春を集める
目の前をシューっと低空飛行する鳥がいた。
ツバメだ。
ツバメが飛んでいるのを久しぶりに見た。
東京23区には、巣作りをできる場所がなく、ツバメはほとんどいないらしい。
私が住んでいたさいたま市浦和区でもツバメを見かけることはなかった。
だから久しぶりのツバメだった。
白鳥がロシアに帰り、ツバメがフィリピンからやってくる。
福島の春だ。
暖かい空に小鳥がさえずり、野花を蝶が飛び交う。
ツクシが伸び、地べたをよく見ると小さな虫が生きている。
地元でよく見かけた野ウサギは、もう白い毛皮を脱いでるだろうか。
心待ちにしていた桜が、あちこちで綻んでいる。
こんなにゆっくりと春を楽しめるのはいつぶりだろう。
賑やかな春の空気を喜べるのは。
今年の春は、この世界に生まれ落ちる春をひとつひとつ集めるように、慈しむように過ごしている。
季節を楽しむことを、もう一度教えてもらったみたい。
この先どんな日々を過ごすかは今はわからないけど、この気持ちを大切に生きていきたいと福島の自然に思う。
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