぶれど、春乃、恋結びなど)、神話などから名付けられたもの(キルケー、八女津媛、レッチフィールド・エンジェルなど)
ウーメロ、というバラは、コーサ語で「火」というらしいです。
コーサ語なんてあるんですかね?

当然これらは学名ではありませんから、頭にロサと付けてそれっぽく出来てしまいます。
しかし、本格的にマリみての世界に合わせるなら、学名の名付けられた原種バラから拝借してみてはいかがでしょうか。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回僕が紹介したいのが「ロサ・ペルシカ」です。

こちらがロサ・ペルシカ。

さて、リンネはまず、似ているものを集めて、そこから植物の特徴ごとに細かく分類していきました。
例えば、ロサ・キネンシスは”バラ属エウロサ亜属インディカ節”に所属します。
ちなみに、ロサ・ギガンティアは”バラ属エウロサ亜属インディカ節”で、キネンシスと一緒です。
ロサ・フェティダは”バラ属エウロサ亜属ピンピネリフォーリア節”です。
さらにテリハノイバラは”バラ属エウロサ亜属シンスティラ節”
…この辺にしておきましょうか。

そして、このロサ・ペルシカ。
こちらはなんと、バラ属フルテミア亜属という分類をされており、このフルテミア亜属には、このペルシカしか所属していません。
それもそのはず。別格待遇も頷けるほど、このペルシカは特殊なバラなのです。

5枚の花弁は珍しくありません(オールドローズにはこのような一重咲きのものも多い)が、特徴的なのは中央部にある色の変わった部分です。
これはブロッチと呼ばれ、ペルシカ独自のものです。

そして、ペルシカを語るときには欠かせないのが葉っぱです。
バラは複葉という、一つの葉に何枚もの葉が付いているものです。

これは黒点病とうどんこ病にかかってしまったバラの葉です。
このように複数枚からなる葉を持つものですが、ペルシカの葉は単葉。つまり、一枚だけです。
この特徴は、バラの野生種の中でもペルシカのみが持つ特徴。
葉の色も青みがかかっていて、一見するとバラには見えません。

こうなると、独自の分類をされるのも頷けますね。
どの分類にも当てはまらないバラ。
これがペルシカの特徴です。

そんな孤高のバラ、ロサ・ペルシカ。
こんな名前を頂戴したリリアン生はきっと、立浪繭や二年生の頃の聖さま以上に孤独な存在となったでしょう。
イランから中央アジアの乾燥地に自生しているので、高温多湿の日本では栽培難易度も最大級。
まず並のバラ園ではお目にかかることは出来ないでしょう。

バラにあって、どこにも属さない。
リリアン生にあって、どこにも属さない。
そんな生徒にこそ、ペルシカの名前が相応しい。

とはいえ、マリみてには姉妹制度があります。
このペルシカ、孤高故に一人でリリアンを去るのでしょうか?

いえ、そんなことはありません。

中央に模様が入るブロッチを気に入られ、1960年代から育種家たちが交配を始めました。
ラルサ・バビロンなどのバビロンシリーズや、アイズ・フォー・ユーといった、中央にブロッチの入ったバラが誕生しています。

立浪繭も佐藤聖も、作中では最後に孤独から救い出されています。
ロサ・ペルシカもまた、現代バラにその血を受け継がれています。

さて、もしこのペルシカの名を持つ生徒があらわれたら。
彼女は誰が救いの手を差し出してくれるのしょうか。

参考文献:オールドローズ花図譜(小学館 野村和子著)
別冊 NHK 趣味の園芸 バラ大図鑑(NHK出版)
ばら花図譜 国際版(鈴木省三著)

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