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持続可能な社会【断片】

「すごい大きい話をするとさ、人間なんて大宇宙の中ではちっぽけな存在なんだ、本当に」

「だから何?」

「どデカイスケールで考えると、だ。『持続可能な社会』なんてことを言っていたけど、あれは人間にとっての話で、地球にとっちゃ気温が何度上がろうが、下がろうが、二酸化炭素濃度がどうなろうが、知ったこっちゃない。だって、生まれたばかりの頃の地球なんて火の玉みたいなもんだったし。縄文時代だって気温は高かった。気候変動なんて何回、寒くなったり、暑くなったりしてきたと思ってる?」

「そうね」

「そして、地球は50億年後には赤色巨星になった太陽に飲み込まれる運命だ。そしてそれよりはるか前、10億年後には巨大化を始めた太陽の熱で、地球上は生命が住める場所ではなくなってしまう」

「で?」

「だから、何をしても無駄ってこと。そんなことより愛し合わないかい?」

「じゃあ、とっととくたばるのね。明日どころか今日の食料も危ういっていうのに。日が昇ったら気温は50度になるわ。今のうちに魚を獲ってきて。私は畑を耕すから」

 気温が最も低い日の出前が、人間のもっとも活動的な時間になって久しい。人類は夜行性の動物になった。

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