見出し画像

MILGRAM コトコ第二審ボイスドラマ文字起こし

コトコ
遅かったね。エス
エス
コトコ…!
コトコ
…何、怖い顔して
エス
なんてことをしてくれたんだ、お前。
コトコ
ああ、そうね。申し訳ない。榧野尊と桃瀬遍に十分な痛みを与えることができなかった。
エス
なっ?!お前…
コトコ
順番に襲っていったんだけど、榧野尊と梶山風汰を守護する椋原一威と連続で妨害に遭って執行することができなかった。 それなりにダメージを負ってしまってね。椎奈真昼を襲撃したところで、桃瀬遍は時間切れ。
エス
アマネも…襲おうとしていたのか。
コトコ
そうよ。あなたに赦されなかったんだから当然でしょ。
エス
子供だぞ。
コトコ
だから何。あの子供に殺された人間がいるからここにいるんでしょ。
エス
…そうだ。
コトコ
子供だからという理由で襲わなかったと思ったの?…失望させてしまったわね。ごめんなさい。それは単純に私の実力不足。
エス
…っ?!
コトコ
相談なんだけど、ムクハラカズイを無力化できない?
それさえできれば、もうちょっとスムーズに…
エス
コトコ!!…話を聞け。お前は間違っている。
コトコ
何が?私はあなたに協力したつもりだけど、あなたの牙として。
エス
誰がそこまでしろと言った。お前を赦したのは、そんなことをさせるつもりでは…!
コトコ
互いにできないことをやる。そういう協力関係でしょ。私はあなたができないことを補ったに過ぎない。
エス
囚人同士で傷つけ合うことの何が「協力」だ。
コトコ
ミルグラムのデザイン自体がそれを想定しているでしょう。囚人同士の攻撃が禁止されていないんだもの。 少なくとも「あなたの上」はこの状況を想定しているわ。
エス
だとしても、お前の行動は必要ない。
コトコ
いい?エス。過ちを犯した人間は、何かを失わなければその罪の重さに気づくことはできない。数々の犯罪者を見てきたけど、痛みなく道を正す人間なんて見たことがない。
エス
もういい。方向性の違いだ。お前との協力はここまでだ。
コトコ
なぜ?
エス
暴力での解決は望んでいない。
コトコ
長時間の拘束は暴力ではないと?
エス
ではないと判断している。
コトコ
ここまでの心理的な虐待を良しとしている監獄で、物理的な攻撃はなしなの?ダブルスタンダードね。
エス
屁理屈だ。さらに言うと、この監獄のルールを決めるのは僕。僕の自由だ。
コトコ
ルールがナンセンスだって言ってるんだけど。
エス
お前は僕に協力すると言ったよな。それがしたいなら、僕の意図を汲んで動け。
コトコ
私はあなたの牙になると言ったの。忘れた?あなたができないことをやる。それがあれ。
エス
いらん。
コトコ
なぜ?
エス
だから…
コトコ
仮にあなたの見知らぬ人殺しが、あなたの見知らぬ正義感に燃える人間に暴力を受けたとして、 あなたは今ほど怒りを感じるの?
エス
…っ…。はミルグラムの話をしている。関係ない話だろ。
コトコ
いいから。…教えて。
エス
…怒らないかもしれないな。
コトコ
そうよね。人を殺した人間が暴力を受けたところで、因果応報だと感じるのでは?
エス
しつこいな、お前。そういう感情はあるかもしれない。だからなんだ。
コトコ
それと私のしたことは何が違うの?
エス
はぁ…?ミルグラムだからだ。僕の監獄内で起きた出来事だからだ。
コトコ
ふ…違うね。それはあなたが囚人に愛着を感じているからにほかならない。
エス
…何を。
コトコ
身に覚えがない?あなたは囚人をまるで友のように、時にはまるで家族のように、護る対象のように…そう見てはいないかしら。
エス
あ…あぁ…
コトコ
呆れるわ。あなた、本当に看守?
エス
…黙れ。
コトコ
身内の罪は軽くなるの?仲良くしていたら罰は緩くなるの?
あとは何、見た目が好みであれば、気に入った性格であれば、付き合いが長ければ罪が軽くなる?
エス
黙れと…言っている…!
コトコ
黙らせて何になる?あなたに教えてあげようと言っているの。 あなたのような意識じゃ、ミルグラムはくだらない看守ごっこにしか
エス
黙れ!(ビンタする音)
コトコ
…暴力、ね。大切な囚人を傷つけられた怒り。ふ…あはははははは!!…ふぅ…こんなものは暴力にすらなっていない。 弱い。あまりに弱すぎる。その華奢な体では 誰も止められない。誰かを護ることもできない。自分の大義を貫くこともできない。あまりに、不完全だ。
エス
不完全…
コトコ
本気で人を止めたいなら喉を潰すんだよ。容赦なく。
エス
僕は…僕は…
コトコ
わかる?だからそれができないあなたには私が必要なんだ。意思を通すための牙が。
エス
…くっ…頭が…
コトコ
…大丈夫?
エス
僕は、看守として…不完全なのだろうか…?…っ…僕は、看守失格…なのか?
コトコ
大丈夫。大丈夫よ、エス。
エス
…コトコ…
コトコ
こっちにおいで。
エス
…や、やめ…
コトコ
大丈夫。
エス
…離れろ…コトコ…
コトコ
わかってる。1人で看守の責任を負う孤独。立場は違えど同じ思いをしたことがあるわ。あなたは優しすぎる。自分の選択で変わっていく監獄に耐えられないんでしょう。仲間が必要よ。汚れ仕事は私がやる。
エス
僕の…優しさ。
コトコ
もう頭は痛くない?大丈夫よ…私に委ねて?2人で正しいミルグラムを作りましょう。
エス
そうか、それもミルグラムの…

(荘厳な鐘の音)

エス
…いや…。離れろ…コトコ…。気安く抱くな。
コトコ
…何?
エス
僕は…間違っていない。
コトコ
エス?
エス
…ぐぅ!(殴る音)
コトコ
何してるの?自分で自分を殴って、気でも触れた?
エス
はぁ…いや、たった今正常になった。
コトコ
…はぁ?
エス
お前の言う通りにはしない。
コトコ
ふぅん。
エス
僕は僕なりに、僕の思い描く罪と罰と向き合ってきた。 お前から見れば整合性がなく間違った監獄かもしれない。無理もない。自覚はある。まるで、自分の中に無数の人間がいるように、ミルグラムに対して、囚人に対して 様々な思いが同居している。
コトコ
そんな状態でこの先もミルグラムをぐちゃぐちゃにし続けるつもり?
エス
それでも!長い時間向き合ってきたんだ。お前も含め囚人10人のことを、必死で、考えてきた。その思いを間違いなんて僕は思わない。どんな地獄を巻き起こそうと、 僕はここから逃げない。誰かに任せたりしない。それが看守として囚人たちの心に踏み込んだ責任だと思う。だから、 お前と手を組み続けるかどうかは再検討だ。
コトコ
ふぅ…あぁ、くだらない。いつもそうだ。お前たち弱者はいつもそう。お前たちには誰かが傷つくことを楽しむ心がある。
エス
そうかもしれない。
コトコ
悪人がばっさり落ちていく様を喜ぶ心がある。
エス
否定はしないさ。
コトコ
それを求めておきながら、自分の周りで自分の選択で起きた瞬間に 責任逃れのぬるい綺麗事を吐き始める。いつもそう、いつもそうだ。…バカ共が!
エス
認める…お前は強者で、僕たちは弱者…。…その通りかもしれない。でも、それが今の僕達だから。
コトコ
力もないくせに力を得ようとする努力もせず、口だけの正義感を並べ立て、そこに一貫性もありゃしない!無責任なポジショントークの繰り返しだ。人の不幸に興味があるのに、その自らの本質すら直視することができない!
エス
なんとでも言え。
コトコ
悪を憎むとうそぶくなら行動すればいい。自分の行動で世界が変わると信じ貫けばいい!遠くからさえずっているだけの奴が何人いても、世界は腐っていく一方だ!力がないのなら、力のある私に委ねろ!エス!!私が徹底したミルグラムを実現してやる!
エス
…。お前は確かにミルグラムの1つの理想を体現しているかもしれない。僕は、囚人に愛着を持ってしまう。不完全な看守かもしれない。
コトコ
わかっているなら過ちを続けるな!
エス
それでもここは僕の監獄だ。…これは、僕の戦いだ。あいつらの今の苦しみだって僕の物だ。
コトコ
っ!!
エス
お前の力は強力だ。使えばなせることも多いのだろう。だが…ミルグラムは僕のものだ。例え、この先協力するとしても、僕が王…。お前は道具。…調子に乗るなよ。
コトコ
お前にその価値があればな。
エス
囚人番号10番コトコ…。お前の罪を歌え。


よろしければ推してください!