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Wished list #5 MIRYCOT 大岡実希

花と暮らす方たちに、大切にしているモノのエピソードを綴っていただく「Wished list
第5回のライターは、人の手で彫られているとは思えないほど・・・繊細で精密なスタンプを制作されている、MIRYCOT大岡 実希さんです。

大切にしているもの何ですか?
そう問われて私は何を思ったのか。

物?モノ?何があるだろう・・・
これ!と声を大にして自信を持って言えるもの。
好きなものではなく、大切なもの。
この「大切」の言葉に一瞬身構えてしまい、暫く思い考えてみる。
普段、感覚人間で生きている私にとって、改めて言葉にしたり具体的に表現したりすることは大仕事。

いつも作業している椅子に座り机の上に紙とペンを。
部屋を見回しながら大切な「物」を1つずつ書き出してみました。

新婚の時、友人の家具屋さんに作ってもらったチェスト、見様見真似で、夫婦で作ったテレビボード、少しずつ増えていく大好きな作家さんの達のアクセサリー、職人さんが作られた手仕事の道具、など。

こうして書き出した物には「誰かが作った」と枕詞のように誰かの顔が見えてきて・・・大好きな人や憧れの人など、作り手を感じられるものが好きだし、大切にしたい物なのだと思いました。

さて次に「花のある暮らしの中で大切にしているもの」を考えてみました。
私は草花のモチーフを描いて、それらをゴム版に写し1つずつ手彫りをしてスタンプを作っています。

なぜ草花・植物のモチーフが多いのかは純粋に「好きだから!」なのですが、もう少し深く思いを巡らせてみました。
すると草花を感じ愛でている時、やはりここでも誰かを思う記憶があると気づくのです。

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例えば、私の基礎を形成したような祖母と遊んだ記憶。
幼少期に裏の畑に咲く「なずな」をペンペン草と呼び、蓮華の蜜の吸い方や花冠の作り方を教わりました。
この畑に咲く向日葵は、多感な時期を一緒に生きた愛犬によく似合っていて、大輪の花をみると愛犬の笑顔と重なります。
今も畑や庭には両親が育てている野菜や草花が季節ごとに芽を出し、花を付け、実るのですが、春にはミモザやスモークツリーが咲き、これを喜んでくれる顔が見たくて友人に届けにいくのが私の毎年の楽しみになっています。
また秋には金木犀が香り出すと、幼馴染みに「今年も香ってきたね!元気?」と、どちらからともなく連絡を取ったりします。

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そうしたその時々の香りや温度、空気にいたるまでを感じ思いながら製作に没頭している時は、時空を越え、記憶とつながる誰かに会いに行っているような感覚にさえなります。
この感覚はとても幸せに満ちています。
そして私の作るスタンプの白黒の世界の中に、色とりどりの鮮やかな記憶の花の世界があることの喜びを感じるのです。

私にとって「花のある暮らし」は季節のリズムにのって楽しみを探しながら生活を送ることで、その暮らしの中で大切なものは、「誰かとの記憶や思い」でした。
願わくは、私の作った「物」が、誰かの記憶に残る「モノ」をささやかにでも紡ぐお手伝いができたら・・・。
こんなご時世、身近な誰かに手紙でもかいてみませんか?そこには気持ちを乗せるスタンプをポンっと。

次回はこの方に。

では次にリレーバトンを受け取ってくださる方をご紹介します。
陶土でアクセサリーを作っておられるkomeriさんです。
初めて作品を見たとき陶土とは思えない、透き通るような柔らかい雰囲気や、身に付けていると嬉しくて心が踊る作品に心を奪われました。
komeriさんの大切なものは何でしょう?お話を聞けるのがとても楽しみです!

writer
大岡実希 @mirycot
MIRYCOT店主 (「ミリュコット」と読みます。私と主人と愛犬の名前を合わせた造語)

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服飾系の学校を卒業後、趣味で布雑貨を製作販売していたところ、2008年に消しゴムはんこに出会う。その後素材をゴム版スタンプに変え2014年からMIRYCOTと屋号を変え、主にイベント出展や企画展への出展参加を活動の中心としながら、自身で企画展やイベントの開催もしている。今年は台湾での個展も経験した。


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