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言葉を収集する読書

砂浜の上をキラキラの欠片を拾って歩く。

ちょっとした言葉の使い方、表現がステキだなと思ったり、自分の中にある感情にピッタリくる感じだったり、物語自体を楽しむだけでなく、そんな言葉を拾い集めて味わう。

なんの根拠もノルマもないのだけれど、月30冊というターゲットを掲げている。
2月は28日しかないので、ちょっと急がなきゃと慌てていたが、気付けば早々にノルマを達成していた。

そんな気楽さの中でのゆるゆる読書中の一冊。
『やわらかい砂のうえ』

読み始めて数ページ目に出てきた何気ない一文に心をつかまれてしまった。

生きていくってずいぶんせわしない。

『せわしない』の言い回しが、なんともドンピシャに突き刺さって、この言葉をコレクションしたいと思った。
ゆるゆる読書をしているご身分のくせに、「せわしないなぁ」としみじみ呟いてしまった。しっくりと、しみわたってくる心地よさに包まれた。

今の自分の感情にピッタリくる言葉に出合うと安心する。
どこかで安心できる言葉をいつも探しているのかもしれない。

主人公はちょっとめんどくさい性格だ。
とてもまじめで、「してはいけないこと」とか「わたしはこうだ」とか決め過ぎてしまっている。
自信がなくて、自分の評価を他人に委ねてしまっている。そして、それにNOと言っていて、でもNOと言えなくて、めんどくささをこじらせている。

「ほんとうのわたし」が何かは分からないけれど、人との出会いや経験の中で、「わたし」のままで「わたし」というものを受け入れられるようになる。それは、「わたし以外」も受け入れられるようになることでもある。

あんたが自分の思う『正しい生き方』を実践するのは勝手やけどな。それを盾に他人を裁くのはどうなん。ちょっと傲慢なんとちゃう?

「正しい人」だから友だちでいる。それでも良い。
たとえ正しい人ではなくても、友だちでいたいと思う。そう思うのならばそれでいい。
すべてが好きとか受け入れられるわけではなくても、『まあ、それがその人なんだな』と思う。それだけのことだ。

いろんな経験を通して成長していく主人公が、「自信をもつ」ということをこう理解する。

わたしがわたしのまま世界と対峙する力を持つ

自分に自信をもつと共に、友だちとのかかわりも変っていく。

信頼関係のもと、お互いが自分の足で立ち、それぞれが「そうしたい」と思うことをする。

誰かと手を繋いでいたら転んでしまう時だってあるんだと知った。
ためらいなく繋いだ手を離せるように、隣を歩いている人を信じる。自分の足でしっかり立つ。
そのことを、忘れないでいよう。

なんとなく、自分に言い聞かせるような言葉を収集しながら読み終えた本。

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