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映画『スーパーノヴァ』死生観と美意識

映画『スーパーノヴァ』をオンライン試写しました。

コリン・ファース × スタンリー・トゥッチ
映画界が誇る演技派2人が放つ〈圧巻の愛〉

ピアニストのサム(コリン・ファース:1960年9月10日生まれ)と作家のタスカー(スタンリー・トゥッチ:1960年11月11日生まれ)が演じるカップルの終幕を描いた作品です。

サムとタスカーは20年来のパートナーで、家族や友人にも恵まれ、幸せな人生を歩んできました。ところが、タスカーが不治の病であることがわかります。最後の最後までともに生きることを願うサムと、愛しているからこそ終わりを望むタスカー。終幕のその瞬間は描かれませんが、それぞれが相手を思う2人の物語が展開します。

2人の名優が還暦を迎える頃に撮影された作品で、華やかな展開もないのですが、「圧倒的に美しいものを見た!!」と感じました。

スーパーノヴァとは?

英語のSupernovaとは、超新星のこと。それまで非常に暗かった恒星が突如として大爆発をおこし、数日間に100万倍もの明るさを増す現象のこと。星の死と考えられていますが、大規模な爆発によって、生命の源となるさまざまな元素が恒星間空間にばらまかれ、そこから次の世代の新しい星が誕生し、数千万年後、ふたたび超新星となって爆発を繰り返します。

スーパーノヴァは、タスカーの死生観や美意識を象徴する言葉であり、この作品の美しさにつながっているようです。

同性愛カップルの描き方

同性愛カップルは、さまざまな映画で描かれてきました。

たとえば、『ボヘミラン・ラプソディ』(2018年)、『イヴ・サンローラン(ピエール・ニネ主演)』(2014年)、『SAINT LAURENT/サンローラン(ギャスパー・ウリエル主演)』(2014年)など。

これらの映画では、ミュージシャンのフレディー・マーキュリー(1946年9月5日生まれ)、ファッションデザイナーのイヴ・サンローラン(1936年8月1日生まれ)を、70年代のニューヨークのクラブカルチャーやゲイコミュニティへと誘う、魅惑的な男女が登場します。それらは、創作の原動力となっていた面もあるようですが、生活や心身が荒む原因にもなっていたようです。

しかし、本作にはそういった人物は登場しません。長年連れ添う中で、サムとタスカーにも、諍いや駆け引きなどもあったのかもしれませんが、穏やかな関係が描かれています。家族や友人たちも、同性愛カップルをごく自然に受け入れています。

同性愛カップルと彼らを取り巻く穏やかな人間関係は、ドキュメンタリー映画『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』(2018年)に、少し似ているかもしれません。

不治の病

映画『ボヘミラン・ラプソディ』には、いくつかフィクションが含まれています。そのひとつが、エイズに関する事柄です。フレディは、1991年11月24日に、エイズによる免疫不全に伴う気管支肺炎で亡くなりました。フィクションが成立しうるのは、感染した時期を特定できないことも一因でしょう。なぜなら、エイズは感染してすぐに発症する病気ではないからです。

医療の進歩にともない、エイズは不治の病ではなくなり、感染リスクについても、周知されるようになりました。本作では、別の病気が不治の病として描かれています。不治の病や生死に関わる描写もかわっていくのだなと感じました。

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映画『スーパーノヴァ』
7月1日(木)
TOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次ロードショー


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