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花丸恵の食べたり呑んだり作ったり

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自分が書いた食べ物やお酒などに関するエッセイをまとめました。 食べた感想だけでなく、食べ物に関して疑問や思ったことなども書いています。 今後もどんどん追加していきます。 食いしん…
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2022年10月の記事一覧

気づいたらピェンロー

 今年は白菜が安いらしい。  軒並み物価が高騰する中、薄緑の外葉をまとってそびえたつ白菜は、まるで救世主のようである。その力強い姿を見ると、私の頭の中には、湯気の上がった「ピェンロー」が浮かんでくる。  随分前にラジオで、舞台美術家をされている妹尾河童氏の著作「少年H」の朗読を聞いた。ながら聞きしていたので、内容までは思い出せないのだが、聞いていて、おなかがほこほことあったまる、そんな感覚になったのを憶えている。  「少年H」はドラマ化もされて話題になった作品だ。今でも妹

ビタミンちくわはツレナイやつ

 私は埼玉県民である。  スーパーが点在し、コンビニもあり、徒歩圏内である程度の食べ物や日用品を揃えることができる。大変ありがたい環境下で暮らしていると自負してはいるが、そんな埼玉の暮らしに100%満足しているかと問われれば、そこは「否」と答えなければならない。  例えば、エコバックをぶら下げて買い物に行く。  そろそろ寒くなってきたから、おでんもいいねぇ、などと思いながら、練り物売り場に立ち寄る。さつま揚げ、はんぺん、ゴボウ巻き、馴染みのおでん種に視線を送り、チラリとちく

頼りない食パン

 パンに頼りがいを求める人がいるかはわからないが、見るからに頼りないパンがある。  初めてスーパーでそのパンを見かけたとき、学校の朝礼で貧血になって倒れてしまう細面の男の子を連想してしまった。  耳まで真っ白なパンで、事情を知らない人が見れば、生焼けかと目を疑ってしまうだろう。  そのパンの名を、ふんわり食パンという。  このふんわり食パン。  特売ともなれば、何段も積み重ねられて売り場に並ぶのだが、三段も重ねると、一番下のパン達は重みに耐えかね、いささか苦しそうに見え