文化の異なる人々との共生とオンライン授業について
こんにちは。大阪大学外国語学部の近堂陸玖です。
皆さんは、自分とは文化の異なる人々のことについて考えたことがありますか?
私は、時々外国から移住してきたと思われる人を見かけることがありますが、どこから移住してきたのか?どんな感じに暮らしているのだろうか? といったことを思ったことはあっても、そういった人々についてあまり深く考えたことはありませんでした。
しかし、「政治の世界」という中東についての授業を受けるなかで、今の日本の文化と大きく異なる文化の人々のことや、そういった人々とどのように関わっていくのが良いのかということに関心を持つようになりました。
そこで、文化の異なる人々がどのようなルールの下でなら平和に共存できるかということを研究されている、大阪大学国際公共政策研究科准教授の河村倫哉先生に、私が関心を持ったことや、オンライン授業についてお話を伺いました。
河村先生の研究について
なぜ今されている研究に興味を持つようになったのですか?
そうだね…僕が大学3年生の頃に冷戦が終わって、社会主義と資本主義の国々で対立していたっていうのが終わりました。まあ社会主義は誤りだったということになり、自由主義が正しいという感じになったので、自由主義の研究をやってみようと思いました。けれども、自由主義ですべてがうまくいくかというと、そういうわけにもいかなくて、簡単に自由主義だけでは割り切れない問題が出てきたので、そういうものを研究したいと思ったという感じかな。
移民について考えることが多いということですが、主にどういった移民(例えばアフリカからの移民といった感じ)について考えることが多いのですか?
実証的な研究というよりは理論的な研究だから、割と移民全体に近いとは思いますね。別にアフリカからの移民のことを排除しているわけではないけれども、イスラム教徒の移民のことを念頭に置いていることが多いかな。というのは、例えばイスラム教徒の中には、リベラルでない、自由主義的でない風習を持っている場合があるよね。例えば、女性は男性と一緒じゃないと外出できません、とか。イスラム教徒にも色々いるけれど、厳格な人はそういう感じの風習を持っている。そういった人たちが移民として入ってくると、自由主義の考え方にそぐわないようなことを、果たして維持していいのかどうなのかといった問題が出てくるので、そういったことを考察の対象にすることがあるね。
授業中、中東に行ったことがあるというお話があったのですが、実際に現地に行って何か感じたことはありますか?
まあ、細かい点では本や論文に書いてあったこととは違うなと感じたことはあったし、書いてあった通りだったとしても実際に見た時に受けるインパクトっていうのが全然違うよね。そういう意味ではやっぱり現地に行ってみるということは価値があったなという風に思ったね。あと、向こうの大学の先生とかとも会って、なかなか日本では得られない事情とかを聞けたり、あるいは、現地の人自身が実際どう感じているのかというのを、報道を通じて聞くのと本人の口から聞くのではやっぱり重みが違うね。そういった点も非常に役に立ったかな。
移民との関わりについて
メディアは実情をすべて報道することはできませんが、そのことについてどう思われますか?
メディアは一方ではやっぱり人々に関心を持ってもらって、見てもらわなきゃとか聞いてもらわなきゃというのがあるから、いろんな出来事からどういう素材を選び出して人に伝えるかということで注目をいっぱいされそうなものを持ってきて伝えるってことになるよね。地味に平和に暮らしていますってことを報道しても「ふーん。」で終わっちゃうわけで。
それよりはこんな出来事が起こってこんな感じで人々が苦しんでいますって報道したほうが耳目を集める。そういう意味では偏りが出てしまうのはしょうがないとは思うけれども、その点はいろいろなメディアが複数あったり、メディアだけでなくいろいろな研究であったり、あるいは最近だったら一般の人が発信できるわけで、そうやって足りないところは複数の人たちでカバーして何とか少しでも真実に近いものになるようにということを考えていかなきゃいけない。
移民が問題を起こしているというような報道がされることがあります。そういった報道についてどう思われますか?
問題を起こしている人は実際にいるだろうけれどね、そういう人があたかもすべてのような感じに報道されるのは問題だという風に思いますね。当たり前のことだけど、何か争いごとや事件が起きれば当事者のもっともな点や悪い点があるのでそういうのを細かく調べていくことが必要です。移民が暴れているということは悪いことで、その暴れている移民に責任はあるんだけど、差別されていたり、なかなか職が見つからないというような事情を考えることもなく、全部暴れる移民が悪いんだということになるとおかしいかなって思いますね。
日本は移民の受け入れ数が少ないと言われていますが、このことについてどう思われますか?
まあ、少なすぎると思うけれどねえ…でもこれは意見が分かれるところで、移民を受け入れようという一般の人のコンセンサスがあまり無いのに、無理して受け入れても混乱が生じるだけだから控えめにいこうという人や、もっと積極的に受け入れたらいいんじゃないかという人もいます。僕は後者かな。移民の人とは文化が違うから当然摩擦が起こると考えるんじゃなくて、文化が違ってもそれを乗り越えるような制度を作ったり、あるいは、交流を促進したりそういうことはできるんで、そういう対策と並行して移民の人たちをもっと大胆に受け入れていった方がいいと思いますね。
そのためには一人一人の心持ちが大事ですよね?
(とよなか国際交流センターでの日本語交流活動の様子)
確かに心持ちも大事だと思うけど、他にもいろいろ大事なことがあるかな。移民の人たちとの交流や情報の流通とかね。例えば箕面市や豊中市でもやっているんだけれども、ボランティアで移民の人たちに日本語を教えたり、相談に乗ったりなどの交流活動があります。でも、普通の日本人はそんなことを知らないよね。そういう活動の情報が広まって、楽しみながら交流を深めていって、移民の人たちってよく知らなかったけどまあこういう普通の人たちがたくさんいるんだということが知られるようになれば、たくさん受け入れていってもそんなに問題ないんじゃないかと人々が考えるようになるのではないかと思いますね。
オンライン授業について
次に、オンライン授業についてなのですが、例えば便利な点や不便な点など、オンライン授業について何か思うことはありますか?
基本的にはやっぱり不便かな。学生たちの生の反応を見ることができないっていうのは、非常にやりにくいね。先生達同士での会議とかだったらそのためだけに大学に行くのは面倒だからオンラインの方がいいなと思うけれど、授業は対面式の方がいいなと僕は思います。
これまでにオンラインで授業をしようと思ったことはありますか?
例えば出張先からといった感じで。
それなら脳裏をかすめたことぐらいはあるかもしれないね。出張で外国とかに行って授業までに帰って来られないということになったときはこれまでにあって、その時は休講にしていたけれども、オンラインで授業ができるんだったらそっちの方が良かったかもしれないね。まあ言われてみればっていう感じだね。
おわりに
オンライン授業については、混乱が生じたり、不便な点はあるにしても、メリットはあるので、うまく活用することが大切だと思います。
何か問題を解決するためには、まず問題を知ってそれについて関心を持つということが大事で、その後一部だけではなく全体を正しく理解し、原因を明らかにして、解決するための行動をとることが大事だと思います。私はこのインタビューを通して、文化の異なる人々に対する関心がさらに高まりました。また、世の中の様々なことを、自分には関係ないことだと無視するのではなくて、もっと知り、関心を持とうと思うようになりました。
最後になりましたが、インタビューを引き受けてくださった河村倫哉先生、ありがとうございました。