「一畳漫遊」 第一話 一喜一憂GISTの乱④

 手術当日の朝早くに病室の扉が開き、先生が顔を出してくれた。「今日は僕が頑張る日です。眠りから覚めたらもう手術は終わってますからね。それとしつこく言いますが痛みは我慢しないようにしてください。我慢しても早く良くなるわけではないし、痛みには心も体もダメージを受けますからね。それに痛み止めを使うなら早めに使ったほうが効きがいいですからね。尾中さんは我慢しそうだから、術後もしつこく聞きますよ。」「ハイ、ハイ。」

 娘に見送られて手術室へ入った。手術台って狭いのね。私はやせっぽちだからいいけど、おデブさんも大丈夫なのかしら。血圧計をまかれたり、心電図のシールを貼られたりした後、背中から麻酔の細いチューブを入れられた。仰向けになり、マスクを顔に当てられたところまで覚えているけど、そのあとは分からない。気がつくと回復室だったかICUだった忘れたけれど、すでにベッドにいた。ああ、生きてる。背中から入れたチューブから持続的に痛み止めが入ると言っていたけど、本当にあまり痛みは感じない。これは酸素マスクね。点滴も落ちている。あのモニターは私のかしら。ああ体がだるい。あら、お隣のベッドの方も術後ね。なんて観察していたら、居川先生現る。

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 「おっ、目が覚めていますね。無事手術は終わっています。やはり血流が豊富なしこりで、出血しやすかったですが、少量の出血で終わっているので予定通り輸血はありません。胃も十分残っています。痛み、我慢してませんか?」
「だいじょうぶです。」
「今、あまりお話しても分かりにくいでしょうから、いずれ詳しくお話します。お疲れ様、ゆっくり体を休めてください。痛ければボタンを必ず押してくださいね。我慢していいことなんて何もありませんから。それから、娘さんにはちゃんと説明しましたからね。」
「ありがとうございました。」

 なんだかうまくいったみたいね、よかった。それにしても居川先生は何でも説明してくれて隠し事無しっていう感じね。安心だけど、うれしくないことも全部教えてくれたりするんでしょうね。まあ、実際そうなるわけだけど…。

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