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恋模様

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恋模様 儚さ
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#忘れられない恋物語

【詩】冬が来る前に

頬が時々ポツンと濡れる 降ってか降らずか小雨空 すぐにこの雫も雪になる 白く染まる季節になる もう消えてしまった足跡の ぬくもりを探さぬように 心の暖め方を思い出す もう失くしてしまったつなぐ手の 愛しさを探さぬように 私の暖め方を思い出す 冬に追い付かれる前に

【詩】こころの音

落ちる髪には音もなく 私だったものが 消えていく 離れる心にも音はなく 二人だったものが 消えていく 響かなくなったことに 気付けないから 気付かない 二人が遠くなった夜 心をもっと 澄ましていたなら あなたから 私が落ちていく

【詩】こころの風景

純粋なそよ風に 全身をまかせ 隅々までが 蒼い透明に 浄化された瞬間 心が到達した場所は 遠い昔 気恥ずかしささえ 無垢と呼べた 憧れだけで 過ぎていった あなたの微笑む 風景でした

【詩】時の波間に

緑溢れて佇む街は 今もやさしく 私に微笑む あの頃のままに 時が立ち止まる 変わらない物が 変わる私を映し出す 切なさも 過ぎた想いの今の姿 懐かしさも 通り過ぎたあなたの香り やっと終れた寂しさも 揺れる光に流れゆく すべては時の波間に またはじまっていく

【詩】扉

閉まる扉の音が 丁寧に冷たく まるであなたの心が 閉じていくよう 舞い込む風に 名残りの色も 見えなくなって 部屋が心が寒くなる 残ったのは 分かり合わなかった幼さと 乗り越えられなかった哀れさの なれの果ての涙跡 もう手遅れの ごめんなさいも 閉まった扉が 遮るばかり

【詩】幼い心

日暮れを早める雨の中 水しぶきを上げながら 急ぎ足の車の音に 思わず避ける足取りが 心を映してぐらついている 積み上げてきたものが 揺らぎ始める不安の中で 揺らぎ出すその脆さに 歩んだ道の儚さを知る 積んでいたのは幼い心の 浅はかな思い込み 積んでいたのは憧れの かりそめの恋心 頬をながれていくものが 雨か涙か嘘か本当か 分からずじまいの 私自身の頼りなさ

【詩】いつかの夏

手をかざす眩しさが そろそろ傘仕舞いを 告げる頃 また会う夏に あなたを思う もう熱くはない でもまだ暖かい そんな絞るような切なさも 幾度の夏が過ぎゆく中で いつか私の花になる 今年の夏は まだ面影を乞うている

【詩】声

ずっと響く雨音が 部屋の中を流れて 空気をそっと濡らしていく 心にも染み入る雨が あるならば かりそめでも 満たされるかな 心を揺さぶるあの声を 今でも思い出せたなら 一人でも 満たされるかな 思い出は いつも静かすぎて

【詩】ひとり

雨音が 雫を連れて舞っている 今日が濡れている しっとりとした霧の中 心だけがカラカラと 泣いても泣いても カラカラと 渇きの音が鳴っている あなたがいなくなって 初めて気づく 一人ぼっちの音

【詩】いたずら

わがままに風が笑っては 髪を乱して過ぎて行く 目には見えない悪戯小僧 風の気まぐれ あなたの気まぐれ 甘い色を灯しては 素知らぬ顔で吹き消して 私の心を揺らすばかり いたずら退治に忙しいのに 心がなぜか賑わって いつしか軽くなっていた 風のような人でした

【詩】吹く風を

風が吹いたから 微かに揺れた空気を吸って そっと動き出す心の時間 少し前を向ける私の時間 ささやかだったり 賑やかだったり 暖かかったり 慎ましかったり 私の中に舞い込むものは あなたの言葉の調べだけ でも もっと欲しいと願うには あなたはもう遠すぎて 思い出したように吹く風を 心焦がして待ちわびる

【詩】また一つ

凛とした風に 少し甘えて 散った花びらの中 一瞬を思う また一つ 季節を背中で見送って 忘れられない後姿を 待っている また一つ 季節を背中で見送って 戻らない時を 待っている

【詩】空に願う

今日の笑顔の青空を 触ってみたくて 手を伸ばす あなたの髪を 撫でたような 満たされた風が 過ぎてゆく どうしていますか 今はただ 一人ではないことを願う そう思えるようになれた春 知らない誰かが あなたの心を照らす日を 今は空に願うだけ

【詩】街路樹

街路樹の花が 風に踊って咲誇り 陽に映えて花盛り 時までも色に染まり 鮮やかに経って行く 心を残すあの頃に 惹かれたままの私では 今を生きる花達は やるせないほど眩しくて 刻まれる時の流れは 切ないほどに早すぎて 途方にくれながら 目を細めて見つめている