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Music and Sound Quality -9 デジタル環境での音質改善

「音楽が持つエモーションをきっかけに、あと少し音楽へ近づくこと。そして、その音楽のエモーションの受け取りが、あと少しでも多く出来る再生音質の実現について、日ごろもろもろと思うところを書いていきます。第9回目です。」

(最初の投稿から1年が過ぎ、内容の見直しと加筆修正をしています)


音質改善例の紹介

今回は、パソコンをUSBやLANを経由してオーディオ用アンプ・スピーカーに繋ぎ、音楽を楽しむPCオーディオでの改善手法を例にして、比較的小コストで音質を改善していくための、代表的ポイントを説明していきたいと思います。

もちろん使用している環境や機器の違いにより、いつも同じ結果を得られるとは限りません。ここでは、ある環境で実際に行った対策の中から、「このようなものがこのように影響する」という音質変化の例を中心に、代表的なものを紹介していきます。


●音源

サブスクを利用する機会は増えていますが、それでも好きな楽曲はCDやWAVのロスレスデータで購入しています。サブスクでも聴けるにもかかわらず、わざわざ購入する大きな理由は、ロスレス音源を所有することで、ハイビットレート変換しての再生がいつでもできるということです。

私の例でいえば、CDは一旦44.1kHz 16bitでリッピングし、例えばスマホにはWAV96kHz 24bit、DAPやPC再生時にはDSF 11.2MHz、コンポにはDSF 5.6MHzなどに、環境と性能に応じてフォーマットとビットレートを変換して用いています。

使用環境の特性に応じて、再生音質がベストにマッチするフォーマットがありますが、いずれの場合でも、CDの44.1kHz 16bitそのままで再生するよりも、よりリアルな音で聴くことが出来ます。


アップコンバート音源は、いわゆる「ニセレゾ」と言われることもあります。しかし、そもそも本物とは “原音” あるいは “アーティストのエモーション” であり、オーディオとは錯覚も活用してそれらを簡易的に再現することなので、ここで本物/偽物を言っていても仕方がないことです。リアリティある再現が可能な音源は、一つの"正しい" 音源なのではないでしょうか。


ハイレゾダウンロード音源は、ハイレゾ感の演出のために音が加工され過ぎる場合があること、データだけでは機器更新やファイル整理中の事故で消失する可能性があること、サービス終了や再ダウンロード期限の終了などを実際に経験したこと、数年ごとに訪れる機器更新でマスターを移動しなければならないストレスなど、極めて個人的ではありますがいくつかの懸念点があり、それほど積極的には利用していません。


但しCD自体もディスク素材の経年変化により、読み出しデータのジッタ増加という劣化が起こります。オーディオはあくまで簡易的再現なので、そこに完璧なものを望むことは出来ません。


●PC関連  

DCノイズフィルター
パソコンの電源には、一般的にはスイッチング電源が使われます。このスイッチング電源は小型軽量で効率が良い反面、オーディオ機器で使用する場合は、大量に発生するさまざまな周波数のノイズが音質へも影響を及ぼします。

音楽ファイル再生にノートPCを使用するのであれば、ACアダプターとPC本体の間にノイズフィルターを入れることで、比較的簡単にノイズ成分の除去が可能になります。電源ノイズが低減されることで、再生音も滑らかですっきりとした音に変化します。私はiFi-AudioのiPurifier DC IIを使用しています。

USBフィルター
5Vという十分に高い電圧で、1秒間に数億回というとんでもないスピードでON/OFFし、ノイズにまみれているUSB信号は、人間の直観的な感覚を越えたところで作動しています。

その様なUSB信号に対して、USBノイズフィルターの使用で音の明瞭度に大きな改善効果が得られると言っても、やはり直観的な感覚では理解しにくいかもしれません。しかし、ノイズを抑えることによる音質への効果は、確実に存在しています。

USBノイズフィルターにはいくつもの製品が存在していますが、効果と音の変化の自然さの程度は、それぞれに特徴があります。その中でもPANASONICのSH-UPX01は効果も高く、空きUSBポートに挿すことにより、比較的万能に使用することが出来る気がしています。

また、パイオニアAPS-DR005とiFi-Audio iSilencer 3.0を組み合わせて、USBラインそのものに割り込ませて使用することでも、あくまで個人的な環境と好みに基づいた印象ですが、好ましい傾向の音になると思います。

USBケーブル
デジタル信号が流れるUSBケーブルで、音質が変わると聞けば、多くの人は不思議に感じるのではないでしょうか。

しかしUSBフィルターの項目でも述べましたが、非常にはやい速度でON/OFFするUSB信号が、ケーブルを通過することで発生する信号波形の反射やなまり、あるいはインダクタンス成分による影響などが、データ/クロックのジッタ増加の原因となり音質へも影響します。

当然、ケーブルによって音の傾向はかなり異なってきます。私が好んで使用しているSUPRAのUSB2.0 は、音の厚みや密度感の向上が得意なケーブルだと思います。

wi-fi
パソコンに限らず一般のオーディオ機器でも、内臓wi-fiをONにすると音質が悪化する場合が多いようです。

有線接続が出来るのならばそちらを使い、wi-fiはOFFに設定しましょう。電波が弱いBluetoothでも影響する場合がありますので、使用していないのであればOFFにしておきましょう。

空中を飛ぶ電波の影響まで気にすることは現実的ではありませんが、機器内の超近距離にある電波発生回路が生む強いノイズが、音へ及ぼす影響は大きいものがあります。

その他
PCで稼働している常駐ソフトは、ノイズ発生や音質への影響の可能性がありますので、停止できるものは終了しておきましょう。有線LANや外部モニター接続も、PC内のノイズ増加の原因になり音質へ影響しますので、録音・再生時は外すことをお勧めします。

また、PC内臓の冷却ファンも、振動・ノイズの原因になります。PCには外部から風を当てて、本体ファンの動作をできるだけ抑える工夫もするとよいでしょう。


●リッピング&再生ソフト

CDのリッピングとデータ再生に使用するソフトも、再生音質を考える場合はとても重要な要素になります。さまざまな無償ソフトと比べれば、信頼が置ける有料ソフトでは音の精度が大きく異なります。

有償ソフトは購入して使うだけで大きな改善が実現できるシンプルな方法なので、試用期間で試して効果が実感できたのあれば、購入を是非検討したい項目です。

リッピングは、基本的には同時に行う処理を最小化するセッティングで行ってください。またリサンプリング時に、SoXの使用が可能なソフトを使うことも重要です。ちなみに私はJRiver Media Centerというソフトを使用しています。

また、音源ファイル自体にカバーアートデータを付加すると、再生音質に悪影響を与えることも経験的に判明しています。このソフトではカバーアートの保管場所を、データファイル外の任意のパスに設定することが出来るようになっています。


●リッピング環境

CD再生やリッピングデータ作成時には、A/D・D/A変換、あるいはEFM復調やリニアPCMのWAV書き換えなどのデータ変換プロセスが多く介在し、そこにジッタによる時間軸変動が存在すると、その変動情報は記録されないにもかかわらず、時間軸変調を含んだデジタルデータだけ残ることが問題になってきます。

そこでジッタの発生を抑えるために、そもそもの変動要因であるノイズや振動を抑制することが重要になります。

CDドライブに関しては、ディスク回転による振動共振を抑えることで、ドライブ駆動制御を行うサーボ回路での電流変動を減少させます。

またドライブの駆動電源も、PCからUSBケーブル経由で受けるのではなく、外部電源からの供給が可能なディスクドライブを使用することも重要です。


●アンプまわり

電源コードの方向
ACコンセントの挿す向きで、再生音はかなり大きく変わってきます。それぞれの向きでの音質確認は、オーディオセッティングの基本項目になりますので必ず行うようにして下さい。

通常、悪い向きでは密度感が薄く、荒れてざらついたような音がします。しかし聞き方によっては、派手で活発なイメージに聞こえる場合もあります。何度か向き変更を繰り返して、注意深く再確認をして最終決定をしてください。

ACノイズフィルター
AC電源もさまざまなノイズを含んでいます。ACノイズフィルターを使うことで音の密度感が上がり、しっかりと響くような、音の基本となる部分での大きな改善が得られます。

シャーシアース接続
アンプのシャーシをアースに接続することで、音がすっきりと明瞭になります。コンセント工事を依頼しなくても、部屋にあるエアコン用のアース端子などから引っ張ってくるのも良いでしょう。

ACノイズフィルターの使用にもアースが必要になってきますので、準備する価値は大いにあります。

アース自体が汚いかもしれない、アース線の適切な種類が分からないなど、悩みだすとキリがありません。悪くならないのだったらOKという気持ちで、まずはやってみることをお勧めします。

またこのアンプのシャーシアースが出来ると、ACコンセントを挿す向きによる音変化の悪化程度が、かなり減少するという効果もあります。


●スピーカーまわり

スピーカーの選択は、オーディオの醍醐味の中でも大きなものの一つです。そしてスピーカー本体だけではなく、周辺にもさまざまに工夫が出来る部分があります。

セッティングについては次回に説明を行いますが、その他でにもスタンド・インシュレーター・スパイク・オーディオボード・ラグ端子など様々なものがあります。

特にスタンド・インシュレーター・スパイクなどの使用では、明らかな改善効果を得られますので、試みる価値は大きいでしょう。

また使用するスピーカーケーブルでも、驚くほど大きく音が変化しますので、その選択はかなり重要になってきます。しかしスピーカーケーブルは選択肢も多く、またシステムの特性や好みとの相性の問題もあり、更には簡単にあれこれと試すことも出来ません。

まずは素直にオーディオショップの店員さんなどに、好みの音の傾向と予算を伝えて、アドバイスをもらうのが良いかもしれません。

また、スピーカーケーブルには無視できないほどの抵抗値がありますので、ダンピングファクターの影響を揃えるために、左右のケーブルの長さは必ず同じものを使用しましょう。


次回はスピーカーセッティングについて書いていきたいと思います。

よろしくお願いします。

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