見出し画像

Context-dependent perturbations in chromatin folding and the transcriptome by cohesin and related factors

  1. 本研究の学術的背景は、ゲノムの構造と遺伝子発現を共同または個々に制御する結合因子「コヒーシン」の役割にあります。この中での研究課題の核心をなす学術的「問い」は、「コヒーシンと関連因子がどのように3次元(3D)ゲノム構造と遺伝子発現を調節するか」です。

  2. 本研究の目的は、コヒーシンと関連因子の消耗前後での3次元ゲノム構造、転写物およびエピゲノムのデータを生成し、それらを比較することにより、3次元ゲノム構造と遺伝子発現の調整メカニズムを理解することです。そのための主な手法として、複数のオミックスデータを比較検討するための計算ツール「CustardPy」を開発しました。

  3. 研究の着想は、ゲノムの3次元的な組織化や遺伝子発現の規制にはコヒーシンが重要な役割を果たしていることが明らかにされてきた一方で、それらの詳細なメカニズムはまだ十分に理解されていないという先行研究から得られました。具体的には、コヒーシンが失われた場合、トポロジーカル関連ドメイン(TAD)の分裂が起こり、それがそれぞれ遺伝子発現にどのように影響を与えるかを明らかにすることが、この研究の中心的なテーマとなっています。

  4. 本研究では、コヒーシンと関連因子の消耗前後での3次元ゲノム、転写物、エピゲノムのデータを収集し、それらを組み合わせた多岐にわたる解析を行いました。結果として、コヒーシンの欠損によるTADの分裂が遺伝子発現の異常と関連していること、コヒーシンがマイナスの影響を受けると、クロマチンとの関連性が持続し、CTCFが消耗されても維持されること、破壊された遠位相互作用がループアンカーやTADのエピジェノム状態と相関していることなどを明らかにしました。

  5. 本研究の有効性は、コヒーシンと関連因子の消耗前後での3次元ゲノム、転写物、エピゲノムのデータを生成し、それらをCustardPyという自己開発のツールセットを用いて比較、解析することで検証しました。また、得られた結果が、異なる細胞タイプと消耗方法を用いた過去の研究と一致することで、研究方法の信頼性を確認しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?