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昭和 近代文学 名著復刻版

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1926〜1943(昭和元年〜昭和18年)
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2022年6月の記事一覧

機械

横光利一 33歳。 明治から続いていた文学に新風をということで登場してきたのが「新感覚派」、モダニズム文学。1924年の関東大震災後、川端康成などとともに「文芸時代」という雑誌を創刊(1927年に閉刊)。 本のサイズが大きい!というのが第一印象です。(比べる対象がなくてsorry) 佐野繁次郎 装幀 句読点が少なく機械のような文体。複雑な人間心理を描いている。 著作者 横光利一 発行所 白水社 戦後、文壇の戦犯となってしまった横光利一。そんな状況下でも検閲を経て『

浅草紅団

川端康成 31歳。 浅草の風物詩のような小説。パフォーマンス団員たちの日常的な様子が書かれている。*実在モデルはいない。 装丁は吉田謙吉。舞台装置家、美術監督、タイポグラフィ作家。 カジノ・フォーリー 浅草にあった余興場。ここの常連客だった川端😀 挿絵は洋画家の太田三郎。丸みのある絵が特徴的で新しい感じがしますね 著者 川端康成 発行所 先進社 ・・・ 東京に来たばかりの頃から浅草通いをしていたという川端。浅草が好きだったようです。 もともと新聞の連載小説だった「

測量船

三好達治 30歳。詩人、翻訳家。 はじめての詩集「測量船」。39編の詩集。 著者自身、子ども時代は大阪に住む両親のもとを離れ兵庫県にいる祖父母に預けられて育った。あの詩は母を想うのと同時に、心のどこかにひそんでいたもどかしさと怒りが、ひょんなことで詩に出てしまったのではないだろうか。 たった二行にもかかわらず、想像力かきたてられる「雪」。 ・・・ 著 者 三好達治 刊行所 第一書房 * 大阪の高槻市に三好達治の記念館(本澄寺の中)。阪急上牧駅から徒歩10分。事前

太陽のない街

徳永直 30歳。  印刷会社の労組に参加し解雇された経験を書いたプロレタリア小説「太陽のない街」日本プロレタリア作家叢書4。労働者出身ということで世界から注目。ドイツ語、ロシア語、英、仏、スペイン、中国語に翻訳される。 装丁は柳瀬正夢。ハンマーをもっている男性が印象的です。 本文中の白黒の挿絵は目黒生。 著 者 徳永直 発行所 戦旗社  ・・・ 世界大恐慌の引き金となった1929年10月米国の株式大暴落。その2ヶ月後にこの本が出版されました。4年後の1933年、小

蟹工船

小林多喜二 26歳。 プロレタリア文学の小説家。小樽高商卒業後、拓殖銀行を経て、共産主義の運動家へ。 1928年3月15日・・・三・一五事件 日本全国で一斉に党員たちが検挙された日 本全体としては雑誌という感じです。紙質はあまりよくなく裏面が透けて見え、小さな字の上に漢字が印刷で潰れてしまっているところもあります。 著者 小林多喜二 発行所 戦旗社 *1928〜1931 党内のスパイによって築地警察署に連れていかれ30歳で亡くなりました。 ・・・ 若い頃から志賀

伊豆の踊子

川端康成 28歳。小説家。 1968年、69歳でノーベル文学賞を受賞。72歳で自死。 3歳で父、4歳で母、8歳で祖母、11歳で姉、そして16歳のときに最後の身内の祖父が亡くなる。その後、伯父の家にひきとられるが最終的には寄宿舎へ移る。 ・・・ 20代のときに執筆した短編の作品集。線の細いイラスト、赤と白の表紙でやさしい仕上がりになっています。 装丁は吉田謙吉。口絵は、吉田自身が川端の宿泊先に訪れた際にスケッチしたもの。 ・吊り橋の様子 ・筧の水はね ・部屋の欄間 ・浴