れんあいの事 2

高校を卒業してすぐに出来た初めての彼女は、大阪の美容師の専門学校に通っていて、僕は毎月その女子寮に忍び込んで…と前回の続きを書いていこうと思ったけど、長くなりそうな割に面白くなさそうだったのでやめた。かと言って、この後の話が面白い保証はないけど。

端折って、その彼女との結末を。同棲を始めて4年経った頃に突然彼女は「わたし中国へ留学に行く」と言った。僕は「えっ!なんで!中国とか興味あった!?ていうか俺たちこのまま結婚するんじゃないの!?」と我を忘れ…という事も無く、「へぇー良いんじゃない?」と答え、彼女は家を出て行った。そして人生は進む。恋愛2nd.恋愛だ。

その当時、携帯電話は普及し始めていたけど、メール機能はまだ無かった。世間では「インターネット」という言葉が普及し始めていた。流行に敏感だった僕も、当然早い段階で「無修正のエロ画像が見れるらしい」と話題になっていたそのインターネットに接続できる環境にしていた。当然、接続するのは夜の11時からで、「ピーガーピーガー」と接続音が鳴っていた。

「メール」ではなく「Eメール」と呼ばれてたその頃、僕に「森野君、Eメール出来るの?アドレス交換しようよ!」と言って来た大学生の女の子がいた。世間では少し前に『ユー・ガット・メール』なんて映画が流行っていた。

その女の子の事は以前から知っていた。彼氏と一緒によくクラブへ遊びに来ていて、仲良くなり、よく3人で喋っていた。彼氏は「Eメールとか良く分かんないけどいいじゃん!森野君、やってあげてよ!」みたいなノリで、そのままアドレスを交換して翌日からメールのやり取りが始まった。

今の様に身近になった「メール」の感覚ではなく、「最新テクノロジーを使える者同士のみが行える文通」みたいな感覚だったので、僕も罪悪感は持たずに、お互い「今日はこんな事があった」みたいな事を書いて、楽しくやり取りをしていた。

そして1ヶ月位経った頃、僕は彼女の事を好きになってしまっていた。毎日のメールは「文通」なんかではなくて「交換日記」だった。

でも彼女には彼氏がいるし…彼氏良い奴だし…。仕事中も職場の隅でうずくまり「ダメだ…好きになっちゃダメだ!」と苦しんでいた数日後、彼女から「こんな事言ったら嫌われるかもしれないけど、森野君の事を好きになってしまった…」というメールが来た。僕はすぐに電話を掛けて「僕も実は好きなんだけど!」と世界の中心で、いや宇宙よりも遠い場所で叫び、僕達は付き合うことになった。

その数日後は花火大会だったので、もちろん一緒に行った。会場に行った後、ビルの屋上で2人っきりで花火を観た。

彼女との思い出を書こう。初めてサンプラーで作った自作曲を聴かせたのは彼女だ。五千円超えのアシッドフォークのレア盤をサンプリングしてループしてヒップホップのビートに乗せただけの曲。

今でもその聴かせた時の事ははっきりと覚えている。岡山駅西口前のミスドの店内。ウォークマンで聴いている彼女は「すご!森野君すご!」と言っていた。まあそうだろう。なぜなら俺は天才なのだから!そう思っていたその時の僕は、当時「ファッション的にこれが最先端だろ」と自分なりに思っていた「麦わら帽子」を被っていた。もちろんその当時、ワンピースはまだ世に存在しない。

しかしそんな事より、彼女との思い出の中で一番印象に残ってるのは、彼女の友人の女の子の家で遊んだ時の事だ。

その友人の女の子は、彼女と同じ大学生で、当時僕が月に一度DJをしていたDJバーでバイトをしていた。僕もそこに行く度に友達感覚でよく話をしていて、仲が良かった。可愛くて愛想もあり、地元のDJにとってはちょっとアイドル的存在だった。

ある日、彼女に誘われてその女の子の家に遊びに行く事になった。部屋に入ると、そのDJバーのマスターがいた。その友人の女の子は、マスター(40代半ば)の愛人だったのだ。僕は「ええ…何この状況…」と思いながら、オーナーと一緒にマリオカートをした。

そんな事も経て、付き合ってから2週間後、彼女から「元カレから『やり直そう』って電話がめちゃ掛かって来て…わたし、森野君の事も元カレの事も両方好きなのが分かったから、両方と別れる!」と言われた。両方?今付き合ってるのは俺だが?

好きになっちゃダメな人を好きになる→悩む日々→その相手から告られる。そんな激奇跡を経験して2週間後、それまで生きて来て「彼女にフラれる」という経験が無かった僕は、おそらく今まで誰も名前を付けていないと思われる、あのおぞましい「なんか常に胸がめっちゃモヤモヤして超辛いやつ」に苛まれた。(←名前あるらしいです)

その巨大な謎の辛いやつは、凄かった。どうにかして逃れたかった僕は、朝起きたらまず酒を飲み、仕事後は毎日誰かを飲みに誘って、スピリタスを飲んだりしてた。そんな風にするしか方法が思い浮かばなかった。酔って訳が分からなくなって、カウンターの上に登ってズボンを抜いで踊ったりもした(その時の証拠写真は残っている)。飲みに誘って、来てくれてた相手(だいたい年上)は皆が揃って「まあ、時間が経ったら楽になるから大丈夫」とか言っていた。僕は「はー?そんなわけあるか!アホか!年上なのにアホなんか!?」と思ってたけど、その通りでした。ありがとう優しい年上の人たち。1年後、僕はまた恋をしました。しかも相手は高校生だ。

ちなみに「森野君の事も元カレの事も両方好きなのが分かったから、両方と別れる!」と言い放ったその彼女は、その後元カレと結婚したそうです。

これが僕の2nd.恋愛の話。3rd.恋愛は結婚編です。

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