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Characterization of the horse chestnut genome reveals the evolution of aescin and aesculin biosynthesis

  1. 本研究の学術的背景,研究課題の核心をなす学術的「問い」は?
    この研究の学術的背景は、植物が特定の種や系統に限定された薬用化合物を生産する過程で、どのような発現遺伝子クラスタが関与しているのかを明らかにすることです。具体的には、馬栗(Aesculus chinensis)という植物のゲノム解読を行い、その中で特に関連性のある薬用成分であるエスキン(aescin)とエスキュリン(aesculin)の生合成経路を解明しようとしています。

  2. 本研究の目的及び学術的独自性と創造性は?
    本研究の目的は、馬栗のゲノムを解読し、エスキンとエスキュリンの生合成遺伝子クラスタを特定することです。これにより、この植物がどのようにして薬用成分を生産しているのかを明らかにし、それに関与する鍵となる酵素を特定することを目指しています。この研究は、木の中で薬物を生産する機構の理解において新たな知見を提供することが期待されます。

  3. 本研究の着想に至った経緯や,関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけは?
    この研究は、他の植物における生合成遺伝子クラスタの研究と同様に、遺伝子の物理的な共時的配置に関する理解を深めるものです。これまでの研究では、ハーブ植物などでこのようなクラスタが存在することが示されてきましたが、木の場合の研究は限られています。この研究は、馬栗の薬物生産に関与する遺伝子の特定を通じて、木の薬用成分の形成機構に新たな光を当てることを目指しています。

  4. 本研究で何をどのように,どこまで明らかにした?
    本研究では、馬栗のゲノムアセンブリを行い、エスキンの生合成に関わる遺伝子クラスタとエスキュリンの生合成に関わる遺伝子を特定しました。具体的には、エスキン合成にはAcOCS6、AcCYP716A278、AcCYP716A275、AcCSL1の4つの遺伝子、エスキュリン合成にはAc4CL1-3、AcF6’H1-2、AcUGT84A56、AcUGT92G7などの遺伝子が関与していることが明らかにされました。また、他の植物種との比較から、この遺伝子クラスタが古い系統の花弁植物から存在しており、Aesculus、Acer、Xanthocerasといった系統の分岐よりも前に酵素が存在していたことが示唆されました。

  5. 本研究の有効性はどのように検証した?
    本研究では、遺伝子クラスタの特定だけでなく、特定した遺伝子が実際に薬物の生合成に関与しているかどうかを確認するための実験も行いました。具体的には、エスキンの生合成に関与する遺伝子を大腸菌で発現させ、エスキュリンの合成を実現しました。これにより、特定した遺伝子が実際に馬栗で生合成される薬物の生成に関与していることが実証されました。

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