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友達のパパ

友達のパパを好きになった経験ってあるだろうか。
思い切って書いてしまうが、私はある。
正確には友達のパパを好きになったんじゃなくて、好きだったおじさまのお嬢さんとうっかり友達になってしまったという順番だけど。
若い頃ずっと片想いしていたおじさまのお嬢さんだ。


こんな話は自分の胸にしまっておくべきかもしれないし書こうかどうかずっと迷っていたのだが、自分の心情を吐露したくなったので書いてしまう。
ただ、おじさまはとうに亡くなっているが、彼女とは今でもお茶したりご飯を食べに行ったりするほど現役ばりばりで友達なので、ものすごくぼやかして書くことにする。



彼女は、当時私がいた会社と広い意味で同じ業界に勤めている人だった。
そして本当にたまたま、私と仲の良かった上司の知り合いであった。
ある時その上司から、他社の人を交えて食事会をするので津田さんもおいでよと誘われて参加したところ、彼女が来ていたのだ。


名刺交換をしながら彼女の苗字を聞いて「ん?」と思った。
私が恋していたおじさまのユニークな苗字と彼女の苗字が同じだったのだ。
そして話をしている内に、彼女が本当におじさまのお嬢さんであることが判明してしまった。
おじさまにお子さんが何人かいるのは聞いていたのだが、その内の一人だったのだ。
言われてみれば顔も似てる‥‥!!


この時、おじさまが亡くなってから半年後ぐらいだったと思う。
こんなことある?!
私はえも言われぬ感動で真後ろに倒れそうになったが、表面上はあくまで自然に、おじさまに恋していた事などおくびにも出さずに会話をした。


彼女は非常に感じの良い人で、おじさまの娘だけあってとても話が面白く、そして私も彼女を笑わせるのが楽しく、彼女の方が10歳ほど年上ではあるが話している内にすっかり仲良くなって、連絡先の交換までしてしまった。
彼のことが頭をよぎる度に浮かぶ気まずい思いは打ち消した。


その後二人でよくお茶をするようになったのだが、彼女のお家(=生前のおじさまのお家)に初めて誘われた時はさすがに震えた。
   いくらなんでもそれはまずくない?!私
心では大いにうろたえたが、大好きだったおじさまのお家に行ってみたい‥‥!と思う気持ちが膨らみすぎて、結局お邪魔してしまった。


いかにもおじさまらしい昔風の和洋折衷のとても素敵なお家だった。
雰囲気のあるしつらえの仏壇が見えた時、私は思わず
「せっかくだからお父様にお参りさせて頂いてもいいですか?」
と言ってしまった。すると、
「もちろんよ、ありがとう。父も喜ぶわ。パパ、これが噂の花野ちゃんよ」
と彼女が仏壇の方を向いて私を紹介するように言ったので心が痛んだ。


おじさまが亡くなった時、私はお通夜と告別式の両方に行った。
その時はおじさまが突然いなくなってしまったことに激しく動揺していたので、彼女のことは覚えていない。(奥さんのことは嫉妬と羨望でめちゃめちゃ見た)
仏壇には、その時に見たのと同じ遺影が飾られていた。
眉根を寄せてちょっと笑っている、私の一番覚えている大好きなおじさまらしい表情だ。
『あなたよくこんな所来るな』
と、ちょっとあきれて笑っているような顔に見えた。


私はお線香を上げて手を合わせながら、
『ごめんなさい、お嬢さんとお友達になってしまった上にお家にまで来たりして本当にごめんなさい。こうなってしまったのは全く悪気じゃなかったんです‥‥!』(悪気があっちゃたまらないが)
もう事の成り行きを謝るのに忙しくて冥福を祈ってる場合じゃなかった。


「父が生きてる時に花野ちゃんに会わせたかったわ〜。父と花野ちゃんってすごく趣味が似てるからから絶対相性良かったと思うのよね」
うっ‥‥‥‥。
「父の気に入るタイプだと思うわ〜」
うっ‥‥‥‥。


罪悪感がすごい。
すごいが、恋心の部分は舞い上がってしまった。


実は以前に彼の仕事仲間からも「あなたはいかにもあいつの好きそうなタイプだよ」と言われて有頂天になったことがあったのだが、彼女にも似たようなことを言われて「私けっこういい線行っていたのでは‥‥」と思ってしまった。
ま、実際は完全に片想いだったわけだが(空笑い)


いや、そんな私の気持ちの話はいいのだ。
問題はそこじゃない。
彼女は、父親が他所でしばしば恋愛沙汰を起こしながら生きてきた人であるということは若い頃からよくわかっていたらしく、そんな話も私にちらちら話していた。
でも、よもや私が自分のパパを本気で好きだったとはゆめゆめ思っていないだろう。
そこが最大の心が痛む点だ。



どうなんだろう‥‥。(自問)
片想いだったんだし、実際に付き合っていたわけじゃないから全然OK?
別に罪悪感抱かなくていいだろうか?
でも私、当時おじさまに超・本気で告白してアプローチしていたのだ。
抱いてほしいとかキスしてほしいとか言っちゃっていたのだ。
おじさまに頭をぽんぽんしてもらっていたことぐらいは許されるとして、腕を組んで肩に頬を寄せちゃってたのとかは??


‥‥え、ギリアウト?
っていうか普通にアウト?
‥‥‥‥。
たしかに自分に置き換えて考えるとやっぱりちょっとイヤな感じがするもんな‥‥。
本当にごめんなさいごめんなさい。


しかし、今や私にとって彼女は大切な大好きな友達なのである。
【 きっと彼が、私と彼女を引き合わせてくれたんだ 】
とかなんとかきれいにまとめてしまいたいが、そもそも彼が引き合わせてくれる必要がどこにも無いのが苦しいところだ。


この秘密さえなければ気が楽なのにとは思うが、かといって正直に打ち明けるわけにもいかない。
せめてここでお詫びの気持ちを書くことで気を紛らわせている。





↓ そのおじさまとの懐かしい思い出


↓ これも友達のパパに恋する話だけど、上記のおじさまとは全然別の時に憧れていたおじさんをモデルにした架空の小説です。

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