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秋雨

細い雨が降っている。
秋雨はいつもこうだ。朝の4時、ベランダに出てその音を聞く。家々の屋根に当たる音、アスファルトの道にたまった水たまりに波紋を立てる音、排水溝からはひっきりなしに水が流れている。
こうなることが分かっていたから昨日紫蘇の実を摘んだ。あらかた花が落ち、フレッシュグリーンを残した実をハサミで採り、一本ずつ指でこそぎ落とす。おかげで人差し指と親指には茶色い色が付着した。
ひと晩水につけてアクを抜き、天日干しして乾燥させてから醤油につける。一週間もすれば食べごろになる。
今年の紫蘇は、去年もらった株から落ちた実が春先に勝手に芽を出した。少しずつ間引きして一番大きな株を残した。今年も紫蘇の葉っぱを刻んで素麺の薬味とした。紫蘇をミキサーにかけてバジルソースのようなものも作った。
実をとった紫蘇はもう枯れるのを待つだけになる。早めに抜いてしまおうかとも考えている。今度はその鉢にどんぐりを植えて苗を作ろう。
相変わらず雨は降っているが、さきほどよりは弱くなったみたいだ。外は肌寒い。秋が来て、冬が来る。春ごろにどんぐりの芽が出たらいいな、と思う。
ベランダから眺める雨に濡れた街は静かで誰もいない。ぼくしかいない広い空間に少しだけ優越感を覚えた。

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