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花丸恵の食べたり呑んだり作ったり

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自分が書いた食べ物やお酒などに関するエッセイをまとめました。 食べた感想だけでなく、食べ物に関して疑問や思ったことなども書いています。 今後もどんどん追加していきます。 食いしん…
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2021年7月の記事一覧

果物を赤くしたい

 私にとって旬の果物を買って食べることは、ちょっとした贅沢だ。  もっと日常的に食べたほうが身体にも良いのかもしれないが、普段の食事に気を取られ、果物まで気が回らないことが多い。  たまに食べる果物が美味しいと、あぁ、また買ってみようかな、という気持ちになる。逆に想像より甘くなかったり、味がぼやけてたりすると、やるせない気持ちになり、ついこんなことを思ってしまうのだ。  (あぁ、ハズレを引いちゃったな)  年中、果物を口にしている果物好きならまだしも、私のようなたまに買

ひとりオリンピック

 猛暑である。  私はとにかく暑いのが苦手なので、現段階で既にヒーヒー言っている。序盤でいきなり王手を食らったような状態だ。  冷房の無い台所が地獄と化している。酷い時は室温が38度を超える高温多湿の台所である。  そんな日は当然、外のほうが暑い。窓を開けても熱風が入ってくるだけなので窓を開けると、かえって室温が上がってしまう。  熱気に囲まれ逃げ場がない。打つ手なし。夏に投了である。  我が家はオール電化なる殿様のようなシステムは導入していない。私はこの酷暑の中、エアコ

隠れ身の術

 自宅に友人を招待したと仮定する。  楽しく呑んで食べて飲み会もお開きとなり「じゃあ、またね」と言って、玄関先で友人と別れる。片付けをして、布団を敷いて、歯をしっかり磨いて、就寝。  朝になり、少し飲みすぎちゃったかなぁ、なんて思いながら、顔を洗おうと洗面所に行くと、昨夜玄関先まで見送ったはずの友人が、 「あ、おはようございます」  と言って出てきたら、普通の人はどう思うだろう。思わず、 「お前、昨日帰ったよね? なんでいるの?」  という言葉が口をついて出てくるは

赤しそを驚かす

 赤しその出回る季節である。  赤しその時期になったら、赤しそシロップを作りたいと思っていた。赤しその鮮やかな赤い色は、私の大好きな色だ。好きな色を食べたり飲んだりできるなんて、艶かしく魅惑的な気がして、何だかワクワクする。  シロップ作りのための食材を準備し、さぁ作ろうとレシピを見返していると、赤しその葉を煮出す時、一緒にひとつかみの青しそを入れると、爽やかな風味が増して美味しくなると書かれてあった。  私は赤しそと砂糖とリンゴ酢さえあればできると思いこみ、青しそを