フォローしませんか?
シェア
恋は猫をかぶらないと、成就し得ないものなのだろうか。 彫刻刀で掘ったような深い皺を眉間に刻み、小田切昌子は腕組みしながら考え込んでいた。 社員食堂の端の席でたぬきそばを食べ終えたとき、先日の合コンでの光景がまざまざとまぶたの裏に浮かんできたのだ。あのときも、昌子は店の奥の右端の席に座っていた。 小田切昌子は、鼻の穴を大きく膨らませ「むーん」とも「ふーん」ともつかぬ曖昧な音の溜息をついた。その様子はまるで、三日煮込んだこだわりのスープが自慢の、ラーメン屋の主人のよう