マガジンのカバー画像

58
私 心の内
運営しているクリエイター

2023年6月の記事一覧

【詩】坂道

不安げにうつろう足跡は 私の心の揺れの跡 坂道に残るため息が 振り向く私を眺めている 心の通りに歩くには 笑顔だけでは進めない 我慢だけでも進めない それでも続く明日なら 今日までの私を 涙の雨で流して消して 明日は 坂の向こうの空を見上げて

【詩】紫陽花通り

雨が弾けて滲んだ 紫陽花の 色とりどりの慎ましさ しっとり映える雨空に 濡れて増す美しさに 濡れて増す寂しさが 羨んでは降り続く 傘は一人を思い知る 雨音がすべてを遠ざけて 傘は自分を思い知る 涙声だけ心に響く 紫陽花通りを抜けていく 今日も一人抜けていく

【詩】言い訳

止んだ雨の静けさに 鳥の声が明るく響く 街の動き出す気配が 私を取り残していく 時間を 持て余している時は 心を 持て余している時 それでも 少し重い気持ちも 少し疲れた心も 全て私のものだから 置いていはけないものだから 雨の言い訳ももう終わり

【詩】そんなふうに

初夏の風が 私を通り抜けていく 新緑の香りを残して 心の中を過ぎて行く 両手を上げて 背伸びして 心も一緒にほぐしては ため息をそっと放り出す 私を私のために過ごすこと 簡単そうで難しい 私を私が思うこと 出来そうで難しい 騒がしい日々の中 せめて休日くらいは そんなふうな私でありたい

【詩】心の隙間

肌に絡まる湿っぽさ 明日の雨を予感する 昼間の暑さが溜まったまま 風の声も無く 動かぬ空気が 静けさばかり連れてくる 心の声が響いては 心の隙の寂しさを 飲み込み飲み込み 沈め行く 胸が詰まるこんな夜 過ごすごとに強くなる 過ごすごとに弱くなる 私と向き合えない私が 灯りの下でただ一人

【詩】スカート

風に彷徨う雨粒が 足元に絡まって スカートの裾を 冷たくする 濡れると 知っていながらも 濡れた心で 過ごす今日を せめて お気に入りで着飾って 心も笑顔で着飾って 一日を立ち続けられたなら きっと明日は今日よりも 私を好きになれそうで

【詩】輪郭

木陰に集う風の中 佇めば涼やに なびく枝葉が 心に風を伝えていく 軽くなっていく息遣い やわらかくなる笑顔 久しぶりに会う私 自分でいることの自然さと そうでないことの不自然さ 騒がしい日々が 私を曖昧にしていく 見失わないように 時々こうして 私の輪郭を取り戻す

【詩】今の私は

ふいに出会った景色が あの頃を映し出す 誘われるままに立ち尽くす 昔色が込み上げて 懐かし色の衝動が 私を覆い染めていく 過ぎた思い出に 焦がれているのか あの頃の私に戻って やり直したいのか 流れ出した涙の意味は どちらの思いなのでしょう