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まるまるちゃんのお話(前編)

* * * * * * * * 

まあるく、まあるく生きてきたい。


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まるまるちゃんは、お山で暮らしていました。

まるまるちゃんは、丸いものが大好き。

そしてまんまるの体が自慢でした。

丸いものだけに囲まれて暮らしたいと思っていました。

でも、まるまるちゃんのお家から山の麓までの道はゴツゴツした岩でいっぱい。

そこを通るといつも、まるまるちゃんのまぁるい体は傷ついてボロボロになってしまうのです。

まるまるちゃんでなくて、ゴツゴツちゃんになってしまうみたい。

そうなると、まるまるちゃんは自分が自分でなくなってしまうみたいで、悲しい気持ちになるのです。
それに、まあるい形が一番きれいで美しいと思っていました。

まるまるちゃんは、ずっと丸いままでいたいと思っていました。

だから、まるまるちゃんは、お家の外に出たくありませんでした。

だから、いつも、まあるいお家のまあるい窓からお外を眺めていました。

晴れの日も、雨の日も、朝も、夜も。

夏の照り返す日差しの日も、冬の凍えるような真っ白な日も。

来る日も来る日も。


そうしていれば、まるまるちゃんは、ずっとまるいままで居られるのです。

だから、それでいいと思っていました。

そのままで幸せでした。


だけど、何年も経つうちに、まるまるちゃんは少しさみしくなってきました。

ほんとうは、まるまるちゃんだって家を出たいのです。
おともだちをつくって一緒に遊べたらいいな。

そんな風に思っていました。 

そんなある日のこと。
夜空にたくさんの流れ星が流れました。
それは、100年に1度の大流星群でした。

まるまるちゃんは、思わず、流れ星にむかって願いごとを言いました。

「お星さまお星さま、
 どうか私にもおともだちがたくさんできますように。
 本音で語り合えるすてきな仲間ができますように。
 そして、もっともっと、丸く美しくなれますように!」


その次の日の夜。

空から何か降ってきました。

星みたいに光りまたたいたそれは、ヒュンと勢いよく落ちてきて、まるまるちゃんの家の横の木に引っかかりました。


それを眺めていたまるまるちゃんは慌てて外へ出て駆け寄りました。

「だいじょうぶ?」

まるまるちゃんが声をかけると、そのピカピカした子は木の上で起き上がりました。

「いてて。でもだいじょうぶ!」

木から降りてきたその子は、まるまるちゃんとは全然違う姿をしていました。

からだ中、とがっていて、トゲトゲしていたのです。

そして、ピカピカと光を反射して輝く、大きくて丸い目をしていました。

「ぼく、トゲトゲちゃんっていうの。ね、ぼくお家がないの。しばらく泊めてもらえない?」

まるまるちゃんは

「いいよ」

と言いました。困ってるなら助けてあげたかったのです。

「ありがとう!」

トゲトゲちゃんはそう言うと、まるまるちゃんのお家にドタドタと上がり込みました。

それから、まるまるちゃんにとっては嫌な生活が始まりました


トゲトゲちゃんは、いろんなところが固く尖ってトゲトゲでした。

トゲトゲちゃんは、トゲトゲしているだけでなく、ドタドタと乱暴に走り回るので、まるまるちゃんの家はどんどんボロボロになりました。

トゲトゲちゃんの歩くところには穴が空き、ぶつかれば怪我をしました。

まるまるちゃんは、全身傷だらけになりました。

まるまるちゃんは、そんなトゲトゲちゃんのことが、次第に嫌になりました。

そして、ついにこう言ったのです。

「ごめんね、もう出ていって」

トゲトゲちゃんはキョトンとしていました。

「なんで?別に君に迷惑はかけてないし、もう少し居させてよ」

まるまるちゃんは我慢の限界でした。

「ダメだよ!あなたのせいで、わたしの生活はめちゃくちゃなの!わたしはまぁるく生きてきたし、これからもそうしたいの!
 でも、あなたがいるとわたしの丸い身体も大好きな丸いものたちも、全部ボロボロになっちゃうの!嫌なの!」

まるまるちゃんは、そうまくしたて、気付かぬうちに泣いていました。

でもそんなまるまるちゃんを見て、トゲトゲちゃんは、衝撃的なことを言い出したのです。

続く

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