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明治 近代文学 名著復刻版

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1868〜1912(明治元年〜明治45年)
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#本のある暮らし

発展

岩野泡鳴 39歳。詩人から小説家へ。 厚めの大きい本。ソフトカバー。 口絵や挿絵がなく文字のみ。全体的に質素な感じです。 「はしがき」と「人物紹介」の文字は濃いめのブルーグリーン ・・・ ほぼ自伝小説である「発展」🙂 ・・・ 著者 岩野泡鳴 *著作者→著者へ。 発行所 実業之世界社 ・・・ 女性関係、訴訟、心中未遂、田山花袋との対立、「発展」の発禁(風俗扱い)、 北海道での事業の失敗など強い個性と行動力の持ち主。腸チフスのため47歳で亡くなります。波乱万丈だけ

思ひ出

北原白秋 26歳。歌人、詩人、作家。校歌や社歌などの作詞。 サイズは小さめで厚め。持ち運びには便利。 紙質がよく全体的に上品な雰囲気。一生手元に置いておきたくなるようなおしゃれな本です😊 O*MO*I*DE というのもステキ ダイヤのクイーン。旧約聖書に出てくるヤコブの妻、ラケル(レイチェル)。よく見るとお花を持っています。 ・・・ 白秋の故郷、福岡県柳川市の言葉だそうです 著者 北原白秋(本名は記名なし) 発行所 東雲堂書店 北原白秋は校歌や社歌も多く作ってい

お目出たき人

武者小路実篤 26歳。 ソフトカバーで持ちやすい。濃いめの赤の表紙が印象的❤️ 装丁は画家、有島生馬。有島武郎の弟です。 文庫本をちょっと大きくしたようなソフトカバーの本。文字が大きく読みやすい。 左ページ最後の行:「口絵はクリンゲルのエツチング集インテルメチーの序畵である」 20代半ばの主人公が近くに住む女学生に恋をし告白。でもあっけなくフラれて終了という話。じつは実篤自身の体験をもとにしているとか・・ この本をちょっと読んでみたんだけど、不思議なことに「note

一握の砂

石川啄木 24歳。 薮野椋十(=朝日新聞社会部長の渋川柳次郎) 友人の宮崎大四郎、同郷の金田一京助に歌集を捧ぐ 亡児眞一に手向く(夭折した長男) 著者 石川啄木 発行所 東雲堂書店 おだやかな風貌の啄木ですが、金欠と遊びで波乱の人生。早い年齢での結婚で所帯持ちになりながらも職や住む場所も点々と人生ハードモード。周辺も家族も大変・・ 繊細そうな歌からはイメージしづらいですが、でもそういった過酷な環境下だからこそ書けたのかなと思ったりもします。

遠野物語

柳田國男 35歳。日本の民俗学者。 岩手県遠野郷の民間伝承。佐々木喜善より聞く。 ページをめくることができないアンカット本。ペーパーナイフでページをカットしながら読み進めるタイプです。 学校の教科書のような本。口絵、挿絵がなく文字のみでいたって質素でシンプルです。 外国に住む日本人へ(内省してほしいという気持ちをこめて) ・・・ 文明開花で忘れ去られていった自然や神々への信仰 著者 兼 発行者 柳田國男 自費出版 ・・・ 若い頃には国木田独歩や田山花袋との交流

NAKIWARAI

土岐哀果 25歳。歌人、学者。 ローマ字ひろめ会刊 本のサイズは小さく32ページしかないのでとても薄いです。ただ、ハードカバーなので小冊子という感じではありません。 ◎歌集の特徴 ・ローマ字(ヘボン式) ・一首を三行に分ける ・・・ 著作者 土岐善麿(土岐哀果の本名) 発行所 ローマ字ひろめ会 石川啄木に影響を与えた「三行書」。また、お互い友情を深めそれぞれの名をとった「樹木と果実」という雑誌を企画していたこともあったそうです。

田舎教師

田山花袋 38歳。 明治40年前後からおきた自然主義文学の代表作家。ほかに島崎藤村がいる。 21歳から作家人生40年。 箱の中に本を入れるタイプのカバー ソフトカバーの本なのでしっかり厚紙ボックスで保護 ・・・ 義兄の太田玉茗 *花袋の妻の兄 ・・・ 口絵は洋画家の岡田 三郎助 ・・・ 著作者 田山花袋 発行所 佐久良書房 ・・・ 没落士族出身、早く父をなくし丁稚奉公をしたことも。少年期は漢詩、漢文、和歌などを学び自ら道を切り開いていった人。日露戦争では記者

うた日記

森鴎外 45歳。 日露戦争に従軍しているときの詩歌集。 挿絵がたくさんあって詩歌のイメージがしやすいです。 ◎挿絵◎ 葦原緑子 久保田米斎 寺崎広業 樹木を想像させる「茶色と年輪」 ストライプがまるで森林のように見える 主なカラーはグリーン🌿 「即興詩人」と似ています 歌でなく「うた」 本のサイズは小ぶりなんだけど、紙質が厚めなのでちょっと重いかなぁ 横から見て色付きページが挿絵 著者 森 林太郎(鴎外) 発行所 春陽堂 ◎春陽堂書店◎

鶉籠(坊っちゃん、二百十日、草枕)

夏目漱石 40歳。 「鶉籠」  ・坊っちゃん 1906  ・二百十日 1906  ・草枕 1907 どっしりと重さのあるゴージャスな本。しかもけっこう大きい。花柄が上品で優雅な感じです。 ・・・ カバーをはずしてみたらとっても爽やかな若草色です。しかも両面に花柄模様の空押し加工(紙に圧力をかける方法)。 このままインテリアとして飾っておきたい 春陽堂さん。文字がアートのようになってきた ・・・ ワインレッドの文字と「坊っちゃん」丸に囲まれてハンコみたい 夏目

野菊の墓

伊藤左千夫 42歳。 15歳の政夫と2歳上の従姉民子との恋の物語。 丘の上から政夫と民子が語り合っている様子。 恋愛関係を周囲から反対されていた二人。いとこ同士だから?若すぎるから? ひょっとして親同士の関係がよくなかったとか・・・ ちなみに日本の法律ではいとこ同士でも結婚はできます。3親等以内はダメだけど、いとこは4親等になるので問題ありません。 口絵は中村不折。 島崎藤村の「若菜集」、夏目漱石の「吾輩ハ猫デアル」でも描いていますね。こちらで何回か紹介してきたのでだん

破戒

島崎藤村 33歳。 浪漫主義の詩「若菜集」から自然主義の「破戒」へ。ロマン派から真実を問う社会派へ。 本の装丁はいたってシンプル。無駄な装飾がなく表紙も文字のみ。自費出版となっています。 本を開けると日本画家の 鏑木 清方が書いた口絵。ちなみにこの本でのイラストはこの口絵のみとなっています。 ・・・ 著作と発行人、島崎春樹(藤村)。 ・・・ ところで嬉しいサプライズがあるのですが、なんと「破戒」がこの7月に映画化されるそうです。しかも60年ぶりとのこと。たまたま当

吾輩ハ猫デアル

夏目漱石 39歳。 この本を見て驚いたのがページが袋とじになっている「アンカット本」で、ペーパーナイフを使ってページをカットするのだとか。ちょっと面倒だけどなんとなく特別感がありますよね。 とはいえ、最初は「あ、ページがくっついている。製本ミスだ」って。でも思い直して調べてみたらこのままでいいのがわかりました… もうひとつ注目したいのが表紙よりページのサイズのほうが大きいこと。なのでページすべてが表紙からはみ出しています。カットしやすいようにこのようにしているのかな?

海潮音

上田敏 31歳。 ヨーロッパの詩を訳したもの。 厚めの和紙一枚で本を覆うという珍しいタイプのカバー。 日露戦争で満州に出征していた森鴎外へ献呈。 ・・・ ◎「落葉」 ヴェルレーヌ(フランスの詩人) ・・・ ◎「山のあなた」 カール・ブッセ(ドイツの詩人) 五七調。流れるような優しい言葉。声に出して読むとなぜか心が落ち着いてきます。まるでヒーリングの効果があるような不思議な感覚☺️ 学生の頃に「どこかで習った」かもしれない上田敏の訳詞です。 ・・・ 訳者 上

あこがれ

石川啄木 19歳。はじめての詩集。 透け感のある表紙カバーにもイラストが描かれています。 与謝野鉄幹主宰の文芸誌「明星」に応募し注目される。 序詩(はじめに)、文学士の上田敏。 ・・・ 尾崎行雄(東京市長)への献辞。 故郷の山河(岩手県)に捧ぐ。 まだ二十歳になっていない才能あふれる啄木。 ・・・ 70ほどの多彩な詩。19歳でこんなに書いていたなんて😮 ・・・ 「マカロフ提督追悼の詩」。日露戦争の敵将に向けての哀悼を書いています。当時の日本の国粋主義とはちょっ