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蛇腹切り。 文字だけを見ると、何とも物々しい。今にも鎌首もたげた蛇がシャーッ! とこちらに飛びついてきそうな雰囲気を醸し出している。 数年前の夏、奈良の山奥を歩いたとき、大きなカナチョロ(正式にはニホンカナヘビ。胴の長いトカゲ)だと思って、呑気に近づいたら、小さいアオダイショウだったことがあった。カナチョロに脚がないだけの見た目なのに、やはり蛇だと思うとそれだけで怖かったのを憶えている。 あの年の夏もなかなか暑かったが、それ以上に今年はどうにかなってしまいそうなく
私は我慢の利かない女である。 袋菓子など一度開封してしまうと、途中で袋を閉じてとっておくことができない。さすがに最近は四十路も半ばに差し掛かり、袋菓子を平らげるようなことはしなくなったが、若い頃は、気が付けば袋の中が空っぽ、ということがざらであった。 全部食べたらダメだ! そんなことを思いつつも、目の端で食べかけの袋菓子を追っている。そうなると、ずっと食べかけの袋菓子の気配を背中で感じながら、時を過ごすことになってしまう。 お菓子を全部食べられない、というのは
【まごわやさしい】 この言葉を初めて聞いたのは、当時、まだ現役の野球選手だった工藤公康さんのドキュメンタリーを見たときのことだ。 テレビカメラは工藤氏の自宅キッチンを映し出し、そこで奥さまの雅子夫人が手際よく料理をしている。大きな冷蔵庫を開けると、そこにはたくさんのタッパーが並んでいた。中身はすべて、下処理された食材や、夫人手作りのお惣菜だ。きちんとラベリングされ、整理された冷蔵庫は、なかなか壮観なものだった。 「やはり、食事はかなり気にされているんですか?」 デ