二匹の猫と楽しい毎日ー8(二匹目の猫がやってきた)
我が家にやってきて半年が過ぎ、<そら>もやんちゃ盛りの歳になり、家中を走り回り、色んな物を壊しまくった。
そんなとき、妻の友人の洋子さんがやってきた。
「はいこれ」
リビングに入ると、いきなり小さな箱をテーブルの上に置いた。
「ありがとう」
妻が嬉しそうに返事をする。
僕は洋子さんがケーキを持ってきてくれたと思って、紅茶でも出そうかとキッチンにはいった。
そのとき、突然背中で猫の鳴き声が聞こえた。
「みやぁ~」
<そら>の声ではない。
赤ちゃん猫の声だ。
その声がどこから出てくるのか僕にはわからず、あたりをキョロキョロと探った。
洋子さんが持ってきた箱を開けると、中から小さな猫が顔を出した。
「わ~可愛い」
妻が満面の笑みを見せてその猫を箱から取り出し、腕で抱きしめた。
そして、驚いて見ている僕の前にやってきた。
「抱いてみて」
そういって子猫を僕に押し付けた。
「みゃぁ~」
可愛い鳴き声
僕は赤ちゃんを抱っこするように子猫を優しく抱いた。
そのとき、僕の足を何かがひっかいた。
足元をみると<そら>が僕の顔を見ていた。
僕はしゃがんで、<そら>にその猫を見せた。
「洋子さんの猫だよ」
そういって<そら>に見せた。
<そら>は鼻をくっつけクンクンと子猫のにおいを嗅いでいる。
「いえ、淳子さんの猫よ」
洋子さんが言葉を返す。
(*淳子とは妻の名前である)
「・・・?」
僕にはそれが何を意味するか分からなかった。
「洋子さんの猫でしょ」
洋子さんの目の奥を探りながら、繰り返した。
「ちがうの。この猫は<そら>のお嫁さん」
妻が横から口を挟んだ。
僕は抱いている子猫を落としそうになった。
「どういうこと」
以前「<そら>ちゃんも思春期だから、ガールフレンドでも欲しいんじゃないかって」言ったでしょ。
妻はそう言って口を尖がらせた。
確かに、なにかの弾みでそういった事もあるけれど・・・。
いきなり連れてこられても心の準備が出来ていない。
「<そら>ちゃんも一人だと寂しいわよ。きっと」
洋子さんが妻を援護。
「いつも噛みつかれていて痛がっているでしょ。遊び相手がいれば<そら>もあなたに噛みついたりしないと思うわ」
「<そら>ちゃんの子供がいっぱいできたら楽しいじゃない」
自分たちに子供ができないのをいつも僕のせいにしているので、ついこんな言葉が出てくるのだろう。(確かに、毎日夜遅く帰ってきて疲れて寝てしまうし、休日も疲れをとるためダラダラしているだけで、肝心の事は手抜きしている)
二人の口撃がやまない。
僕を悪者にしている。
どうしてもこの子猫を我が家で飼わせる気だ。
結局、相手をするのに疲れて黙った。
(いつものパターンだ)
頭の中には「確かに子猫は可愛い」「<そら>も友達(恋人?)がいれば楽しいだろう」「我が家に子供はいない(原因は僕にあるのか)」
そんな思いが頭の中をグルグルと駆け巡った。
しばらくして、洋子さんはいろいろとおしゃべりをして帰っていった。 子猫はうちに預けるといった。・・・おそらく取りに来る気はないだろう。
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