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ミスドの袋に恋をして

中学生の頃に、私は念願の自分の部屋をもらった。弟と一緒じゃない、物理的に一人だけの部屋だ。自分の好きな物だらけの部屋にしてやろうと思っていた。

そんな時、ものすごくかわいい袋を見た。子犬と男の子が描かれた袋だったと思う。繊細なタッチなのに、今にも動き出しそうな子どもの絵は、私の心をわしづかみにした。後に、それがペーター佐藤というイラストレーターの人が描いたものだと知った。

私は、彼の絵にものすごくハマり、とりあえずミスドだと言わんばかりに買いあさることにした……かったんだが。いかんせん、当時、中学生の私はミスドを買うお金はお小遣い。そんなに金額はもらっていない。それにミスド以外にも、他に欲しい物がある。じゃあ、あきらめるか。

そんなふうに、あきらめの良いタイプでもなく、私はない知恵を必死でしぼった。結局、父や母にねだることにしたのだ。テナントの入っているような大きなショッピングセンターなんかに行くと、「なんかお茶でもしたいねー」という母に「ミスド行こうよ」と提案してみたり、甘い物が好きな父に「お土産はミスドがいいなあ」と言ってみたりと、涙ぐましい努力が続いた。

そのため、私の部屋には、ミスドの袋や箱が集まったのだ。たくさんではなかった。なぜなら、店で食べると袋や箱がもらえないから(そりゃそうだ)家族に袋や箱を捨てられたこともあった。だから、私は袋や箱確保に必死になったものだ。

でも、かわいい箱を手に取った時は本当にうれしくて、高揚感もあって、私を幸せにしてくれる。ドーナツも美味しいし、箱もかわいいなんて、すごいなあって、これみよがしに書いておく。いや、でもドーナツも好きです。

そんなこんなで私は、今、結婚をして夫とミスドでドーナツを買うことがある。私は中学の頃よりも、花より団子になってしまって、ドーナツのほうに目がいくばかりになった。

だけど、今でもミスドを持ち帰りにして、かわいい袋や箱に出会えると、中学の頃を思い出す。あんなに必死で、ペーター佐藤パッケージの袋や箱を追いかけたこと。懐かしく、楽しい思い出だ。


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