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「大嫌い」を引き出した天才シンガーソングライター。

 あいみょんの歌詞の独特の世界観や表現、それでいて目に浮かぶような巧みな言葉の使い方、そんな彼女らしさを存分に見せつけてから放たれるありきたりの言葉は、独創的な言葉へと進化する。
 
 青春と青春と青春の好きな歌詞はと聞かれ、もちろん全ての言い回しが魅力的で、甘酸っぱくて、懐かしさや真新しさを凝縮したような歌詞に迷ったものの、やはり最後のシンプルな一文しかないなと感じた。

 そしてそんなアーティストが好きなのだろう。

吉田拓郎の「言葉」
斉藤和義の「歌うたいのバラッド」
高橋優の「非凡の花束」
阿部真央の「愛してる」

 最後に「愛してる」と歌う曲。言葉は平等に使う事が出来る。しかし、使う人によって、それは違うものなのだと強く感じる。

 もし、あいみょんがこの言葉に自身を投影したらどんな曲が出来上がるのか楽しみでしかない。まだ、ウエディングソングは作っていない自覚のある彼女の曲を聴くまでは、死ねない私なのだ。

 そんなあいみょんが定かではないが、17歳くらいに書き上げたという「ほろ酔い」
 この歌に出てくる男が本当に嫌いなのだ。良くもまぁここまで気に食わない男を想像できたなと。
 こういう…若いうちは憎めないけど歳をとるとともに本当にダメなクソ男だな、被害者面してんな、無責任だなって思われている救いようのない男。
 
 ようするに、浮気ばっかしてた男がフラれて、未練タラタラで結婚知って、なおさらショック受けて
 バーで酒飲んで、オレは酒と気が合うんだと酒を巻き込んで酒のせいにもしてるクソ男。
 クソ男がここまで辿り着くのには結構な歳月がかかる。
長年このクソ男と付き合ってた女性がスッといなくなったんだろう。惚れてるから大丈夫とか。あいつは平気。なんて、見下していたかもしれない。
 今でもそれなりの女は口説けたりするのだろう。でも、あいつ以上に良い女はいないと。誰も自分と真剣になってくれる人は居ないわけだ。

 洒落たカクテルを飲むのも、だせぇ。

 前髪かきあげんのも、だせぇ。

 こんなやつがバーの隣で飲んでたら、ナッツぶつけて帰ってしまいそうだ。
 
 そしてそんな男とは縁を切ってきた。基本、反省はしないのだ。この期に及んで酒に溺れ、変わろうとしないのだ。いつまで経っても不器用なまでに自分が可哀想だと思っていて、仕事そっちのけで、女性に好かれるのにだけ一生懸命だったりする。仕事じゃぁ責任もとりたがらないような無責任な人だ。

 心を入れ替えて、どこかのショッピングモールで、奥さんと子供に家族サービスしている姿を見てみたいものだ。


 そんな事を本気で思わせる情景を的確に表現している天才が作った名作。
 そして、なぜかあいみょんが切に歌い上げると、「こいつはちゃんと反省してくれそうだな」と思う不思議。
 

 彼女の歌声はそういう力を持っている。

大嫌いな登場人物。

愛おしい曲。


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