見出し画像

模写の風景 画家の心 第28回「ポール・セザンヌ ジュールダンの小屋 1906年作」

 ついにというか、やっとというか、セザンヌの絵を模写する心の準備ができた。ご存知のようにセザンヌは近代絵画の扉を開いた偉大な画家として知られている。


 この絵はセザンヌが亡くなる直前に描かれたもので、未完のまま残された。それを筆者が大胆にも、不遜にも、怖れ多くもこの絵を模写し色を重ねてみた。参考にしたのは、同じ年に描かれた他の作品のタッチを真似た。

 あの世にいるセザンヌは、「オレの絵になんてことをしてくれたのだ!」、と怒るだろうか。それとも「これはオレのじゃねえ」と一蹴するだけだろうか。
 いやきっとニコニコしながら、「へたくそだが、これもありか」と笑ってくれているような気がする。

 銀行家の長男として生まれたセザンヌは、当然のごとく家を継ぐため法学部へ進学したが、子どものころより親しんでいた画家になることを夢見、パリに行くが、当時流行の兆しがあった印象派の若手からも散々に貶され、傷心の末故郷へ戻る。

 普通なら親父の後を継ぎ銀行家になるのだろうが、父親が亡くなったこともあり、財産を受け継いだセザンヌは隠遁者の如く絵を描き続ける。

 そして、隠棲すること30数年、56歳になっとき画商のアンブロワーズに見いだされ、初めて注目を浴びる。それから11年後、エクスの村をいつもの様にスケッチに出かけたとき、運悪く雨に打たれカゼをひく。それをこじらせ肺炎になり67歳であっけなく亡くなった。ただただご冥福を祈るばかり。合掌。

 翌年パリで大回顧展が開催され、画壇に大衝撃を与える。世の中がセザンヌの作風に追いついてきたのだ。その中に、ピカソやブラック、マティスがいた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?