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Chemical remodeling of a cellular chaperone to target the active state of mutant KRAS

https://www.science.org/doi/abs/10.1126/science.adg9652

  1. この研究の学術的背景と核心をなす「問い」は、「KRASは最も一般的ながん遺伝子の一つでありながら、小分子薬候補と結合するための適切な結合部位がないため、「薬物化不能」(undruggable)とされていますが、それを解決するアプローチはないか?そして、がんに関連する他の「薬物化不能」な標的に対する新たな治療戦略は何か?」です。

  2. この研究の目的は、新たな小分子製剤を開発し、KRASに間接的に作用することです。このアプローチは、細胞シャペロン(主にタンパク質を折りたたみ、安定化する役割を持つタンパク質)であるサイクロフィリンAを結合し、KRASがん遺伝子と三方複合体を形成します。この新規性と創造性は、従来、「薬物化不能」とされていた標的に対処するための全く新しい戦略を開発した点に見られます。

  3. 自然由来の薬物が KRASに間接的に作用する観察から、作者らはこの研究の着想を得ました。この研究は、がん遺伝子 KRAS を標的とした治療法の新たな可能性を探求するという、がん研究の重要な潮流に位置付けられます。

  4. 本研究では、サイクロフィリンAの表面を整形し、KRAS遺伝子のアクティブな状態に高い親和性と選択性を持つ新たなインターフェイスを作り出す自然由来の小分子をデザインしました。結果として、特定のKRAS変異(G12C)のアクティブ状態を高選択性でターゲットとするCYPA:薬物:KRASG12Cの三方複合体が造成され、これによりがんシグナルを不活動化し、さまざまな人間のがんモデルで腫瘍の成長を抑制することが実証されました。

  5. 研究の有効性は、作成した複合体ががん関連のシグナル伝達経路を効果的に阻害し、さまざまなヒトの癌モデルで腫瘍の成長を抑制することが観察されたことにより検証されました。さらに、新たに提案した戦略は、現在臨床試験(NCT05462717およびNCT05379985)の段階で、さらなる効能と安全性が評価されています。

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