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歯学部の先生に気になることを聞いてみた

はじめまして。大阪大学歯学部1年の山内みなみです。

突然ですが皆さん、ギネスブックに「地球的規模で蔓延している、人類史上最大の感染症」として登録された感染症って何かご存じですか?

インフルエンザ?コロナウイルス?エイズ・結核・マラリア?・・・正解は歯周病です。

今回、授業の一環で阪大の先生にインタビューをするということで、歯周病に関する研究を行っている大阪大学歯学研究科口腔科学専攻の村上伸也先生にお話を伺ってきました。

なぜ大学教員の道を選んだのですか。
 もともと教員になろうと思って歯学部に入学したわけではなく、歯学部とは、歯科医師免許を取得し、開業して地域医療に貢献するためのところと思って入学しました。当時は、研修医の制度がなかったので、卒業後は臨床に進むか大学院に入学するかの二択でした。歯学部の勉強の中で、歯周病学が僕にとっては面白いと思っていたため、先代の教授に卒業後のことで相談させてもらった時に、大学院に進むことを勧めてもらったことがきっかけになります。私はそのあと先代の教授の推薦で、歯学研究科の大学院生として、医学研究科の基礎の研究室で研究をさせていただきました。そして再び医学部の先生にも歯学部の先生にも留学を進められて、アメリカに2、3年ほど留学しました。
 6~7年研究した後に研究は面白いなと感じ、大学で研究をしてみようと思いました。研究中、実験はうまくいかないことの方が多いです。ある日、やっと仮説通りの実験結果が出た時がありました。当時、アメリカに留学中だったため、近くのラボの日本人の先生に報告したところ「この瞬間、でこの事実を知っているのは君だけやな」と言ってもらえて、研究っていいなと思いました。世界で初めて誰も知らないことを見つけた瞬間が自分に訪れることは素敵なことだな、研究を続けてみたいなと思って帰国したことが私の教員としてのスタート地点です。
 実際には、臨床系の教室で教員になるということは教育、研究、診療の三つのバランスをとることが求められます。それぞれの魅力を説明することが満点の答えかもしれませんが、その中の研究活動という面で魅力を私は感じたのでこれを軸にお話ししました。

研究で大変なこと、またやりがいについて教えてください。
 研究には色々な定義があると思いますが、「世界で誰も知らないことを明らかにする」ということだと思います。例えば、1つの論文を書くのに図や表が10個必要だとすると、1日1個綺麗な結果がでたなら、10日間で書くことが出来ます。しかし、実験は上手くいかないことや準備のために要する時間の方がはるかに長いです。例えば、実験の対象となるビーグル犬の下準備には2、3か月かかり、実験をするのに1、2か月、その後、顕微鏡で観察するのに2,3か月かかります。すべて合わせると、8か月から9か月は必要となります。
 ですが、これだけ時間をかけてもきれいな結果が出る保証はありません。うまくいかないストレスや、あと少しだったのにという悔しい気持ちを味わうこともあります。先人の道を辿るのではなくて、自分で道を切り開かないといけないという部分が大変なことだと思います。しかし、自分で切り開いた道を振り返った時にふもとから頂上まで上がってきているのを見ると涙が出そうなほど感動します。そして。その道のあとを続こうとする後輩が出来るとやって良かったと思いますし、また新たな道を切り開こうという気持ちになります。これがやりがいですね。

大学生のうちにやっておいた方がいいことはありますか。
 英語の勉強ですかね。私は大学受験のとき英語が得意科目でしたが、受験が終わったあと英単語やフレーズを覚えていませんでした。もっと上手になりたいという努力をしてこなかったなと思います。10人中10人の学生が英語を勉強した方が良いと思いつつも努力をしていません。英語を例として挙げましたが、一見自分に直接関わっていないことでも継続して勉強することが長い年月が経ったときに大きな差となります。留学中でも何となく英語は話せるようにはなります。しかし、ある時に格調高い、大阪大学の教員としてふさわしい英語だったのかと考えると努力を続けるべきでした。英語が苦手という人はそういう意識を無くすことから始めて、ボキャブラリーを増やすところから始めると良いと思います。
 それから、まとまった量の良い文章を読む経験を積むことも大切だと思います。説得力のある合理的でわかりやすい文章を書きたいと思ってもすぐに出来るようなものではありません。普段の習慣として良い文章を読むと良いと思います。

大学生にはどのように勉強して欲しいですか。
 能動的に勉強する習慣をつけてほしいです。課題を与えられてそれを解くということも大事な経験ですけど、課題をきっかけとして先生も予想していないようなところまで考えを広げる勉強をすることは難しいけれど理想ではありますね。言われたことをやるだけじゃ少し寂しい気がします。問われていないことまで調べて勉強することで勉強の幅を広げられると良いと思います。
 もう一つは、基礎的な勉強と臨床的な勉強は相互に関係しています。前に勉強した基礎的な知識が臨床ではどのように生かされているのか、逆に、臨床でみた症状が、基礎的な目でみるとどうなっているのかを考えることが大切です。知識が3次元的に構築されているのが望ましいことですね。歯科は外科的な部分が多いのでうまくいかないことがあると、技術的なことに目を向けがちになります。ですが、それには科学的根拠があります。その背景の事実を考えて、勉強していくと面白くなりますし、その方が応用することが出来るようになるので、そんな風に勉強してくれたらいいなと思います。

普段の生活で健康な歯を保つために心がけるべきことはありますか。
 口の中の病気の確率では細菌性の感染症であるう蝕(虫歯)と歯周病が高いです。直接的な対策としてはプラークコントロールがあります。プラーク(歯垢)とはお口の中のバクテリアの塊のことで管理しないと悪玉菌が増えることが分かっています。デンタルプラークをためないように清掃器具を使って汚れを除去することが大切です。間接的な対策として、歯周病は体調の影響を受けるので免疫力を下げないことが大切です。ストレスやたばこによっても免疫力は下がり、歯周病が発症、進行しやすくなってしまいます。体の状態にも気をつけてあげることが大切ですね。

インタビューを終えて
今回のインタビューでは、研究、学生生活など普段は聞くことのできない沢山のことを知ることができ、とても有意義な時間となりました。現時点では、私は臨床に進みたいなと思っていますが、インタビュー中に、臨床の知識と基礎的な知識は、相互に関係しているとおっしゃっていたので、3次元的な知識を構築し、根拠に基づいた治療を行うことができる歯科医師になれるように、頑張っていきたいなと思います。
 最後になりましたが、この度インタビューを快く引き受けてくださった村上伸也先生、ありがとうございました。


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