許しがたいもの

奈良スターミュージックかDX伏見に乗っていた時のお話。

普段沸点が高い私が珍しくムカッとして、舞台の上でお客さんに担架を切ったことが1度だけあります。

ある大御所姐さんのコアなファンが1人いたのだが、この人はたぶん私が嫌いだったんだろう。

まぁね、人なんて好き嫌いあるのは当たり前のことで、それに関してはどうとも思わないんですけどね…。

彼は私の舞台が始まった直後から、ずっと客席で
「ひっこめ」
「出るな」
「帰れ」
と罵倒を繰り返しておりました。

最初はね、ほっておいたんですよ。

まぁほかのお客さんは迷惑そうでしたが…。

ただ、ベッドの時もず~~~~っとで…。

ここいらでイラっとは来ていたけど、舞台の上であり、自分自身が舞台人である意識もあるので、舞台上で言い返すのはいけないと思い、だいぶこらえていたわけです。


が、ポラの時。

ポラをもって「よろしくおねがいします~」と頭を下げた瞬間、

また「かえれ~」と言われたので、この言葉にカチンときた。

で、頭を挙げるや否や
私は
「今なんて言った?」

とドスを聞いた声で答えた。

そうすると、彼はわーわーわめき始めた。

そこで、私は盆にあぐらをかいて座り、彼をにらみつけ、説教しはじめた。

「あんたがどう思おうが、だれのファンだろうが関係ない。

今の時間は私の舞台の時間だ。

それをあんたは壊したわけだ。

これに関してどう思う?

誰のファンかは知らないが、その姐さんもあんたの軽率な行為で恥をかく羽目になった。

ファンと踊り子は背中合わせ。

踊り子の品格はファンで決まるもだが、あんたのその行為はなんだ?

それはあんたの気に入ってる姐さんもそういう人間だってことか?

ファンの言動は、踊り子に反映してくるんだよ。

わかってんのか?

その踊り子を本当に思うなら、その姐さんを困らすような辱めるような行為はするな。

観たくないなら、ロビーに行けばいい。

それだけの事なんだから、分かったら出ていけ!」


そうすると、ビビったのか彼は「覚えてろよ!」という捨て台詞を吐いて、ロビーに出て行った。


これだけ本気で説教した後だ…。

彼が出て行ったあと、客席は水を打った静けさだったが、次第に拍手が始まった。

そのあと、何人かのお客さんが「よく言った」と声をかけてくれた。



ポラはその後滞りなく終わり、私は舞台を終えた後、

舞台をぶち壊してくれた男が推していた姐さんのところに走っていった。


そこで、姐さんを呼びつけ

「姐さん、先ほどこのようなことがありました。

姐さんの品位を損なう行為なので、私は舞台上で彼に説教しました。

このことは姐さんにも知ってほしかったので言います。

もし、そのファンの方と親しいのであれば、少しきちんと言ったほうがいいと思いますよ。

放置しておけば、姐さんそのもの品格に傷をつけるものなので。

人の舞台を壊すのはどんなことをしてもやっていい事とは思えなかったので。

私なら、自分のファンの人にそういう事する人いたら悲しい気持ちになるので。

文句言ってすいません。」

後にも先にも大御所の姐さんに文句を言ったのは、後にも先にもこれ1回きりです。


彼の行動がどうしても許せなかったのは、自分の舞台を壊されたこともあるけど、それ以上に、自分が慕っている姐さんの品格を傷つけたのは、どうにもこうにも許せなかったんですよね。

元ストリッパー&振付師の観月真子こと藤倉瑞城です。