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気の実感ー合気道の不思議な体験

合気道をやっていて「気」を体験したことがある人は、どのくらいいるだろうか?

私は2度ある。
そのうちの1回目について書いてみる。

それは合気道を初めて2,3ヶ月目のことだった。
まず、何故合気道を始めたのかについて説明する。

1.今から半世紀近く前、大学を卒業して社会人になった

(1)当時は高度経済成長の真っ盛りであり、企業はただ拡大成長に邁進し、公害や他国の利害などの問題は二の次だった。

高度経済成長期

私もそんなとき大企業に入った。
といっても性格上強引な仕事は向いていないので、比較的大人しい社風と言われていた電機メーカーに入った。

(2)しかしそこでやっていることは他の企業と同じく他人の迷惑を顧みない強引な仕事のやり方だった。心に添わない仕事の仕方だった。                                             お客さんから「この間と話が違う」「あなたを信頼していたのに裏切られた」と責められることもあった。 
価格の設定は私が決めるのではなく会社の幹部が決めていた。           お客さんとの打ち合わせはそのための情報を収集にすぎなかった。
それでも会社の命令でお客さんに価格や仕様を変えたことの説明に行かなければならなかった。
時にはお客さんの会社まで行ったが、中に入れなくてそのまま会社に戻った事もあった。
当然、上司は「何をやっている」と怒った。

(3)毎日胃が痛くなり、会社に行くのも嫌になった。     
といっても半世紀前は転職という選択肢はなかった。
会社に入ることは、戦前の国家に奉仕すると同じように、企業に一生奉仕するといった考えが一般的だった。

友人の中には、そんな会社の風潮に嫌気が差し会社を辞めた者もいた。  彼らは学校の先生になったり、医学部に再入学したり、公務員となった。           他の会社に転職出来た者は殆どいなかった。

2.私は我慢して働いていたが、入社3年目で体を壊した。

体調不良

(1)月に一度は胃痙攣を起こし、食べたものを吐き出し、その後猛烈な頭痛に襲われた。
そして食べられる物も徐々に変わってきた。  
まず肉類が食べられなくなった。
次に中華料理などの脂っこいものがダメになり、やがて通常のご飯や魚も食べられなくなった。
そして最後には生野菜と水と玄米しか食べられなくなった。
身長170センチで体重は50㎏を割っていた。おそらく40㎏を少し超えたぐらいではなかったかと思う。

痩せ細る

(2)ストレスが原因だろうと思って、休日にはプールに行ったり、運動したり、時には山登りもして、体を動かしストレスを発散しようとした。
そのときは良くなったが、会社に行き出すとまた体調が悪くなった。
なんとか治そうと、色々な病院を訪ねたがどこも悪くなかった。

母は心配して色んな健康法を教えてくれたり、健康法の先生のところに連れて行ってくれたが、良くなる事はなかった。

3.あるとき本屋で合気道の本を立ち読みしていたとき、「合気道は身体にいい」という文言が目に入った。


(1)すぐに家の近くの合気道の道場に入門した。
といっても体の状態が良くないので、他の人と同じようには出来なかった。
年配の女性に倒されてもすぐに起き上がれずに、ゆっくりと息を吐きながら、畳に手をついて、次に体を起こし、しゃがんだ姿勢からゆっくりと立ち上がった。
皆さんの迷惑になると思い、道場の隅っこでそんな事をしていた。

合気道入門

(2)3ヶ月が過ぎた頃、少し体も慣れてきたとき、いつものように年配の女性に相手をしてもらっていた。
多分一教という技だと思う。
これは相手が腕をおおきく回し、相手の腕を掴んだ自分が前方に崩されるという技なのだが、相手が腕を回してきたとき、相手の手から僕の手に何か<温かいモノ>が伝わってきた。
その<温かいモノ>は体の中、おそらく細胞の中に入り込み、細胞を活性化するような心地良さを与えてくれた。
とても不思議な初めての感覚だった。
おそらく相手の<気>が僕の体の中に流れ込んで来たのではないかと思う。
それからはその感覚を求めて稽古をするようになった。

気の流れ

(3)すると体は以前のように食べたものを吐き出したりする事もなく、少しずつ良くなってくるのがわかった。
そして食べ物も徐々に魚や肉も食べられるようになり、多分1年くらいで、元の普通の生活に戻れた。

元気になる

そして会社を辞めた。
気持ちがすっきりした。
私が会社を辞めたとき、何人もの社員が会社を去った。

(4)体調を崩したのは、心に添わない事をやっているのを、体が拒否していたのだと今は思っている。
そして体が生命の危機を迎えたとき、人の根源である<気>というモノが実感できたのではないかと考えている。


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