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カーペットが憎い

今住んでいる部屋に越してきてから三年目に入っていたことに気が付いた。
引っ越しのきっかけはありふれたものなのだが、引っ越しそれ自体には紆余曲折があった。何しろ入居当日まで部屋に足を踏み入れることさえできなかったのである。

そもそも、自分で新しい住処を選んだわけでもなかった。地元と現住所はずいぶん遠いところで気軽に行き来できるものではなく、物件選びを人任せにしてしまったのだ。とはいっても事前に住所は知らされていたので、不動産屋さんのwebサイトで検索すれば室内の写真を見ることはできた。なるほど、フローリング敷きで掃除はしやすそう。風呂トイレは一応別。キッチンはいまいちだけど工夫すればひとり暮らしには十分かな。一部家電付き?家具は自分で選びたいな。

入居当日。床がカーペット敷きになっていた。

いや……。わかる。カーペット敷きにもメリットはあるのは知っている。
なぜならその場で「カーペット メリット」と検索したからだ。
たしかに下のフロアに音が響きにくいとか、滑りにくいとか、床を生活スペースにしやすいだとかいい部分はあるらしい。
でもきっと、自分で部屋を選んでいたならカーペット敷きであることを一番の理由にして選択肢から外したことだろう。

私はとにかく床にものを落としやすい。
それは飲み物や食べ物も例外ではないので床が水分を吸いやすい素材だといろいろと困るのである。もしこのカーペットがウールであればそれほど困ることはないのだけれど、所詮安物件なので化繊だろう。遠慮なく水や、お茶や、調味料を吸い取ってくれる。

カーペットはフローリングの木目よりも家具に対してフラットな感じがしないし、汚れが見づらいから掃除のタイミングが計りづらいし、掃除をしたところで見た目が変わらないのでやった気にならないし、膝や手をついたとき肌に跡が残って嫌だ。夏場は足の裏から熱が逃げなくてフローリングのひんやりした感じが無いのも嫌。匂いや汗を吸い取っていそうなのも嫌。何より、肌に感じるテクスチャが複雑なのがうっとうしい。私がこの部屋に愛着や親近感が湧かないのはひとえに床がカーペット敷きであるせいと言っても過言ではないだろう。

今この瞬間も結露したグラスから落ちた水滴が床に吸い取られていった。
カーペットが憎い。

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