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私 心の内
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#今こんな気分

【詩】絵の中

一面彩る秋色の中 少しひと息つきたくて 道から離れ そっと絵の中に入り込む ここからは あちら側はあわただしくて ゆるりと舞う落ち葉さえ 振り向かれずに 秋を降らす 歩き疲れたら そっとこちらで 休んでみる すぐに見つかってしまうけれど 時は中々待ってはくれないけれど

【詩】紫陽花通り

雨が弾けて滲んだ 紫陽花の 色とりどりの慎ましさ しっとり映える雨空に 濡れて増す美しさに 濡れて増す寂しさが 羨んでは降り続く 傘は一人を思い知る 雨音がすべてを遠ざけて 傘は自分を思い知る 涙声だけ心に響く 紫陽花通りを抜けていく 今日も一人抜けていく

【詩】言い訳

止んだ雨の静けさに 鳥の声が明るく響く 街の動き出す気配が 私を取り残していく 時間を 持て余している時は 心を 持て余している時 それでも 少し重い気持ちも 少し疲れた心も 全て私のものだから 置いていはけないものだから 雨の言い訳ももう終わり

【詩】そんなふうに

初夏の風が 私を通り抜けていく 新緑の香りを残して 心の中を過ぎて行く 両手を上げて 背伸びして 心も一緒にほぐしては ため息をそっと放り出す 私を私のために過ごすこと 簡単そうで難しい 私を私が思うこと 出来そうで難しい 騒がしい日々の中 せめて休日くらいは そんなふうな私でありたい

【詩】スカート

風に彷徨う雨粒が 足元に絡まって スカートの裾を 冷たくする 濡れると 知っていながらも 濡れた心で 過ごす今日を せめて お気に入りで着飾って 心も笑顔で着飾って 一日を立ち続けられたなら きっと明日は今日よりも 私を好きになれそうで

【詩】輪郭

木陰に集う風の中 佇めば涼やに なびく枝葉が 心に風を伝えていく 軽くなっていく息遣い やわらかくなる笑顔 久しぶりに会う私 自分でいることの自然さと そうでないことの不自然さ 騒がしい日々が 私を曖昧にしていく 見失わないように 時々こうして 私の輪郭を取り戻す

【詩】今の私は

ふいに出会った景色が あの頃を映し出す 誘われるままに立ち尽くす 昔色が込み上げて 懐かし色の衝動が 私を覆い染めていく 過ぎた思い出に 焦がれているのか あの頃の私に戻って やり直したいのか 流れ出した涙の意味は どちらの思いなのでしょう

【詩】今日の終わり

終る今日の切なさを 静かに夕日が燃やしている 染まる色は 過ぎ行く時を映し出す あの空のように 精一杯 今日を私は生きただろうか あの陽のように 戻らない時を 今日に刻めただろうか いつか思い出せるほど 今日を大切に出来ただろうか

【詩】雲

青の淡さに包まれて のんびり色の雲一つ 行き先は お天気任せ風任せ 雑踏に浮かんでは 私色も忘れがち 行き先は 何処かにきっとあるはずと 心の風に任せてみよう まだ見えなくても きっと私が教えてくれる

【詩】片隅で

語り掛ける陽射しに 答えるように咲く花は 忘れられた花壇でも 誇らしげに揺れている 忘れられた片隅の 小さな部屋でも 心地よさに囲まれて 私は私を照らしてゆく 何気ない毎日を 私らしい毎日に そっと変えながら

【詩】泣くこと

雨粒がぽつりと葉に落ち 緑を映して流れゆく 涙がぽつりと心に落ちて 私を映して流れゆく 沁み込んだ雨が また緑を萌やすなら 沁み込んだ涙が きっと私を強くする

【詩】時の場所

午後らしい木漏れ日が そっと背中に寄り添って ぬくもりはじめた心が 奥底へとめぐり出す あの日 想いを置いてきた場所は 滔々と時間が降り積もり 思い出がいつしか憧憬に 行くことはできても 戻ることは叶わない 今は心だけが行ける場所 そんなところがあることは きっととてもあたたかい

【詩】寄り道

知らない路地を歩く時 何処かに 不思議を探している 何処かに 懐かしさを探している いつかあの時に 通じる道があるかもしれない 未だに心が寄り道をする 対価は時間 時の流れから 落ちていく

【詩】晴れの休日

萌える緑と 眩しい青と 枝葉の笑い声の間から 空もこちらを向いている 昨日と違って見えるのは 昨日と違った私の心 もっと上手な心なら いつも穏やかに過ごせるものを もっと上手な私なら いつも強くいられるものを 休日の魔法に助けられ ほっと一息ついている そんな晴れた日のこと