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バラの歴史からみたマリア様がみてる「ロサ・カニーナ」と「ザ・ハーバリスト」

ごきげんよう、はねおかです。
今回はロサ・カニーナをバラ目線からアプローチしていきたいと思います。

ロサ・カニーナ。
マリア様がみてるのタイトルの中で、バラの品種名が付けられているのはこれだけです

こちらが、ロサ・カニーナの実物です。

ロサ・カニナ(Rosa canina)

分類:原種バラ
樹形:半つる性
四季咲き性:一季咲き
花色:白の一重咲きにピンクの覆輪

以前、バラの歴史とマリみて「ロサ・カニーナ」という記事で紹介致しました。

この花を見れば、「ロサ・カニーナは黒薔薇、なんて嘘じゃん」と祐巳が言うのも分かりますね。

今回ご紹介したいバラは、ロサ・カニナではありません。

ザ・ハーバリスト(The Herbalist)

分類:イングリッシュローズ(デビッド・オースチン作出)
樹形:シュラブローズ
四季咲き性:四季咲き
花色:ピンクの半八重咲き

これまでのオールドローズや原種バラとは異なり、こちらはモダンローズ(現代バラ)です。

ザ・ハーバリストの名前は、「ハーブの薬剤師」という意味から採られたとの事。
何故かというと、このバラがロサ・ガリカ・オフィキナリスに似ているからなのです。

ロサ・ガリカ・オフィキナリス(Rosa gallica var. officinalis)

分類:原種バラ
樹形:つる性
四季咲き性:一季咲き
花形:濃ピンクの半八重咲き

英国、薔薇戦争で有名なランカスター家の家紋のモチーフにもなった赤薔薇です。

オフィキナリス(officinalis)とは「薬効のある」の意味で、ザ・ハーバリストの名前の由来もここから来ています。
別名を「薬剤師のバラ」と呼び、十三世紀から十八世紀二かけて、パリ郊外のプロヴァンでバラ水用に相当量のロサ・ガリカ・オフィキナリスが栽培されていた記録があるとのことです。

さて、植物とヒトの関わりは大変長いものがありますが、太古の時代にヒトが狩猟と採集で腹を満たしていた頃。そんな時代には植物というのは「実用性がある」か「実用性がない」かの二択だったことは間違いないでしょう。
食うに困る時に、美観を愛でる余裕などなかったでしょうからね。
実用性がある、というのは、食べられるとか、薬効があるという事です。

古代ギリシアでは、バラはローズオイルのために栽培されました。
日本でも昭和30年頃までノイバラの根を採集していたそうです。乾燥させ、利尿剤や瀉下剤(便秘薬)として使われ、日本薬局方に登録していました。

ロサ・カニナもまた、根や果実が犬の皮膚病や狂犬病に効くとされてきました。
また、豊富なビタミンCを含む果実(ローズヒップ)は、戦中に柑橘類の輸入を止めたイギリスでは「バラ作戦」の名でビタミンCが豊富なローズヒップを集めたそうです。

このように、バラというのは、美しさや芳香だけでなく、薬効でも人々に貢献してきた訳です。

話をマリア様がみてるに戻します。

蟹名という姓からロサ・カニーナの名を与えられた蟹名静さま。
彼女の振る舞いに大きく影響を受けたのは、藤堂志摩子さんでしょう。
静さまの挑発にも近い発言を受けて、生徒会役員選挙に立候補を決めた志摩子さん。

そして、志摩子さんはその日の放課後、選挙管理委員会に立候補の届け出を行ったのだ。結果的には、静さまの一言が志摩子さんの迷いを吹き飛ばしたといっていい。そんな事情を知っているのは、一部始終見ていた祐巳だけかもしれなかった。
(ロサ・カニーナ  99P)

これは、ロサ・カニーナの薬効と言えるでしょう。

「だから私、わかってしまいました」
(中略)
「何がわかったって?」
白薔薇さまが、扉を開けて待っている。
「静さまが、私とデートした理由の一つ」
駆け寄って、志摩子は告げた。
「理由って?」
「静さまのクラスメイトとつぼみとのわだかまりをなくすためです」
(ウァレンティーヌスの贈り物(後編) 148P)

志摩子さんの心を変え、対立構造になったクラスメイトの顔を立てた蟹名静さま。
「考えすぎじゃないの?」と聖さまは言っていますけども、ここにロサ・カニーナの薬効を感じずにはいられません。

この薬効、信じるか信じないか。
それは、読んだあなたの心の中にあることでしょう。

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