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実験心理学の先生にお話を聞いてきた

初めまして。大阪大学医学部保健学科看護学専攻1年の水嶋蒼来です。

大阪大学に入学して4ヶ月が過ぎようとしています。大学では自分の専攻ではない友人や授業の話を聞ける機会も多く、大学ならではの面白さを感じながら過ごしています。そこで今回は、私の専攻とは異なり、以前から興味があった心理学を研究されている、入戸野宏先生にお話を伺ってきました。


入戸野宏先生


1.専攻を決めたきっかけ

―先生は人間科学部ご出身とのことですが、なぜ現在の学部、専攻を選ばれたのですか?

はい、高校生の時は哲学者になりたくて、いろんなことを考えたり読書をしたりするのが好きでした。そのなかで人間科学っていう名前に憧れたのがきっかけです。”人間を科学する”ってすごいなあ、っていう感じがしてね。その当時、人間科学部っていうのは国立大学では大阪大学と、私学では早稲田大学、あとは文教大学にもあったかな。それでも、日本で最初にできた人間科学部に行きたいと思って、大阪大学に来ました。

―その中で心理学をやろうと思われたきっかけはなんですか?

哲学とか現代思想とか、そういう本をいっぱい読んだのだけど、結局みんな好き勝手言ってるというか、いろんな考え方があります。昔の人の本もたくさんあるしね。そういった本を読むことはできるけれども、きりがないなと思えてきました。じゃあどうしようかと考えたときに、例えば自分で実験してデータを集め、そこから何か新しいことが発見できたらいいなと、思って、心理学に進みました。学部の時は、当時注目されはじめていた脳科学を学ぼうとして、脳波の研究ができる研究室に入ったのだけど、やっぱり心理学の方が自分の関心に近いと言うことで、大学院で研究室を変わりました。

2.心理学の研究について

―今は、どのようなことを研究されているのですか?

専門は実験心理学という分野です。実験という方法を使って、人間の心の仕組みを調べていこう、という学問分野です。だから、テーマは何でもよくて、面白そうだなあと思ったテーマに色々取り組んでいます。

心理学の実験というのは、「行動」、つまり目に見える人間の側面を測るのが主流ですが、私の研究室では、例えば脳波や心電図といった身体の反応にも注目するのが特徴です。ある状況に置かれた人が、どのように行動するのか、そのときの身体の反応はどうなっているのか、さらに本人はどのように感じているのか、といったことを同時に計測することで、人間の心の状態を多角的に知る、というような研究をしています。

―心理学にも色々あると思うのですが、研究されたことはどのように社会に応用されているのですか?

心理学っていうのは心の仕組みの学問です。だから、自分を含めた人の行動や気持ちについて少し、客観的に眺めてみることができるようになる、というのが一番の貢献だと思います。もちろん、見やすい標識を作るとか、みんなが従ってくれる掲示を作るためにはどういう呼びかけにしたらいいかといった、目に見える形の応用もあります。でも、それよりも大切なのは、今言ったように自分の行動を振り返る、あるいは人の行動を理解するための手助けになることじゃないかな。

―テーマは何でも面白いことを見つけるって言われていましたが、その面白いことって身の回りでどうやって見つけていくんですか?

そうですね。自分が面白いと思えばいいんだけど、なかなか一人では狭い考えや見方しかできないですよね。だから、人と話をしながら見つけます。特に学生の興味・関心を聞いて、それを研究テーマとして一緒に育てていくのは楽しいね。今取り組んでいる”かわいい”の心理学の研究もそうやって始まりました。誰もやってない、難しそう、学問っぽくないといったテーマに、ていねいに取り組み、新しいことが少しずつ分かっていくとワクワクしますよ。

3.これからの展望と学生へのメッセージ

―これからどのような研究を進めていきたいですか?

研究って終わりがないし、思ってるよりもゆっくりとしか進みません。だから、なんとか時間をやりくりして、少しずつでも足跡(論文)を残していくってことかな。そうすれば関心を持った誰かが見つけて、発展させてくれるかもしれないからね。

どんなに時代が変わっても、人間は人間だからね。時代が変わっても人間の生物学的な部分ってそんなに大きく変わるわけじゃない。だから、心理学でもその視点を持って研究していくことがすごく大切だと思うんだよね。

―大阪大学の学生に求めること、伝えたいことはありますか?

面白いと思うことを見つけられたらいいね、それから学生時代はやっぱり勉強したほうがいいよ、ってことかな。遊ぶのももちろん良いんだけど、何をするにも今が一番柔軟だし、失敗してもそんなに怒られない。だから、面倒がらずにいろんなことを学んでみたらいいですよ。それと、学ぶときは、自分にため込むだけでなく、どうやったら人にうまく伝えられるか、面白いと思ってもらえるか、を考えながら学ぶようにする、そうすれば、成長も速くなるし、社会人として働くときの基礎体力を身につけられるからね。

インタビューを終えて

先生の研究内容から心理学の専門的な内容、これからの学生生活のことまで、様々な話をお伺いすることができました。特に心理学に関しては、私の持っていたイメージと異なる点もあり、とても興味深かったです。これからの大学生活を有意義に過ごすことができるよう、いろいろなことに興味を持ち、真剣に勉強に取り組んでいきたいと思います。

最後になりましたが、このたびインタビューを快く引き受けてくださった入戸野宏先生、ありがとうございました。

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