おんがくの事

僕が他の誰かに与えられるのは「僕の事」しかない。なので、僕は今こうして文章を書いているし、僕はたまたま音楽を作れる能力を持っていたので音楽を作る(10年に1度程度)。そしてそんな僕は、アーティストとしては超底辺だ。しかし、自分が作って来た音楽に誇りを持ってるし、過去リリースした2枚のアルバムも、これからリリースする新しいアルバムも、自分にとっては、過去に聴いて来たどの名盤をも上回る名盤だ。『サージェント・ペパーズ』も『ベガーズ・バンケット』も『スクリーマデリカ』もマジで超えてる。僕の中だけでは。ただ、ダニー・ハサウェイの『ライヴ』や、グレン・グールドの『ゴールドベルク変奏曲』は超えてない。それくらいの節度は持っている。でも「俺のアルバムを評価してない奴とか全員クソだわ。聴いたことない奴は全員アホだわ」と、本気で思っている。本気で思っている!自分が自分の作品をそう思ってなかったら、それで他人から金を奪う様な真似は出来ないだろう。僕は本当に下らない人間だけど、僕の作品は違う。そう思いたい。

noteの1回目は、自分と音楽の話。今これを読んでいる、ある意味「可哀想」な皆さんには、共感してもらえる要素も含まれているだろう。そう思いたい。

まず最初に言いたいのは、小学生の時の僕はとにかくモテていた。なぜなら、顔はめちゃかわいかったし、テストでは100点以外をほぼ取った事が無く、毎年学級委員長。さらにその上、学年で1番足が速かったのだ。もう充分だろう。女子達のライフはゼロだろう。しかも恐ろしい事に、僕はドッジボールでも校内最強レベルだったのだ!ヤバすぎ。そして、ここが僕の人生のピークだ。

中学の体育の時間、クラスのイケメン人気者が「昨日ミュージックステーションにB'z出てたよね!」と誰かに言っていた。僕は「はぁ?俺は昨日13th Floor Elevators聴いてたけど?」と思った。これが全てだ。モテる奴はB'zを聴くし、モテない奴はB'z以外を聴くのだ。13th Floor Elevatorsはちょっと極端だけれど。

その頃の僕は『ロッキンオン』とか『宝島』とか『バンドやろうぜ』といった雑誌を愛読し、学校の帰り道にレンタルCD屋に通い、それをカセットテープにダビングし、歌詞カードをコピーし、友達に向けて己の全てをぶつけたオムニバステープを作って、その全曲解説を書いたり、『ロック名盤100選』的な本とかみうらじゅんの本を読んだりする毎日だった。当たり前だけど太宰治とかも読んで、失格っぷりに憧れてたりしてた。「でもやっぱ『斜陽』だよなー」とか。周りの皆が聴いてるボウイもブルーハーツも大嫌いだった。周りの誰も観てない『イカ天』も大嫌いだった。

毎日の様に通ってたレンタルCD屋で、ニューエスト・モデルのメジャー1st『ソウル・サヴァイヴァー』とエルヴィス・コステロの当時の新譜『スパイク』を一緒に借りた時の事は、今でもはっきりと覚えている。何故覚えてるのかと言えば、その日の夜、音楽的に共有出来ていた友人「ゲロ」と神社の前で会い、「さっき彼女とキスしたわ」と言われたからだ。「ダメだ!あいつは終わってしまった!」と思いながら、その2枚のアルバムを聴いたからだ。

中学の頃を思い出したらなんだか少し悲しくなって来た。ただ、共感してくれた人には悪いが、お前と違うのは、俺は、陸上部のキャプテンだったのだ!どうだ!まあ、それでもモテなかったのだけど。同じ陸上部の女子から「森野くん、一緒の委員会に入ろ!」と誘われ、その瞬間に好きになったのに、その後すぐに先輩と付き合ってる事を知り、その日の放課後に学校の裏山に登って、頂上の岩の上で泣いた事を思い出したわ。泣いたわー岩の上で。泣いてる僕の横には、小4の時点でちん毛が生えてたからあだ名が「おとな」だった大石君がいた。サンキューおとな。ちなみにおとなは、シュワルツェネッガーのモノマネが得意だった。

少し脱線して「これはもしかしてモテてたのかもしれない」という高校の時のエピソードを。

高校は共学だったけど、女子と会話したのは、3年間でトータル1分くらいだろう。その内の30秒の話。それまで全く喋った事がなかった、同じクラスのヤンキー女子(ヤンキー女子なのでもちろん可愛い)が退学になり、その最後の時、教室で「森野も全然学校来てないんだし、アタシと一緒に学校辞めない?」と言われた。「これもうプロポーズや!」と思いドキドキしながらも、「は?お前と一緒にすんなよ」と跳ね付けた。もしあの時あのプロポーズを受け入れてたら、僕はその後きっとミスチルを聴いてただろう。あそこで結婚しなくて良かった。  

まあ、中高でもし僕が所謂リア充だったら、キンクスもソニック・ユースもパブリック・エナミーもフリッパーズ・ギターも聴くことは無かっただろう。ドリカムを聴いて感動してた人生だっただろう。でも多分違うのだ。ソニック・ユースとか聴いてる人間だからモテなかったのだ。そして、モテないから変な音楽聴く様な人間になり、変な音楽聴く様な人間だからモテない。出口は無かったのだ。

でも、高校を卒業してから現在まで、何人かの女性とお付き合い出来たし、10年間だったけど結婚もした。ミスチルも聴かずに彼女が出来たり結婚出来るなんて、俺勝ち組すぎだろ。しかも、全員めちゃ可愛いかったからな!ざまーみろ!でもまあ、全員がヤバい女でしたが…。飲みの場とかで僕の過去の恋愛話をするとだいたい受けるので、この話はまたいつか。

おそらく、当時B'zとかドリカムを聴いてた同級生達は今、当然の様に結婚して子供もいて、僕よりも幸せな人生を送っているはずだ。でも、僕は負けを認めない。僕は、あいつらが死ぬまで一度も聴く事は無いであろう音楽を知っているし、僕には、僕が作る音楽を聴いてくれて、こんな文章を読んでくれる人もいる。そんな風に強がり、生きているのです。

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