マガジンのカバー画像

夕暮れ~夜

40
夕暮れ~夜 思いにふける
運営しているクリエイター

2023年5月の記事一覧

【詩】道しるべ

静けさに 落ちていきそうな帰り道 光が微かに届ける月の声 振り返って空を見る 月は心の隙間を照らす 揺らぐ不安の毎日を 見ないふりして 誤魔化して そんな脆さに そっと染み入る月明り 私であるため 私を見つめる 月の夜の道しるべ

【詩】長い夜

残る暑さを纏う夜 ひとすじの涼風が そっと連れてきた寂しさに 思わず心が馴染みそう 慌てて閉めたのは 部屋の窓か心の窓か 追い付かれては 不安がつぶやくように騒ぎ出す 滲んでいく小さな部屋で でも耳を塞がないで あれもこれも私の心 あれもこれも私の声 聞いてあげるには 夜はいっぱいあるのだから

【詩】帰り道の月

濡れた心の帰り道 並ぶ街灯も曇りがち 続く長さが冷たくて 思わず駆け上がった歩道橋 迎えた月のやさしさに 心に落ちた涙の音が 静かに響いて溶けていく いつも通りの帰り道 瞼に残る月光に 心がそっと願うのは 朝には私に戻れるように 明日は私でいられるように

【詩】待つ夜は

待つ夜は 心に灯るぬくもりが 明るく静寂を照らしては 焦がれる時間を甘くする 待つ夜は 心を埋める安心が やさしく部屋を覆っては 涙も行方をくらませる 待つ夜は 心に届くあなたの声が 強く両手を握っては 沈み行く私を救ってくれる 待つ夜は

【詩】知らないふり

静けさが舞い込んでくる 暗闇が降りてくる 夜がやって来る 溢れる切なさの 始まりの場所 知っているのに見ないふり 夜を長くしているのは 私のせい もうあなたの時間に 私はいない 分かっているのに気づかないふり 夜を暗くしているのは 私のせい さよならという言葉さえ 手離せず 心を泣かせているのは 私のせい