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佐藤浩章先生 阪大新入生にウェルカムチャンネルを贈る先生の想い①


こんにちは!大阪大学 人間科学部 人間科学科1年の中村桃子です。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、大阪大学では予定より約2週間遅い4月20日から新入生の授業が始まりました。また、春夏学期の授業は原則オンラインで行うことが決まっています。
こうした中、阪大では4月9日から「阪大ウェルカムチャンネル」が配信されてきました。

※阪大ウェルカムチャンネルとは?
大阪大学の新入生を対象にした、オンライン動画コンテンツ(一部は学外にも公開)。「阪大ウェルカムチャンネル制作チーム」が作成。模擬授業、スタディ・スキルズ講座、「OU RADIO」、筋トレ、うがい手洗いなど約50個のコンテンツがある。以下、「ウェルカムチャンネル」と表記します。


本連載では3回にわたり、ウェルカムチャンネルの企画・作成に携わってきた3人の先生に、ウェルカムチャンネルにまつわるエピソードやオンライン授業への対応についてお話をうかがいます。

初回は、ウェルカムチャンネル制作チームの座長、佐藤浩章先生(大阪大学 全学教育推進機構 教育学習支援部・准教授)にお話をうかがいました。

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できることを全部やってきた

――オンライン授業実施が決定してから今までに、どのようなお仕事をしてきましたか?
まず、自分の授業をオンラインで行いつつ、Zoomなどを使って通常の対面授業をそのままオンライン上で行う以外にどんな可能性があるのか探るために、実験的なことをしています。
そこでうまくいった取り組みをほかの先生にも紹介しています。
さらに僕自身は教育学を専門にしていて、外国や他大学の先生たちとのネットワークがあります。
そこで得られた情報を困っている人に届け、助言してきました。
つまり、自分の授業レベルから全学的なところまで、できること・気がついたことを全部やってきました。ウェルカムチャンネルもその一環で、私は座長という役割をしています。

ウェルカムチャンネル誕生の裏側

――ウェルカムチャンネルの企画は、いつ始まったのですか?
企画を最初に思いついたのは3月中頃で、3月後半頃に提案書を書いたと思います。

――企画を考えた経緯を教えてください。
まず、コロナが広がりつつある中で、阪大は2つの方針を立てていました。ひとつ目は、学生や教職員の健康・安全を守ることです。もうひとつは、とにかく学生の学びを止めないこと。
その後授業をオンラインに切り替えて行うことが決まったのですが、1年生は4月初旬に入学したにもかかわらず、4/19まで全く授業が展開されないことになりました。つまり、学びがストップしてしまう可能性がある。これについて特に危機感を持って、できることは何かと考えてウェルカムチャンネルをやることになりました。

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――ウェルカムチャンネルが始まるまでに、具体的にどのような準備をしましたか?
最初に考えたのは、ウェルカムチャンネルを通してどうなってほしいのかということで、まずは学生の学習を保証すること。
さらに大学のコミュニティで学生がつながっていること、そして教職員が1年生をウェルカムする気持ちを形にして伝えること。
この枠組みを最初に作り、それを形にするにはどういう番組を作るか、ということを考えました。
その後チーミングをして、6名の先生と学生スタッフ数名の計13人のスタッフチームができました。私が全部決めるとかではなく、どんどんメンバーに意見を出してもらっています。
さらに、関係者に納得してもらえるように絵や組織図も書きましたし、具体的にできあがるものをイメージしてもらうために番組表も作りました。

――ウェルカムチャンネル実施を決めた際、周囲の反応はどうでしたか?
好意的な声が非常に多かったです。教育担当の理事や全学教育推進機構の機構長も「ぜひやりましょう」とOKを出してくれました。
今回は「学生のことを第一優先にする」ということでみんながまとまれたのだと思います。
動画の配信が始まってからも非常に評判はよくて、ほかの大学の先生や学内の管理職、職員さんも「よかったよ」と声をかけてくれました。

「○○研究」から生まれたスタディ・スキルズ動画

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――ウェルカムチャンネルには、プレゼン技法やアカデミック・ライティング/リーディングなどをレクチャーする「完璧マスター!スタディ・スキルズ講座」の動画があります。佐藤先生も出演しておられますが、スタディ・スキルについての動画を作ったのはなぜですか?
僕の専門は大学教育学で、その中に中退研究というのがあります。
そこで言われていたのが、「友達がいなくて大学での勉強の仕方も分からない状態になり、人間関係とスタディ・スキルの2つがそろって欠如してしまうと、中退の可能性が高くなる」ということです。
これを踏まえ、人間関係とスタディ・スキルに関することをウェルカムチャンネルでできればなと思ったんです。

――そんなに深い理由があったんですね。
結果的に人間関係に関するコンテンツはボツになりましたが、本来は人間関係とスタディ・スキルの2つをやろうとしていました。
大学1年生の前期はすごく大事な時期で、ウェルカムチャンネルのような取り組みは、実は以前からやりたかったことなんです。
だから、急に思いついたというよりは、前からやりたいと考えていたことを「今ならできる」ということでやろうとしたのかなと思います。

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オンライン化で得た「変化」

――授業のオンライン化やウェルカムチャンネルなどを行ってきた中で、発見はありましたか?
授業をオンラインで行うことで教育上の効果が想像以上にあったなと思っているんですよね。
やっぱり対面の時よりも、学生さんとの距離が明らかに近い感じがします。
結果的に、チャット欄でどんどん学生から質問が出てくる。僕だけじゃなくて多くの先生が言っています。
これは大大大発見で、教室での講義が必要なのかどうか、僕自身すごく考えました。

――確かにオンラインでは先生と対等な感じがして、質問しやすいです。
あとは学会や会議も、通常のものに関してはオンラインに切り替えていけると気づきました。
仕事の仕方や学生との接し方という意味では自分の中で大きな変化がもたらされましたし、残りの人生で何に時間とエネルギーを費やすかという考えもかなり変わりました。

学生にメッセージ

――最後に、学生へのメッセージをお願いします。
オンライン授業になって、先生方は一生懸命授業を作っているし、学生さんも時間をしっかり割いて勉強しています。こんな状況は今までになくて、みなさんはそんな新しい大学で学ぶ第一期生になるわけです。これは本当にラッキーなことです。
望んでこの状況になったわけではないけれど、そんなことも感じ取ってほしいですね。

あとは、この時期に思ったこと、感じたことをぜひ言語化しておいてほしいです。それがみなさんの人生のコアな部分になると思います。それをいずれ他の人たちと対面できるときに共有してもらい、社会のイノベーションに繋げてほしいです。
みなさんに期待しています。

――ありがとうございました。


インタビューを終えて

ウェルカムチャンネルの背景には、「学生の学びを止めない」という思いや中退研究の知見などがあるということで、想像以上に奥深くて驚きました。
また、この時期に感じていることや気づいたことの言語化は、今すぐに実践していきたいです。

佐藤先生、本当にありがとうございました。

次回は、大山牧子先生(大阪大学 全学教育推進機構 教育学習支援部・助教)にお話をうかがいます(7/7 公開予定)。


ウェルカムチャンネル視聴はこちらから!
学内の方(マイハンダイ)https://my.osaka-u.ac.jp/
学外の方 https://www.youtube.com/playlist?list=PLelKrG8vIGNoSbdIRBC84_a_gFsqp-4WG

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