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寒冷療法 ~もう一度「アイシング」を考えてみよう~

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皆さんこんにちは。ライターのハナウエです!


前回までの電流療法深堀りシリーズ。

内容が内容だけに、かなりマニアックな話になってしまいました…w

まだ読んでいない方は是非!




■はじめに

さて、今回は寒冷療法です。

巷では

「アイシングなんていらない!」
「アイシングを行うと回復力が遅くなる!」
「受傷初期から温めたほうが早く治る!」

などなど、色々言われることが多いアイシング。

でも、現場では結構使われているアイシング。


本当に不要なのでしょうか?

本当に意味のないものなのでしょうか?


今回の記事では、知ったつもりになっているけど、意外と理解していなかった寒冷療法について、整理整頓してみましょう。

実際に不要なのかどうなのか?

また、なぜそのような論争が起こってしまうのか?についても触れたいと思います。個人的にはその答えはすでに出ています。


記事の最後にそれについても触れたいと思います。


■アンケート結果

今回、記事を書く前にTwitterでアイシングについてのアンケートを取ってみました。アンケートにご協力頂いた皆様、ありがとうございます!!!


多くの方が、急性外傷のみに使うという回答でした。一方で、慢性症状に使うと答えた人はごく少数でした。(というか76人中1人?w)

どちらも使うという人もかなり多いですね。


約半数の方が疼痛軽減での使用という回答。腫脹軽減も多いですね。

コメントくださいを作っても、相変わらず誰もコメントしてくれませんw


僕のフォロワーさんはほとんど柔道整復師か鍼灸師の先生方だと思いますので、必要という回答が多いです。しかし、どちらとも言えない方はおそらく効果があるんだか無いんだか判断しづらいといった印象でしょうか?


アンケート結果から言うと

①急性外傷で多くの方が使っている
②慢性症状でも使用している人もいる
③疼痛軽減で使用している人が多い
④腫脹軽減もその次に多い
⑤アイシングは必要と感じる人が多い
⑥ちょっと迷っている層も結構いる

こんなイメージが見えてきました。

ということで

1.本当に急性外傷に役立つのか?
2.慢性症状ではどのような効果を狙っているのか?
3.疼痛軽減のメカニズムは?
4.腫脹軽減は本当に出来ているのか?
5.アイシングは結局いるのか?いらないのか?

ということをこの記事で考察していきましょう。



■手技療法ではできない領域

僕は個人的にこう思うのです。

手技療法などを用いて、人の手である程度の熱を発生させることは出来ると思います。しかし、人の手で温度を下げるということは、基本的にはできませんよね?

こういった、人の手で出来ないことを、道具(狭義の物理療法)を利用して行うのです。

手技療法で局所温度を10℃以下低下させる方法はありますか?

※息の根を止めるとか言わないでくださいね(汗)

寒冷療法は、氷があれば行うことができます。


もちろん、柔道整復師の先生方は冷罨法を行わなければなりませんから、寒冷療法はなくてはならない手法ですよね。


■寒冷療法とは

寒冷療法とは、温度の低い液体、固体、気体を用いて寒冷曝露(寒さにさらされること)させる事により組織温度を低下させ、炎症の沈静化神経筋活動を促す生体反応を目的として実施する物理療法のことです。


寒冷療法とは英語ではクライオセラピー(Cryotherapy)といいます。

Cryoとは低温、冷凍という意味です。

低温の熱伝導を用いた物理療法のことを指します。


ん?


低温なのに「熱」伝導とはどういうことか?

そう疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。


熱伝導(ねつでんどう、英語: thermal conduction)は、固体または静止している流体の内部において高温側から低温側へ熱が伝わる伝熱現象[1]。
熱力学の第二法則により熱は必ず高温側から低温側に向かう[1]。

引用:Wiki


はい。寒冷療法の場合は 高温=人体 から 低温=氷などへ熱が伝わる現象ということです。ということは、熱を伝えるというよりも、熱を奪うというイメージのほうがわかりやすいかもしれません。

次の分類の項目で更に理解を深めていきましょう。



■分類

寒冷療法は「伝導冷却」「対流冷却」「気化冷却」の3つに分類されます。

①伝導冷却法
氷や保冷剤などで直接患部を冷却する方法

・アイスパック
・アイスマッサージ
・持続型冷却装置

②対流冷却法
空気や水などの移動を利用して冷却する方法

・アイスバス
・極低温療法

③気化冷却法
気化熱によって冷却する方法

・コールドスプレー

https://www.youtube.com/watch?v=okI-ENvwR_I&t=11s


さて、これでどのように熱が冷却されていくのか?が理解できましたかね!?



■冷却グッズ

さて、どのように冷却されていくのか?原理が理解できたところで、様々な冷却グッズを見ていきましょう!

そのまま買い物が出来るように、なるべくトワテックさんのリンクを貼っておきます!※花上には1円も入ってこないのでご安心をw


※ここではグッズの紹介だけ行います。有料記事部分では、どのような際に活用するべきか?を考察していきます!


★トワテック アイス&ウォームバッグ

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水と氷を入れればアイスバッグ(氷のう)として、お湯を入れればウォームバッグとしても使用可能です。

あれ?ということは、温熱でも使えるじゃないですか!なんと便利な!


★フレキシコールド

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中身がゲル状なので、どんな凹凸にもフィット!
冷却効果が約15~20分持続するアイスパックです。
冷蔵庫に入れれば1 時間で使用可能。
マイナス20度まで固まらず、繰り返し何度も使用できます。


★NICEICE ナイスアイス

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転がしながら、冷却! 1台で3役 「アイシング・マッサージ・圧迫」を同時にできます。本体を冷凍庫で1時間冷却することで、最大60分間冷たい状態を保ちます。



★スーパーコールド 500ml

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◇痛めた部位から約20cm離し5秒間程度スプレー。
◇大きな噴射ボタンで素早い対応が可能。
◇部位を正確に捉えるためノズルを長くし、冷却力を約20%アップ。
◇ガス抜きキャップ採用。


★フレキシラップ

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アイスバッグの固定などにご利用ください。



★Mueller エラスチックバンデージ

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●伸縮性の包帯です。
●アイスバッグ、コールドパックの固定、肉離れのサポートと数多くの分野で利用可能です。
●洗濯が可能です。


★トワテック 自着性バンテージ

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伸縮性があるハンドカットタイプのテープです。テープ同士がくっつき、粘着剤は肌に付かない仕様です。巻き直しができるため、圧迫などの微調整がしやすいです。


★クリッカー

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容器の中に食塩と氷片を混入してよく振ると
両端が約マイナス7度にまで下がり、寒冷療法を短時間のうちに行うことが可能です。
小範囲の外傷・・疼痛・浮腫を治療するのに適しているアイスマッサージを行う際に使用します。

※クリッカーについてはネット販売はあまりありませんが、ダイヤ工業さんや、酒井医療さんや日本メディックスさんでも取り扱いはあると思います。クリッカーをご希望の方はそちらへお問い合わせください!


★アイシングシート Lサイズ

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高含水体(水分約70%)により冷却効果が長く持続。
スポーツ後の冷却に最適。
粘着性が強く生地もよく伸び、どの部位にも簡単に密着。
皮膚に優しく、心地良い使用感。



■100均でも結構使えるものが多い

なんだかんだで100円均一でもアイシング系グッズは豊富にあります。ちょっと救急箱に入れておくと便利かも?

このときは調査だけ~…と思ったのですが、院内で使う製氷皿を買って帰りました。というのも、現在使用しているアイシンググッズが、もう廃盤商品になっていたので…

それがこちらの商品。

トゥルー・アイスと言う商品名だったようですが、もう廃盤なんですよねぇ…

まだ使えるのですが、結構年季が入っているので、代替品を探しているところです。

ちなみに、購入した製氷皿で作った氷がこれ。

ちょっと大きめな氷が作りたかったのでこちらを購入しました。

正直、院内で使うのは患者さんへのアイシング指導の際に使うぐらいなので、あまり出番はありません。

院内で使用する際にはクリッカーを使用することが圧倒的に多いです。

使用頻度はそんなに多くはありませんけどね(汗)


■冷却グッズまとめ

様々な冷却グッズを見てきました。比較的購入しやすいものが多いですよね?ということは、物理療法で寒冷療法は、割と導入しやすい部類のエネルギー療法となります。

しっかりと効果や目的を理解して使えば、かなりコスパが良いエネルギーだと思います。

次に、機器を使用した寒冷療法を見ていきましょう。


■冷却系物理療法機器

正直に申し上げますと、冷却系の物理療法機器はそんなに多くありません。また、昔あったのに廃盤となってしまった商品も多々あります。

まずは現行販売品からご紹介します。


★アイシングプロ

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Ice 【冷却】
アイシングプロは、水道水で5℃~13℃のアイシングが可能です。 タイマー設定で任意の治療時間が設定できます。

Compression【密着・圧迫】
アイシングプロは、内蔵された空気室でカフが患部に密着し、適度な圧迫が行えます。

Elevation【挙上】
アイシングプロは、専用のカフにより水漏れが発生しません。 患部を心臓より高い位置に挙上することが容易に行えます。

Stabilization【固定】
アイシングプロは、カフ内に空気を入れることでカフを患部に密着・固定します。

特徴的なのは水のみで使用可能なところ。また、圧迫を行いながらのアイシングのため、腫脹軽減にも効果が高い商品だと思います。


★ドクターアクティブ コールドパッド

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冷却ゲルパックとポンプ式で加圧するサポーターの組み合わせにより、負傷した関節に“冷却”と“加圧”の両方を加えることができます。術後やスポーツ外傷での痛み、炎症などの軽減に役立ちます

先程の商品は自動で加圧→除圧を行いますが、こちらは手動で行う簡易的なタイプ。また、ゲルパックを使用するので2時間冷却で30~40分の使用までとなります。


★ポーラケア コディアック

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場所をとらず、簡単な準備ですぐに起動可能。
静音性・耐久性に優れた最新スペックモデルです。
術後のクライオセラピーからスポーツ現場におけるRICE処置まで、幅広い場面で使用できます。

こちらはバッテリー駆動のアイシングシステム。ポータブルで持ち運びできる利便性があります。氷を使用するタイプです。


★アイシングシステムCE4000

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●前機種(CF3000)と比べ小型化、軽量化を実現。(約50%小型化、約40%軽量化)
●0℃~13℃まで冷却温度が設定可能で設定温度をキープ。
●患部への装着が簡単なCE4000用ユニバーサルパッドを開発。
●結露対策として断熱材を使用したCE4000用ユニバーサルパッドや径を太くして断熱効果を高めた専用ホースを採用。
●治療経過時間を知らせるタイマー機能を搭載。
●膝関節へのフィット性を高めるエアーフィットユニット(別売品)で効果的な冷却を実現。

専用の冷却液を機器の中が循環し、放熱を繰り返しながら使用するタイプです。この機器の面白いところは主な用途です。


冷却によるリウマチ、関節炎、神経痛の痛みの緩解、外傷による出血、腫脹、疼痛の抑制

はい。このような用途がHPに記載されています。

と、言うことは…?急性外傷のみに寒冷療法を利用しているというわけでは無いということはわかりますよね?


★GAME READY GRPRO2.1

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◆冷却温度・圧迫力が調整可能
GAME READYは、氷水を使用することで冷却温度[1.7度~10度]の調整と、ラップ(カフ)圧力[圧力無・弱・中・強]の調整が可能です。さらに作動時間をコントロールすることで、持続的に快適に使用することができます。

こちらも氷水を使用したモデルになります。見た目がかっこいいですね。笑


★クライオシャワー CS-2000

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液体窒素を利用して-150℃~-120℃※の超低温になったブース内に2~3分間入って全身を冷やすために使います。Whole Body Cryotherapy(WBC)は、世界のトップアスリートで活用されており、プロバスケットボール選手やサッカーナショナルチーム選手、ラグビーナショナルチーム選手をはじめ色々な競技でリカバリーに取り入れられています。近年では、日本でもプロ・アマのトップ選手のリカバリーに使われています。※冷気吹き出し口の温度です。環境や運転時間によって、冷気の温度は変わります。

コレを載せる?かどうか迷いましたが、深夜のリアル物理療法マガジンの裏番長が載せろということでお話を頂きましたので、載せます。笑

まぁ、この手のはなかなか治療院に置くのは難しいのではないかと…笑


■ここからが本題です

さて、寒冷療法の概要と、どのようなアイテムがあるのか?はわかりました。ここからは早速、寒冷療法について、更に深く学んでいきましょう。

大まかな流れは下記の通りです。

★前半
1.生体変化・反応
2.禁忌
3.アイシング不要論に対する考察


★後半
4.種類と方法
5.現場での実際
6.アイシング不要論に対する考察②

※書いていたら思いの外ボリュームが増えてしまったので…長くても読みづらいので2回に分けて公開します。


■この記事を読むべき人

✔なんとなくでアイシングを行っている
✔生体反応などは考えたこともない
✔アイシングは効果がないからやらないと決めつけている
✔より効果を高める方法を知りたい
✔痛みを抑える効果以外は考えたこともない

こんな方は、是非この記事を読んでみてください!


さぁ!しっかりと学びましょう!



1.生体変化・反応

大まかな寒冷療法の効果としては

①温度の低下
②血管収縮
③代謝活動の低下
④神経筋活動の低下

となります。

あれ?痛みは?腫れは?

コレについては、上記内容が効果として出ることにより、2次的な反応で起こるだけと理解してください。

よく、効果だけにフォーカスしてしまう方が多いのですが、結果が出るか出ないか?はやってみなければわかりません。にもかかわらず、

アイシング=痛みを抑える、腫れが治まる

という認識でいると、効果が出なかった(結果が出なかった)場合に、「アイシングが悪い」という思考に陥ってしまいます。あくまでも効果「生体変化や反応が出た結果、効果として現れた」という認識でいましょう。これはすべての物理療法のエネルギーに言えることです。


では、1つずつ見ていきましょう。

でもその前に…

■熱の伝わり方

ここはまず、物理学的な話になりますがお付き合いください。

熱は高温部から低温部へ移動するエネルギーです。物体に出入りしてその温度を変化させます。

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例えばお湯と氷の関係。熱は必ず高い方から低い方へ移動する。ということは、お湯を氷にかけると…

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もちろん、氷は溶けますね。

では次に、このような状態をイメージしてみましょう。


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常温のコップにお湯を入れた場合です。この場合は直後はお湯(液体)の温度は沸騰直後であれば100℃ですね。

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数分経過すると、お湯の熱がコップに伝わります。

また、空気中にも熱がドンドン逃げて行きます。お湯よりも温度が低い環境に熱が移動している状態です。

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この時に起きている現象としては

液体(お湯)→固体(カップ)

この熱の移動と

液体(お湯)→気体(空気中)

への熱の移動が行われています。

熱の移動のことを熱伝導といいます。

熱は高温側から低温側へ伝導するといいましたが、熱は物質により伝導速度が異なります。

気体より液体、液体よりは固体の方が伝導しやすくなります。

気体<液体<固体


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更に時間が経過すると、お湯もカップも室温と同じ状況になり、熱の移動が止まります。これを熱平衡といいます。

別のイメージで考えてみましょう。

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ここに、10℃の金属の棒があるとします。その棒に手を当てるとどうなるか?

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高い温度から低い温度へ熱が移動します。

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徐々にこんな形で金属が温まり、体温と同じ温度になったら温度上昇が止まります。※厳密には金属全部があたたまるわけではないので注意

ここまで説明する必要は無いと思いますが、人間は常に血液で体内の熱を運んでいます。

見出しを追加

常に熱の移動が行われているため、かなり冷やさないと手のほうが冷えるということはありえません。

そこで、冒頭に登場した3つの方法で寒冷療法を行っていくのです。

①伝導冷却法
②対流冷却法
③気化冷却法

ここで考えなければならないのが

どれが一番熱のエネルギーを効率よく冷やすことが出来るのか?です。

気体<液体<固体

これが熱伝導の効率で大事になる要素でした。しかし、混同しないように注意しなければなりません。

気体というと、コールドスプレーとイメージしてしまいがちですが、それは違います。冷気で行う冷却法は対流冷却法になります。コールドスプレーはあくまでも「気化」なので、勘違いしないように気をつけてください。


この先は「3.種類と方法」で記載します!

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