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Wished list #4 MEDERU 池上祐子

花と暮らす方たちに、大切にしているモノのエピソードを綴っていただく「Wished list
第4回のライターは、革細工の繊細な花を生み出すアーティスト、MEDERU池上 祐子さんです。

15年ほど前から始めた革のお花でアクセサリーを制作している池上祐子と申します。
「大切にしているものは?」と聞かれて浮かぶのは、私が初めて革で作った『白詰草』です。

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薄く漉いた牛革を一枚ずつ鋏で切り出し、染料で染め、柔らかなカーブを付け一輪の花にしてブローチやピアスなどのアクセサリーにしていく・・・
そんな革のお花の作り方を教えてくれたのは、私の母です。母は手先が器用で、様々な手芸を経た末に、他の何よりも革のお花にのめり込みました。

私が住んでいた頃の実家は、母が作った薔薇や水仙などの実在する花や、背が高くてこの世には存在しない空想上のちょっと毒々しい位(笑)の革のお花が所狭しと溢れていました。
当時は私自身はそれほど興味があったわけではありませんでしたが、私が実家を離れてからも時々作ってくれたブローチを装いのアクセントに胸元やバッグの持ち手につけていると、「これは何で出来ているの?」という質問と共に職場の方や知人から褒めてもらうことが多々ありました。
母が革を染めて作っていると伝えると驚かれ、さらに褒めてもらえました。
そのたびに母に報告していたのですが、本当に嬉しそうにしてくれて、その喜ぶ母を見て、私も少しずつ革のお花の世界に惹かれていったという感じでした。

幼い頃、草原で白詰草を摘んで、花冠の作り方をお母様から教えてもらった思い出のある方もいらっしゃると思いますが、私の白詰草の思い出は、自営業でお休みもあまりなく働きづめだった母が身体を悪くして無理が出来なくなってからの、そして私もずいぶん大人になってからのものです。

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二人で材料を買いに行ったり、ちいさなテーブルに向かい合って、あーでもないこーでもない、こうした方がいいんじゃない?ときゃあきゃあ言いながら作った、楽しく嬉しかった気持ちが今でも色褪せることなく思い出されます。

その後はほぼ独学でいろいろな花を作ってきましたが、白詰草を手がけるときは、作るたびに初めて完成した時の新鮮な気持ちが蘇る、特別な思い入れがある花です。

今では何百本・・・もしかしたら千本を超えるかもしれない数を作った革の白詰草と四つ葉のクローバー。
何年も前に購入してくれた方から「時を経て少しずつ色が褪せていった白詰草をずっと飾っています」とお聞きすると、 母と私が作ってきた革のお花が、手にしてくださった方の「大切にしているもの」のひとつになってくれているのかな、と暖かな気持ちになります。

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母が制作のメインにしていた花瓶に活けるような大きな作品は私には作れないけど、この小さな白詰草をはじめ身に着けるアクセサリーを革で作っていることを母はとても喜んでくれているので、これからも作り続ける努力をしたいと思っています。

「大切にしているものは?」という問いに『白詰草』と最初に書きましたが、もしかしたら母に教えてもらった時の記憶も含めての「大切にしているもの」なのかも知れません。

誰かが喜んでくれる、それが原動力となり、また誰かの大切なものを生み出す。
これからもそういう作り手であれたらと思います。

なんて。
本当の私は、いつも手が痛いだの腰が痛いだのブツブツ言ってる、ちっとも前向きじゃない人なんですけど、今回こんな素敵なバトンをいただいて、作ることの出来る自分の今の環境を改めて振り返り、有難く思っているところです。

バトンをくれた、心から尊敬しているchielさん。
このような機会をありがとうございました。

次回はこの方に。

私がお渡しさせていただくのは、緻密で繊細で、私が絶対持ち得ていない素敵なセンスと技術を持つ、手彫りのゴム版はんこ作家mirycotさんこと、大岡実希さんです。
数年前に私のロゴスタンプを制作していただき、今でも愛用させていただいています。

いつかその制作風景も間近で拝見したいと密かに願っています。
それでは、mirycotさん、どうぞ宜しくお願いいたします。

writer
池上祐子 @hanaomederu

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2005年より「MEDERU」という名前で、自宅にて主にアーティフィシャルフラワーやドライフラワーを使用したフラワーアレンジのレッスンを不定期で行っています。
ほぼ同時期から、革で作ったお花でアクセサリー製作を始め、ハンドメイドイベントや企画展に参加しています。
言われなければ革で出来ているとは思えないほどの薄い小さな革の魅力を少しでも伝えていければと思いながら活動しています。

いつもサポートありがとうございます。 いただいたサポートは、花代や、取材時の交通費として使わせていただきます。