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「行先同じ旅人」によせて。ヒーローズライジング感想

すきなものをすきだといいたいわたしです。

ヒロアカがもともと大好きなんですが、映画2作目「ヒーローズライジング」に刺されてしまったので、幼馴染と、ヒロアカ全体に関連するあたりを中心に、思ったことをわりとそのまま、つらつらと書きました

※ゆえに映画と25巻までのネタバレがあります
※幼馴染のわかんない感じがすきです 考察したいのでしますが、わかんないなあといつも思っています

「てめえの夢もこれで最後だな」

これ、幼馴染が互いに認め合った、印のようなセリフなんだね

文字通りにすべてを明け渡す「譲渡」。クレイジーともいえる覚悟をまっすぐに受け取った爆豪のこの言葉って、緑谷の夢を理解していたことに他ならない。「俺と戦え」と態度では示していたけど、こうやって言葉にするんだね……

認め合っていた印に夢が来ること。互いに同じ人に憧れた原点を持つふたり。主題歌そのまま、「行先同じ旅人」

わたしは長く、ひとつの旗が立った山を反対側から駆け上がっている幼馴染を想像していて。旗の少し下にオールマイトがいるような、そんな地点。「意味のない戦い」を経て、互いにその山を登っていたことは認めたんだろうなと、そう思っていた

けれど。だからこそ、凶悪な敵に勝ち、すべてを守るために、最後に爆豪が旗ではなく「緑谷を見て」、そういう言葉をかけたんだと思うと感情がぐじゃぐじゃになってしまった。ヒーローズライジング、みると感情になる…

なにより、わたしはやっぱり
緑谷の爆豪への信頼の根幹が「僕が憧れた強い君だから」ってところが本当にどうしようもなく好きなんだよな、と見るたびにかみしめている。どんなにか嫌なやつだと思っていた頃から、それだけは変わらない。変わりようがない、いっそ怖くなるような信頼

差し出したものの大きさをわかっていて、受け取らせるのが「無理」だとわかっていて、それでも緑谷は大きすぎる信頼の証を渡した。“それしかないから”ーーその前提があったとしても、互いに認め合って、手を取り合えた。神野から、ここまできたのかと。普段ならぜったいにあり得ないからこそ…

本人は覚えてないけど、きっとその事実は緑谷がこれからを過ごしていく中で、光に、勇気になるだろうね

ただ、爆豪はきっと気づくだろうなあ。そうしなければ勝てなかったことや、だからこそ守れたもののことを実感するはず。そのうえで、これが到達点にならなかったことがきっと彼にとって大切で。弱さを忘れないように刻む、そうやって生きている爆豪だから

だから気づくけど、「てめえの夢も……」と言ったことはきっと覚えていないと思う。その絶妙な距離感が幼馴染がこれからだってことなんだろうな


「お互いに頑張ろう」

活真くんの話を聞いてあげるシーン、緑谷の声がね、とてつもなく優しい。迷子を見つけたときの顔も、「よかった」という声も優しさが突き抜けてたけど……

このシーン、後の活真くんのすべての行動の源泉になってる。救けることを知って。なにより、信頼や夢を正面から受け止めてもらえたの、本当にうれしかっただろうなあ

そして、明らかに爆豪を向こう側に据えた上での「お互いに頑張ろう」。これ、緑谷はもしかしたらそう言いたい気持ちもあるかもしれないけれど、「俺と戦え」って言う爆豪に、あえて言うことはしない

その代わり、AB戦とか随所で「超えるよ!」って本人に言ってるけど…。爆豪がそれにキレ散らかしつつ、気は短いとかいいつつ、その瞬間を〈それに勝つために〉待ってるけど…。それがこのふたりの頑張ろうの形なんだよな、と改めて感じた。(でも正直にいうとこういうやりとりどういう感情なんだ?と思う……おもしろい…………)

岡本さんがときおりインタビューで言うように、私闘後の爆豪って、どこか余裕がある。それを実感した。直接はききたかないけど、静かに考えを聞いているだけの余裕があるんだよな……

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とはいいつつ、ここの爆豪が話を聞いてなにがしを考えているのは、真幌ちゃん(と活真くん)に「ヒーローは強くてかっけえ」って伝える伏線で。爆豪が自分の憧れを原点に持ってるんだなって感じてすき

“完膚なきまでに「完全勝利」する姿”がもっとも説得力があると、信じていて、実行しようとしている。この辺り、映画が本誌の最新話を見ている気になる最大の理由かな。

序盤の相澤先生の「守るべきものとの触れ合いはあいつらにとって……」、譲渡の時の「ヒーローは守るものが多いんだよ」の回想。爆豪が「救ける」行動をするシーンは加速的に増えてきているけど、対象を認識して、何かをもたらそうとするのはほとんど初めてだったんじゃないかな。

根底は「ブレない」まま、成長する。すごく丁寧。大切に扱ってるんだなってわかる。ヒーローズライジング製作陣めちゃくちゃ推せる…………

それと「No.1」と「最高」を区別して使ってるの、いつも心にくるんだよなあ。緑谷にとって最高って在り方のことであり、救けるという行為の先にある。爆豪にとっては最高じゃ足りなくて、救けた上で「No.1」でなければ伴わないと思っている。このストイックさは、やっぱり“鮮烈”なんだよ


「あの時 僕が言って欲しかったのは」

初見でいちばんみそみそになって泣いてしまったのは、「君はヒーローになれる」。緑谷がその言葉を自分から言うの、ほんとに最終回じゃないかよ……と動けなくなった

そんでその後の活真くんの笑顔がね……エリちゃんもそうなんだけど、心も救けて、はじめて完遂するんだっていうのを感じる。オールマイトが菜奈さんから受け継いだものが着実に引き継がれてるのがうれしい。(でもそれを「言わなくても伝わると思う」は勿体ないぞ……!緑谷出久!)

まって、そのうち島乃兄弟から手紙きたり……するのか…………………………

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ただこのシーン、初見では笑顔がどうとは考えてなかった。思い出していたのは死柄木のこと。緑谷以外にあの言葉を求めていた、「あの時 僕が言って欲しかったのは」と、大人に望んでいた子ども。

もう、大人になった死柄木はその言葉を望んでなどいないと知っているけれど、あの日壊れて置き去りになった転弧のことを思うと、訳のわからない感情になって、エンドロールの間じゅう呆然としてた

あの言葉をもらえた「緑谷と活真くん」と、もらえなかった転弧には決定的な線引きがされている。それを良くも悪くも実感してしまった

活真くんが真幌ちゃんのために飛び出す、1話をなぞっただろうシーン。

あれがあったから緑谷は「ヒーローになれる」って言ったはずで。活真くんから真幌ちゃんの手を取るのってあの後が初めてで、「ヒーロー」になった証左だった。そしてその背景に、「自分の話をただ受け止めてくれたヒーロー」と「思いやりで自分を守ってくれる家族」がいる。

一方で、転弧は「自分を正面から受け止めてもらいたい」気持ちをどうすることもできなかった。痒みとして現れていたそれを持て余したまま。小さな、仕方のない裏切りがあって。母は間に合わなくて。極限で見向きもされなくて。反対側に転がり落ちてしまった

死柄木はもう破壊こそが存在証明だと識っている。そう植え付けられた。そして、デストロとの戦いを経て何もかもから自由になってしまった。死柄木自身がそれでいいと思っている。でもやっぱり、残酷だと感じてしまう。

だからといって緑谷たちが、すべてを救けるために手を緩めることはないだろうけど。それはジェントル戦で示されたし。緑谷のIFであることが強調されたジェントルのこう、ストーリー全体としての立ち位置はどこにあるのかなって思っていたんだけど、死柄木のことを見据えてるのかな……

ジェントル戦といえば、読み返していて「明るい未来を示せる人間になりたい」の台詞の背後が「君はヒーローになれる」のシーンだったことに改めて気がついて。この言葉を活真くんに言えたことの尊さがやばかった


怒ったような「だめだ」

活真くんの自己犠牲を止める声、あそこがいちばんこわい声だなあと思ってて。構造的にはこの怒ったような声も、「そのために僕たちがいる」も、エリちゃんに言った「君は泣いてるじゃないか」とたぶん一緒で、「君はそんなことする必要なんかない、安心してほしい」ってことなんだけど

今回とがめたのが「無個性になること」で、だから反射的なものでもあるのかなって思ってしまった。緑谷はほかのひとと無個性が結びつくことに時折ひどくショックを受けるから

他者はそれほどに気にするのに、自分はナインに個性取られそうになっても目の前のことでいっぱいだったし……、もはや譲渡すら、「オールマイトならきっと大丈夫って言ってくれる」が掛かってるの「無個性のヒーローデク」じゃなくて「ワンフォーオール」だし(ヒーローデクにも言ってくれるでしょ……ってわたしは思いたい……)それが彼の良さでもあるんだけど、こわいところでもある 意識していないから余計に 無個性になることをまるで定めかのように考えていないかい?って

譲渡は幼馴染の信頼の証だけど、そこは緑谷のなかで折り合いついてないんだな……と感じてしまった(それとともに、個性社会どんだけなんだ…といつも思うけど)

このあたりは「僕の個性はヒーロー向きじゃないから」という活真くんに一瞬難しい顔をした緑谷にもちょっとだけ感じてる。きっと可能性を自ら絞る言葉に思うところがあったんだろうとはわかってるけど、ね

それこそ心操とか、ジェントルとか、ミリオとか、エリちゃんとか、あるいはメリッサとか。ヒーローになることと個性があることを区別して考えるきっかけになるキャラクターはたくさんいて。それでも、自分ごととしてはまだ断絶があるのだろうか いつかすべてをひっくるめて大事にできる日が来ますように いつも思ってる


神々の宿る島

ナインの、神の如き天候を操る力。世界〈天〉を支配する…神を具現化する力という意味ももちろんあるだろうけど。このもともとの個性はメタ的に逆算したのかなとも思っていて。1話のオールマイトを彷彿とさせる“2人のデトロイトスマッシュ”のシーンを一番映える形で作ることができるから。

あの瞬間、幼馴染は最高のヒーローになり、そしてあの場の全員の夢が潰えた

開けた空から降りる天使の梯子……まるで天に召されるかのような演出と、哀愁に満ちたBGM。誰もがあの瞬間に死んで、それでも矜恃のために戦った。守ること、勝つこと、個性だけが存在証明となる世界を作ること。矜恃だけの世界で、言葉は不要だった。

ストーリーラインが「夢のぶつかり合いだった」からカタルシス大きく感じたのかな。もしくは敵や目指すものがわかりやすいからかな……

じつは数回めで那歩島のキャッチフレーズが「神々の宿る島」なのに気付いてしまって、やはり神の如き力同士の戦いって意識してんのかな……と思った

神の力ととらえて気象操作を考えると、その力を使うことで体が蝕まれるの「神の意志に反して罰せられている」感がある……その道に進んでしまったことで報いを受けているかのような。ほかの力を使っても細胞はダメージを受けていたけど、明らかに天候だけは覚醒するまでセーブして使っていた

「ワンフォーオールの意志」の話もあるから、存外対比しているのかもしれない。本当に個性に意志があって……とか、個性特異点の先にあってもおかしくはないな(SF脳)

戦闘の満足度よ。

まず最序盤のプロミネンスバーン。だめだ、荼毘に向かって打つところも合わせてだめだ。見ろや君の回を何度も読み返しては泣いていた人間には無理……発動する前にピカってするのエモすぎる……まさに「見ていてくれ」といった感……

あと文化祭とAB戦を踏まえた動きが多くてニコニコしてしまう。飛んでる常闇、轟、梅雨ちゃん…芦戸のダンス。飯田の作画のスピードがいつみても最高(その直前、間も無くレシプロが終わる…っていいながら轟をチラ見するのちょっとふふってなるんだけど、とどめを刺すなら轟くんだろう、て思ってるのかな)。思い出を語る切島も人情みあってすき。いつ見ても尾白くんはほぼ生身なのに強い。なんだあれ……(なんだあれ……)

瀬呂もバチバチにかっこよかった…し(何度仲間を救ったことか!)、お茶子とヤオモモ・青山のプラスウルトラがよい。ヒロアカのすきなところ、あくまでも「個性」でメンバーを配置するところなんだよなと思い返していた。戦いにおいて性差がないところもすきなんだよ。

みていて少し妄想したのは、ヒーローを救けるというお茶子のテーマ、瀬呂にとってもひとつのテーマになりうるのかな…ということ。彼は視点を一歩下げられるひとだと思っているので……

唯一、マミー戦はもっと爆豪以外の活躍見たかったッ……てちょっと思っちゃった。おまえらならもっと動けるだろう!って。でも上鳴も切島も峰田も青山もみんなちゃんと見せ場あったもんね、前フリだったんだきっと

だいたいナインが覚醒したあたりでもうすべて吹っ飛んでるし、キメラがほんと声といい振る舞いといいカッコいいので大満足です キメラ、かっこいい……いつでもまた出てきて欲しい……キメラのシーンいつも「これ当たったら死ぬわ」って思う ナインより怖いまである

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翻ってナイン戦
エアフォース、使い方がほんとうに爆破に似ていて、めちゃくちゃシンメトリーで画面映えするとともに、すごくお手本にしているので嫌がられてるんだろうな…などと思っていた…(でもそれだけ爆豪の戦闘センスが高いんだよね)

本当に動作とか画面割りとかガッツリ線対称だった…服の破れ方まで線対称なのはちょっとおもしろくなってしまった…不本意だろうそんなニコイチ……きっと……(ハナから不本意だからもうなんでもいいのか……)

そして最後の技が蹴り!!これ……めちゃくちゃ興奮した………………

腕が使えないのはあるけれど、蹴りを選択したの、すごく熱くなった。「必殺技考案」のあたりから、オールマイトの模倣じゃない、彼が周りのすべてから吸収して力にしてきた「蹴り」。デクがデクとしてのヒーロー像を見つけ始めている、と山下さんが言ってたけど、そのひとつの象徴だと思う。緑谷とオールマイトを区別するのは「蹴り」なんだ。

そこに至るまでの弔いの雰囲気。たくさんの決別を込めた一撃だったんだろうな。そして、攻撃を継いで、とどめを刺す爆豪。ふたりの関係と、それぞれの在り方を示しているみたいで、すごく、すき。同じひとに憧れて、同じようにすべてを出し切って、ひどく似通っているのに、少しだけ目指している形が違う。最高とNo.1だったり、完全勝利だったり、ディフェンシブなところだったり、わずかに現れるそれがとても彼ららしいな

堀越先生の「再起の物語」という言葉、特典よみながら泣いてしまった……だからヒロアカにのめり込んでしまったんだと腑におちた。もう一度立ち上がる、あと少しだけ。そう優しく、したたかに教えてくれる。だいじにしたいです。

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