陽が本に当たる図書館はだれのもの? 最近話題になったツイートを見てから読んだ本たちの感想

最近もTwitterで話題になってましたし、定期的に話題にされる、陽が当たる図書館は開放的でいいよね!→本が劣化するからよくない!こんなのを称賛するな!という流れ。
これの論点は

・こういった図書館にすること利用者が増えるんだから、公共サービスを一部の人しか使えない暗い場所にするな。本の劣化は些細な問題(劣化ペースの問題であって貸し借りをやってる以上はいずれ劣化する)
・利用者どうこうよりも陽に当たると本の劣化がひどすぎる!利用者より本のが大事!

ということになっていつまでたっても議論が平行線のままになっていくわけで…..。自分は劣化ペースがあまりにひどいからこれ以上この手のデザインの図書館を作ってほしくないとは思ってます。
あまり人のツイートを紹介するのはあれなので自分のツイートを。


10年でこれならその先どうなるかわかったものじゃないよ…..


とまぁここまでが前書きで公共図書館とはどうあるべきか?という事を考えたいために読んだ本2冊の紹介。1冊目

永田治樹『公共図書館を育てる』
これは公共図書館の利用者をどうやって増やすかを図書館関係者の立場からレポートしていった本で利用者減の原因まとめと日本や海外のいろんな図書館がやっている施策を紹介している。陽が本に当たって劣化する!という指摘は論点として書いてないけども図書館運営について考えるには最適な本だと思う。以下は感想というか中に書いてある内容の紹介みたいなもの。
利用者減についてはこんな感じできちんと論点をまとめてくれてる。

海外図書館についても日本ではやっていない施策を行っている図書館があって、日本ではいろいろ難しそうだけど面白そう。デンマークでは図書館職員がいなくとも本を借りられる制度を作っているし、フィンランドでは公共スペースという視点を広げてロック演奏ステージやミシン裁縫できる場所まで図書館に作っている。ここらへんはこの本じゃなくても本の著者が関わっているサイトで紹介しているのでこちらを読むとわかりやすい

ただし本が陽に当たって劣化するのでは?という問題はここらへんの図書館を真似した結果出てきた問題なのでは?とも思ってくる。北欧の日照条件と日本の日照条件で違うのか、そもそも向こうでは問題にされてないのか、問題になってるけどわざわざ海を飛び越えてそんな話題はやってこないのかここらへんはよくわからなかった。。。


日本の図書館でも、いろいろと利用者の利便性のためにやっていて、本を借りるための検索が利用者にとって使いやすくしていたりします。
著書では鯖江市と恩納村の図書館を紹介していて、ここでは周辺地域まで横断して検索できる。ふだん図書館蔵書の品揃えにはほとんど不満がないさいたま周辺在住だと(さいたま市図書館は合併を繰り返した結果図書所蔵数が膨大になった)、こういうのがあるのは新鮮だった。


幕別町図書館の取り組みは北海道にある図書館なのに本は東京の業者から買っていたので地元の図書館から買おうという施策、ところがこれには問題があって図書館の本のフィルム費用を誰が負担がするのか?一冊あたりフィルム費用が200円かかるから地元本屋が600円の文庫本(利益150円)なんかを図書館に売るだけで赤字になってしまう。じゃあどうするのかというと地元の障害者福祉と合わせてフィルム費用の負担分を削減してしまおうという感じ。地元の人たちにいろいろと関係してもらうことで交流も生まれる。TSUTAYAみたいな大手に任せる施策とは真逆でどちらが正しいかとは言い難いとも思う。


岩手県の紫波図書館はなんと飲食物持ち込みOK、音楽まで流れているというから日本の図書館の常識に真っ向から挑戦している。しかし、著書では飲酒までOKと言ってるけどもHPではいいともダメとも書いてない。書いてないということは飲酒してもいいのかなぁと思うけど実際はどうなんでしょうね。

この図書館はオガールという商業施設の中にあって、それは自分の利用しているさいたま市立図書館や川口市立図書館もそうなんだけど(どちらも駅前で21時までやっているので利用しやすい)、ここは宿泊施設まである。観光で図書館に行くということはなかなかやりにくいけども宿泊施設まで揃ってると人も来やすいのかも

とまぁいろいろな図書館の施策を紹介していって利用者を呼び寄せるために、地域を発展させるために日本のいろんなところでがんばってるんだなぁと思える本。利用者のためなら思い切ったこともありなのかもと思えてくる。あくまで施策提言メインの本で日本の素敵な図書館紹介の本ではないので注意。

2冊目

樋渡啓祐『沸騰!図書館 100万人が訪れた驚きのハコモノ』
もう著者名だけ見ても忘れてる人も多いかもしれない。武雄市ツタヤ図書館を誘致した市長の本です。当時の奮闘ぶりを振り返りつつ、TSUTAYA図書館以前の武雄市図書館の問題をきちんと書いている。結局は「利用者が少ないサービスを増やす施策の何がダメなんだ?」「利用者とは本を借りに来る人のことだけではない」という事を書いている。光に当たる本の劣化も借りない利用者にとっては問題ないという感じのスタンス。
自分はこれにずっと反対の立場(そもそもTSUTAYAに図書館貸出情報を渡したくないというだけ、TRCはいいのかという話になるけど…信用度の問題っだよね)で今もそれは変わらないけども所詮遠い場所の話なので経緯はよく知らなかった。でも今になって本を読んでみるとなかなか世間に広く受けいられるような反対意見をいけないのも確か。TSUTAYA図書館の反対賛成に関わらず公共図書館とは誰のためのものなのか?ということを考えることができる本なので今になって読んでもいいと思う。


さて、2つの本を読んで最初の話題に戻ります。利用者が閲覧できる状態にした上で本の劣化を防ぎたいなら国会図書館のようにすべて地下に所蔵しかないだろうけども、現実的に自治体の図書館ではそれは無理だし本はいずれ劣化するものだしある程度妥協は必要なのかもしれない。ただしそれは本がきちんと利用できることが前提で日光に当てた本たちがこのさきどうなるかはもう少し経たないとわからない。。。現状は背表紙焼けだけだと思うけどこの先どうなるかは??。というかカーテンかブラインドかけるだけでもマシになるのでは?なんかよくわからないけどそんなの考えずに直射日光当たるデザインの図書館ばっかりだよね。
まぁそんなことを気にしない利用者たちのが多いのなら、結局本が劣化する!という自分たちが少数派で聞くに値しない意見なのかもしれない。図書館は自分のものではなくて、みんなが使うもので多数派の意見を尊重すべきと言われればそれまでだし。。。誰かこれを論点にして選挙戦やってくれないかなぁ。

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