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人生はじめての相席居酒屋に行った話

五年前、某日。
高校の友人から「空いてる夜ある?池袋の相席居酒屋行こうよ!」とお誘いを受け、人生初の相席居酒屋に行ってきました。
最初はなんだか危ないんじゃないかと思い迷ったのですが、なんせあまりにも出会いが無い。
以前秋葉原の相席居酒屋に行ったオタクの人のブログを読んだことがあるので、池袋にも話の合うオタクの人がいるかもしれないな…と軽い気持ちで行くことに。

結論から言うとオタクの人はいました。


「仕事の愚痴聞いてもらおうかなー」と言っていたら「やめたほうがいいよ」と友人からの忠告。
どうやら初対面で個人情報を開けっぴろげにするのは少しまずいらしいので、就活どぉしよ〜系大学三年生という設定に。労働で既に心身摩滅しているのでちょっと無理がある。
お店に着くとレジの人からお店のシステムを説明される。相席料金は30分料金なので同じ組と30分は相席してください。席をチェンジしたい時は店員に伝えて下さい、伝えにくい時は隠語でお願いします(うろ覚え)という旨の説明を受けてから飲み物を一品注文し、席に案内されます。
この席が偶々なのかお店に来る人みんながそうなのかは分からないけど、隣の席の人も向かいの席の人も滅茶苦茶たばこを吸っていて臭いが凄い。
ビジュアルがオタクっぽい人は男女ともに殆ど見当たらず、皆イケイケの格好でタバコを吸っている。予想外の場所に慄く。

友人「誰も来ないね」
私「このまま来なかったら料金こっちが払うのかな…」
友人「うちらブス過ぎて避けられてるんじゃないの」

友人とポテトを食べながら30分程駄弁って待つ。今思えばこの時間が一番楽しかった。
店の壁には『顔よりも大切なのは一緒に笑った時間』『出逢わなければ運命は始まらない』等の心強い名言が書いてある貼り紙が貼ってあった。
30分後。向かいの席の女性グループが席移動をした為、そこの席へ移動することに。
そしてこの席に1時間半程いることになり、トイレでゲロゲロすることになる…。

席に着いたら初めに乾杯をして、軽く自己紹介をする決まりらしい。
相手は人事採用系の仕事をしてる23歳、教員免許を持ってる29歳と紹介が行われる。
人事採用の人は体育会系ながっしりした体型で茶髪、教員免許の人は整えられた髭を生やしていてダンディー。ごつい腕時計をしてた。
かなり親しげで知り合いらしいが同じ職場ではないらしく、出身地も違うらしい。苗字しか知らないようで、相手も色々と個人情報を隠している様子。
そして二人とも友人のおっぱいをめちゃくちゃガン見してる。友人はEカップだから仕方ない。私もよく見るので…。
 
こちら側も自己紹介を終えますが、仕事場以外で異性と話したことなんて高校以来皆無。自己紹介後、貝のように押し黙ってしまう。
友人は異性と喋り慣れているので軽い調子で「どのくらい飲んでるんですか?」「よく来るんですか?」と質問する。すごい。

相手も異性との喋りはお手の物らしく「服かわいいねー!」「双子コーデじゃんって向こうの席にいるときから思ってたわ」等話しやすい話題を振ってくれる。
自分はもう人見知りを極めているので「いやーそうですか?」「いやーそうなんですよ」しか返せない。申し訳なさしかない。なんでここに来たんだ。
その後も大学どんなことしてるの?バイトは?等々無難な話が続く。
自分が、相槌を打ちながらひたすらポテトを貪りカシスオレンジを飲む物体となりかけていた頃。

店員さんが「今こういったメニューがありまして」とロシアンテキーラのようなゲームを勧めてくる。ショットグラスが数杯並べられ、その中のひとつに"当たり"のテキーラが入っているゲームらしい。
「よっしゃやりますか!」人事採用の人が気前よく頼んでくれた。「えっ大丈夫なの?」小声で隣の友人に言われる。既にかなり酒が回ってるので「大丈夫じゃない?」と適当に返す。
テキーラって名前は聞いたことあるけどよく分からないな…コップ小さいし飲めるさ…!と思いながら、やってきたショットグラスを眺めていたあの頃。

人事採用の人の提案でスマホのアプリで爆弾ゲームをやったり、男女ペアになって山手線ゲームをしたり、紙に果物を書いて当てあったりと合コンっぽいゲームをした結果、テキーラが当たってしまう。
甘いものなのかと思って一気に飲んだ瞬間、胃が燃えるように熱くなる。ヤバい。人生初テキーラはとにかくヤバかった。
この後あまり記憶が無いんですけど(テキーラの回りが尋常じゃない早さだから)なぜかもう一回やることになってまた自分に当たる。不運!胃がムカムカしてくる。
これ本気でやばい…と思いトイレに立つ。着いてくる友人。着いてくる教員免許の人。そのまま女子トイレまで入ってくる教員免許の人。なんで!?
早く吐かせてくれ!!と込み上げるものを抑えながら外へ追いやり鍵閉め即リバース。速い速い。新幹線より光より速い。嘔吐物ってこんな勢いよく出るんだな…テキーラ最強だな…と二、三度オエオエしてトイレの水面を見ながら思いました。

リバースすれば大分すっきりしたので席に戻ると、なぜか人事採用の人の初自慰は小学生の頃でDJオズマだったという話題になっていた。なんで?
教員免許の人は遊戯王のブラックマジシャンガールだったらしい。わ、分かる〜〜。
友人は明らかにドン引きしてるけど、私は社会不適合者なため下ネタくらいしか分かる話題がないのでウッキウキで聞いていると…。
人事採用の人「いや〜ずっとここにいるのもアレだしさ、焼き鳥食いに行きたいね」
教員免許の人「近くにいい店あるかな」
なんだか段々店移動の話に。えっマジですか?再びお手洗いへ立ち友人と臨時会議。

友人「どうする?私いいと思ってるんだけど」
私「えっ店移動はちょっと…おっかないし…」
友人「じゃあそろそろ席移動しようか」


とのことで纏まり、席移動してお二方とはお別れすることに。ありがとう友人。ありがとうお二方。ラインは交換しませんでした。
めちゃくちゃ盛り上げてくれて良い人でした。友人のおっぱいをガン見していたこと忘れません。


次の席では打って変わって素朴な人とメガネの人の二人組。職場の同期で、仕事帰りに立ち寄ったそうです。
こういう人も来るんだな…と思ったんですけどこっちが普通の客層なのかもしれない。周りの人も普通のサラリーマンっぽい人が多かったし。

再び乾杯して軽く自己紹介を済ます。素朴な人は岩手から上京してきたらしくとても爽やか。
メガネの人は関西出身、元アメフト部だったらしいが線は細めで関西弁は抜けてない。さっきの人達とは雰囲気が違ってギラギラ感がなく、のんびりとしていて話しやすい。友人のおっぱいを頻繁に見ている。

もしかしたらオタクの人なのでは…と謎の直感が閃き、何か探りを入れられないものかと伺うも、出身地や好きなテレビ等無難な話しか出来ず。
こちら側はテキーラがかなり回っていたため、アルコールはあまり入れず話し続け、30分程してから「二人はまだここにいる予定なん?」「良かったらバーとか行かない?終電とか気になるなら全然大丈夫なんだけど」お誘いがありました。
二組しか経験してないから分からないけど、男性側にとって相席居酒屋はあくまで出会いに漕ぎ付ける役割のみで他店へ誘うのが本当の狙いなのか。

成人向け漫画とAVをあまりにも見過ぎていた私は(ヤバーーッこれホテル連れ込まれてヤられるやつだ!)と再び大焦りし友人にラインで相談するが「それは無いから!この人たちなら大丈夫そうじゃない?」との返事が。
今思うと自意識過剰すぎて恥ずかしかったかもしれない。
男慣れしている頼もしい友人の言葉に確かにギラついてないし素朴だし…と落ち着き、バーにも生まれてこのかた行ったことがなかったので興味本位で了承し、相席居酒屋を後に。
本当に女性側は一銭も支払わない。何かの罠なのではないかと思った。
店を出た後はタクシーでバーへ移動することに。素朴な人が電話で予約してくれることに。なんと申し訳ない。
 
素朴な人「フルーツカクテルが有名な所と熱帯魚が見れる所どっちがいい?それとも夜景が綺麗な方がいいとかある?」
私「エッアッ…え…どうすれば…」
友人「どっちでもいいですよ!お勧めのところでお願いします」

 
友人ほんとすごい。
結局熱帯魚が泳いでるバーへ行くことに。タクシー代も払ってもらえて申し訳なさが増す。
熱帯魚が泳いでるバーはトイレもめちゃくちゃに豪華で荘厳な作りのドアを開けて順番待ちをしつつ「あの人たち良い人だね」と話をしてると店員さんが来て「大丈夫ですか!?ここ男性用トイレですよ!」とのお言葉。
酔いすぎて男女の区別が付かなくなっていたのだ。慌てて女子トイレへ駆け込み、終電一本前くらいで帰ろうと決める。
トイレから戻り、メニューを見ながらカクテルって高いんだなあと思いながら度数の弱いオレンジのカクテルを頼む。お相手も梅酒とダイキュリーアイスを頼みまたお喋り。
大学の話(嘘八百)やバイトの話(嘘八百)を友人は完璧に、自分はボロが出つつ話しているとカクテルが来る。カクテルは綺麗でおいしくて、ミカンが芸術的な皮の切り方で刺さっていた。
 
メガネの人「自分カラオケとか好きでよく行くで」
友人「へー、私たちもよく行くよね!」
自分「アッうん」
友人「でも私たちのカラオケ、あの、ちょっと濃い系だから着いてこれないかも笑」


この話にメガネの人、食いつき「どういう方向の濃い?あっち?それとも漫画とかアニメ系?」
この反応はもしや…と思っていたら友人が「アニメ系でーす!」とカミングアウトし無事オタクバレ。メガネの人「うわー俺もアニメとかめっちゃ好きー!」とまさかのオタバレ。
素朴な人以外ここにいる人全員がオタクだったのだ。

メガネの人は青年系中心に広く何でも見るタイプのアニオタ、友人は乙女系中心に広く何でも見るタイプのアニオタなので一気に意気投合し話が尋常じゃないほど弾み始める。
自分は美少女系しか分からないキモオタクなので名前は知ってるけど見たことないアニメのタイトルを相槌打ちながら聞く。
素朴な人はここでトイレへ行き、ラブライブの話題になる。ようやく話に加わり「推しキャラ誰なんですか?」と聞くと「凛ちゃんやわー」との答えが。
「私希ちゃん好きなんですよー」と返すとメガネの人は
「のんたんはエセ関西弁が好きになれない、関西人としてはな〜」となんと突然の否定。

「いや東條希さんは両親が転勤族で地方を転々としてたから方言が〜」とキモオタク節丸出しになりかけましたが「そうなんですね」と謎の相槌を打つ。高まっていた熱がスッと冷めていくのを感じながら、カクテルをガブガブ飲む。
その後も結局推しを言い出せないまま飲みは終了の方向へ行き。バーを出る前にライン交換しました。ノルマ達成。
駅まで歩く道でメガネの人と友人はまだアニメの話で盛り上がっていたので、自分と素朴な人が必然的に話をすることになる。
しかし、いかんせん話題提供力が皆無なので素朴な人が必死に話を振ってくれて申し訳なさに殺されそうになった。駅までの道は異常に長かった。

別れて電車に乗り、すぐに『今日はありがとう!楽しかった!また飲もう』というラインが双方に来て、もう相席居酒屋はいいや…と思っていた次の瞬間。
「いやーまた行こうね!次12月辺りかな〜」と、友人がこの前合コンで知り合ったという歳下の人にラインを打ちながらキラッキラした目で言っていた。
もう半年は行かなくていいと思ったけど、また行くことになるのかもしれない。友人のコミュ力とEカップがめっちゃ強いことを再認識した一日だった。
 
「よく分かんないけどなんとかなるでしょ〜」的な生半可な覚悟で行った人間はだいぶ打ちのめされましたが、友人みたいに本気で遊ぶぞ!見つけるぞ!って決意の強い人には相席居酒屋はお勧めだと思います。
携帯机に出しておけば確実にライン交換はできるので…。
あとアルコールに強いに越したことはないと思います。テキーラは最強でした。相席居酒屋で初めて飲むものではない。

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