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マリみてワンドロSS集

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「マリみて版深夜のお絵描き60分一本勝負」で書いた、過去のSSをまとめました
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2023年2月の記事一覧

マリみてSS「Tell Your World」

お題:藤堂志摩子(2023/01/18)

「泣くのはいい傾向かもしれないね」
お姉さまの言葉が志摩子の頭に残っていた。
これが静さまの望んだ展開かどうかはわからない。
ただ、もう孤独はなかった。
お姉さまが受け止めてくれたから。
人前で泣いたのなんて、いつ以来だろうか。
そんな記憶が浮かばないほどに、私は感情を殺していたのだろうか。
片付けを終え、二人並んで薔薇の館を後にする。
ふと、同じ日を過

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マリみてSS「Impulse」

お題:島津由乃(2023/01/11)

「由乃は、菜々を応援していたね」
先刻かけられた言葉がこだまする。
「それでいいんだよ」
先刻かけられた言葉が残っている。
先刻行われた令ちゃんと菜々の手合わせは、勝敗もなく終わった。
引き上げた令ちゃんについていくことも、身支度を終え帰る菜々のどちらにもついていけなかった私は一人、剣道場に佇んでいた。
この手合わせは、菜々から言い出したことだ。帰り際の心

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マリみてSS「If I Fell」

お題:福沢祐巳(2023/01/04)

季節は秋。
リリアン女学園は、もっぱら来月に迫った学園祭の話題でもちきりだ。
「もし、もしもよ?」
休み時間。
祐巳の前の席にいる、桂さんが話しかけてきた。
もしも。
つまりは仮定の話であって。
If+主語+動詞の過去形…って、さっきの英語の授業が頭に残ってる。
「もし、祐巳さんにお姉さまがいたらよ?」
仮定の話だから。
だから、私にお姉さまがいないから成

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マリみてSS「かつて神童だったあなたへ」

お題:フリー(2022/12/28)

世の中は自分を中心に回っているわけではない。
だから、世の中のあらゆるものが私にとって面白くないのも。
だから、熊男が私をクリスマスも、元旦も私呼ばないのも。
全部仕方のないことなのだ。
あの人には娘さんもいるし。
そこに自分から行きたいと言い出せないのも。
そんな私の気持ちを察することができないほど不器用なあの人の性格も。
知っていて。
分かっていて。

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