米シリコンバレー銀行の破綻が金融市場に与える影響について

●FDICは3月10日米シリコンバレー銀行の破綻を発表、米銀の破綻としては史上2番目の規模に。
●市場では、他の金融機関の有価証券にも損失が発生するとの懸念から、リスクオフの動きが顕著。
●米財務省、FRB、FDICは早々に施策を発表、市場の混乱を鎮静化させるのに大きく貢献しよう。
FDICは3月10日米シリコンバレー銀行の破綻を発表、米銀の破綻としては史上2番目の規模に

米連邦預金保険公社(FDIC)は3月10日、銀行持ち株会社SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻したと発表しました。FDICによると、2022年末時点におけるSVBの総資産は約2,090億ドルに達しており、米銀の破綻では、2008年9月に起きたワシントン・ミューチュアル(総資産3,070億ドル)の破綻に次ぐ史上2番目の規模となります。
 
SVBは、スタートアップ向けの融資で知られていましたが、株式で資金調達を拡大したスタートアップの余剰資金を預金として受け入れた結果、総預金残高は約1,754億ドルに膨れ上がりました(FDICによる2022年末時点の残高)。スタートアップへの融資需要が見込めないなか、SVBは急増した預金を、住宅ローン担保証券(MBS)や米国債で運用していました。市場では、他の金融機関の有価証券にも損失が発生するとの懸念から、リスクオフの動きが顕著しかしながら、昨年来の米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ実施により、SVBの保有する有価証券の価格が下落し、損失が発生する状況に至りました。そのため、SVBファイナンシャル・グループは3月8日、資本増強のために普通株の発行などで22億ドル強を調達すると発表し、同時に、SVBは有価証券約210億ドルを売却し、税引き後利益ベースで約18億ドルの損失を計上することを明らかにしました。
 
ただ、この発表が逆に信用不安を招く結果となり、9日にはSVBの預金流出が加速し、SVBファイナンシャル・グループの株価は急落しました。また、これら一連の流れを受け、米金融市場では、他の金融機関もSVBと同様、米長期金利の上昇で保有有価証券に含み損が膨らみ、将来的に売却損が生じる恐れがあるとの懸念が広がり、リスクオフ(回避)の動きが強まりました。米財務省、FRB、FDICは早々に施策を発表、市場の混乱を鎮静化させるのに大きく貢献しよう。今回のSVBの破綻は、流動性管理や金利リスクの管理に問題があったSVB固有の事情が主因であることから、他行も同じ状況と考えるのは行き過ぎた懸念との声も聞かれます。ただ、長期金利上昇による保有有価証券への影響は、広く金融機関に共通します。なお、ニューヨーク州金融監督当局は3月12日、暗号資産関連企業との取引で知られる米銀シグネチャー・バンクの破綻を発表しました。
 
このような状況下、米財務省、FRB、FDICは3月12日、SVBとシグネチャー・バンクの預金を全額保護する例外措置を発表しました。また、FRBは同日、SVBの破綻を機に金融システム全体が機能不全に陥る「システミックリスク」を抑制するため、新たな流動性対策(Bank Term Funding Program、BTFP)を発表しました。これらの施策は、市場の混乱を鎮静化させるのに大きく貢献すると思われます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?