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筋弛緩薬の窃盗

 大阪の病院で、筋弛緩薬の窃盗事件があり、その病院の看護師が逮捕されたとのこと。当人は容疑を認めており、騒ぎを起こしたかったと述べているらしい。また、持ち出した後処分したと語っているらしいが、事実をしっかり追及する必要がありそうだ。

 筋弛緩剤のことを私が最初に学んだのは、生理学、生化学、薬理学、解剖学のどれかだと思う。要するに覚えていないのだが、その昔、南米の毒矢に塗られていたクラーレというのが筋弛緩剤発見の最初、とかいうくだりは覚えている。狩猟用に用いられたのだと思うが、対立する部族との争いにもきっと使用されたのだと思う。

 筋繊維に伸びてきている神経の先端から出る物質の刺激で、筋肉が収縮し私たちの体は動いている。クラーレはこの刺激物質と受容体の取り合いをして、筋肉の収縮を阻害してしまうわけだ。筋肉が収縮しないと、当然体が動かなくなるわけだが、忘れていけないのが呼吸。私たちが普段無意識に行っている呼吸は、横隔膜や大胸筋、肋間筋など筋肉の収縮で行われているのですから、クラーレが効果を発揮すれば、だんだん動けなくなるとともに呼吸もできなくなってしまう。しかも意識を取るという作用はないので、意識があるまま窒息しという想像したくない状況になってしまうわけだ。そういえば、そんな毒矢には絶対あたりたくないと、講義中の眠気もさめたことも思い出した。

 全身麻酔下に手術をするときなどは、呼吸をしたり筋肉が急に動いたりしては困ることも多いので筋弛緩薬が使用されるし、人工呼吸管理をしている方にも使用したりする。窃盗の現場はICUですから管理薬として常備されていたのでしょう。筋弛緩薬と言っても種類がありますから、どの薬剤かは分かりませんが、普通に考えて現代社会で人に対して使用するのは医療以外では考えにくいですね。ちなみに、肩こりなどに処方されるものとしての筋弛緩薬もありますがこれは別物。

 そうなってくると件の窃盗犯は何の目的で盗み出したのかをしっかり追及する必要が出てくる。自殺あるいは自殺ほう助目的。他殺。といったことしか思い浮かばないなぁ。単に騒ぎを起こすのに、わざわざ筋弛緩剤を選択したところに闇を感じてしまう。


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