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設計図を見せて欲しいんだ


1年目の苦悩

私が漆器づくりを始めたばかりの頃の話。
「金虫喰い塗(きんむしくいぬり)」という変わり塗をやっているのですが、その繊細な文様を研ぎ出しで表現するのにとても苦労しました。

というより、できませんでした。

完成品は嫌というほど目にしていますが、それと同じ感じにはどうしてもならない。
同じように研ぎ出し作業をしているつもりなのに、なんか違う!

そもそも全く同じ模様になることはあり得ないのですが、それを差し引いても許せない出来。

で、実際にその出来で納品しようものなら、即返品される始末。

研ぎ工程で何か「コツ」があるのだと思いましたが、それを父から「言葉」では教わることはありませんでした。

結論からいうと、私は何度も何度も繰り返して体で覚えました。

完成品を見せられても…

「これと同じ感じで作って」
と完成品を見せられても初心者の私にはどうやって作っていいのかわかりませんでした。

「完成図」じゃなくて「設計図」を見せてくれよ、と思いました。

普通プログラムを作るときは、まず「基本設計書」とか「詳細設計書」とか書くでしょうに。
と思ってしまうのは、元システムエンジニアの甘えでしょうか?(笑)。

まあ、そんなもの(=設計書)がないことは百も承知でしたが。

こういうのは職人の腕というか勘で培われた技術であり、なかなかドキュメントに残すのは難しいことでしょう。
(作業手順書のようなものはあってもいいと思いますが)

かくいう私も、他人にコツを教えてよと言われても、多分教えられませんね…。

敢えてポイントを伝えるなら

最終的に文様を決めるのは、「研ぎ出し」工程です。
ですが、その前の工程「虫立て」「虫殺し」が大事で、そこがきれいにできているとその後の研ぎ出しが楽になります。

籾殻を蒔く工程を「虫立て」と呼んでいますが、この籾殻が作る「クレーター」の出来が、間隔・高さの均整が取れていることで、研ぎ工程は表面を平らに仕上げようとするだけで自然とバランスの取れた文様になっていきます。(それでも微調整は必要です。)

「クレーター」の高さを揃えるには塗る黒漆の厚みも重要。

かつて研ぎ出しで苦労していたのも、その前工程が悪かったためではなかったか?と思うぐらい。

結局、全工程が大事ということですね。
気を抜いていい工程なんてない。
それにはやっぱり繰り返し繰り返し場数を踏むしかない、ということでしょうか?


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